第3話 謎の落書き

3


3階も2階と同じ様な造りになっているみたいで、左側に部屋が並んでいた。

右側の壁にも埋め込まれた窓がある。

「二階と同じ6室だよ」

と、

「きっと、4階も同じだよ。」と4階に行く事を拒む気持ちを込めて、雄一君に言った。

だが雄一君は僕の言葉を無視するかのように階段を昇っていく。


4階も同じであった。同じ様に見えた。

だが、部屋の数が一つ少ない。

5室しか無い。

廊下の長さは変わってはいないが、5室しか無い。


「なんで、ここだけ5室なんだ」

雄一君は不思議そうな表情で、独り言を言う。


「きっと、4階だけ部屋の大きさが違うんだよ。」

と、僕は雄一君に聞こえる様に言った。

ふと、壁を見ると、落書きがしてあった。

壁の色は薄汚れた灰色で、ボールペンで黒で文字が書いてある


以前の住民が落書きしたのか?

それとも、此処に肝試しに来た人が書いたのだろうか?

人の名前が書いてある。


「なんで、こんな壁に名前を書いたんだろう?」

と、訝しい思いで僕は言った。


「きっと、以前此処に肝試し来た人が、書いたんだよ。

見て、3人の名前が書いてあるよ。」

と、雄一君の声が何故か弾んでいる。

「僕たちも書こう!記念になるよ。」

と、雄一君はペンで自分の名前を書いている。

「三浦雄一」と。

「橋田君も書きなよ。」

と、ペンを差し出してきた。


僕は、落書きなんてしたくも無かったのだが、断る勇気も無く

しぶしぶ、名前を書いた。

「橋田誠」兄の名前だ。


「もう、帰ろうよ。雨が降りそうだし、傘も持って無いし。

早く帰ろう」

と、僕は雄一君に催促する様に言い、自ら階段を降りて行った。

雄一君は僕の後ろについて来る。


外に出ると、灰色の空は変わってはいない。

「何もなかっただろう?幽霊なんか居なかった。」

と、雄一君は言っているが、昼間に幽霊は出ないだろうと、

僕は思っていた。














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