二章新たな可能性と新たな友情

35話-二人ともなにしてるの? えっ、君は誰?


 母さんとの話し合いが終わり、魂の使命こん願者ドナーを続けることが許されたとある日。僕は魂の使命こん願者ドナーについて調べるため、教会が運営する大図書館へ足を運んでいた。


 この大図書館は、教会が認めた人間しか立ち入ることが許されない、神聖な図書館なんだ! 


 まあ、急に「オレサマも行ってやるガウ!」なんて言って、フェルが無理やり着いてきたけど……。


「問題、起こさないでよ!」


 そう念を押したけど、効果はきっとないと思う。なにも起こりませんようにと祈りつつ、僕は軽い面談と入館に際しての注意事項を受けた。


 入館ルールは至って普通。


 ・館内での飲食は禁止。

 ・館内で走ったり大声を出してはいけない。

 ・館内で読んだ本は正確に、元あった場所へ戻す。

 ・本を乱暴に扱わない。


 など、当たり前のことしか書いていなかった。


 入館すると直ぐに、魂の使命こん願者ドナー魂を遣う者シシャ魂を導く者セイト専用のエリアと、共同エリアの案内板が現れる。


 僕はまず、魂を守護するモノツカイマ預かり所にフェルを置いたあと、魂の使命こん願者ドナー専用のエリアへ向かった。


 このエリアは専用というだけあって、魂の使命こん願者ドナーのことに特化した書籍が多く目立つ。その中には、以前カルマンが持ってきた、魂の色図鑑に似た簡易本も保管されていた。


 僕はそんな大図書館に圧巻されながらも、興味のある本を片っ端から取り魂の使命こん願者ドナーについて調べ始める。


 どうやら魂の使命こん願者ドナーは、元々、神様に祈りを捧げ特別な魂を授かることでしかなれない存在だったらしい。


 どうして? そう思うと同時に僕は、気になる本を探し答えを求める。だけど、僕の疑問は解決されない。諸説はあれど、魂の使命こん願者ドナーになれる理由が解明されていないから。


 魂の使命こん願者ドナーの歴史はかなり古くて、何百年も前から存在し、神の声を民衆に届けたり、災いをその身で跳ね返したりしていたらしい……。なんというか、今、教会が行っている役割を、一人で担っていたのかな? って感じ。


 諸説の方は、


 一、人間の生活圏にメテオリットが現れたことにより、魂の使命こん願者ドナーを含む大半の人間が減ってしまった。そのせいで欠片にも不覚を取られる始末。結果、魂の補給を優先するため、誰彼構わず魂の使命こん願者ドナーになれるようにした。


 諸説二、とある爆発により、この世界に住む人間が三分の一以下になったことが原因で、一と同じ様に魂の補給を優先した。


 諸説三、教会が魂の使命こん願者ドナー実験を行うため、政策として発表した。


 どれも確証を得ないものばかり。それに、どこかで聞き覚えがありそうな内容や、オカルティックなモノが大半を占めている。


 まあ、その著者の想像が豊かで興味深かったから、読んじゃったんだけど。そんな感じで読書に没頭していると、僕の知らないところで問題児である小さな影が動き出したようだ──。


 ※※ ※ ※※ ※ ※※ ※ ※※ ※ ※※ ※ ※


 リーウィンげぼくに、「ここで待ってて」とか言われて置いていかれたガウ! つまらないガウ! ここでちゃんと一時間 (体感)は待ったガウ! よし、リーウィンげぼくを置いて、このでっかい建物を、散策してやるガウ! そう意気込みツカイマ預かり所置いていかれた場所から一歩、出た瞬間、オレサマにぶつかってきた不届きモノがいたガウ!


「オマエ! どこに目をつけているガウ!」


「あ? おまえがぶつかってきたんだろ!」


 ソイツは詫びるどころか、オレサマがぶつかってきただとか、イチャモンをつけ始めたガウ! ほんと、どんな教育を受けているガウ!?


 そう、胃をムカムカさせながらもソイツの顔を確認し、ハッとしたガウ。


「オマエ!」


「おまえ!」


 そう言葉を重ねる巨人──オレサマは、コイツのことを知っているガウ。


 この前、オレサマを投げ飛ばした奴ガウ──。思い出しただけで腹が立ってきたガウ! ナニカ仕返ししないと気が済まないガウ!


「なぜ、おまえがここにいる? リーウィンはどうした?」


 巨人は赤々と燃えるような目に、冷たい青色を灯しながら、蔑むように聞く。


 だけど、オレサマが答える義理なんてないガウ! それに誰かに指図されるなんて真っ平ごめんガウ! そう感じ、


「オマエの方こそ、なぜいるガウ!」


 語調を強め睨みつけてやったガウ!


 だけど、コイツはアホガウ。オレサマの質問に答える気がないのか、


「俺の質問に答えろ」


 なんて言って話にならんガウ!


「オレサマの質問に答えるのが先ガウ!」


「なぜ俺から答えなければいけない? 先に質問をしたのは俺だ。おまえが先に答えるべきだろ?」


「オレサマが答えたくないと言っているガウから、オマエから答えるのが筋ガウ!」


「は? おまえはバカか?」


「オマエこそアホガウ!」


 そんな言い合いをしているガウと、モジャモジャ頭の目つきの悪いガキが急に現れ、


「ちょっと、静かにしてくんない?」


 とか言って、断りもなく参戦してきたガウ! なんて無礼な奴ガウか!


「オマエ、誰ガウ?」


「だから声のトーン落としてってば」


 モジャモジャは、囁くような小声でオレサマに命令してきたガウ! しかもいっちょ前に溜め息なんかつくし、オレサマを睨んできやがるガウ。こいつめちゃくちゃムカつくガウ! ナニサマガウか! そう不満をコネコネしていると、


「あんたも静かにしなよ? 大人のくせに静かにすることもできないわけ? それに魂を守護するモノツカイマの躾くらい、ちゃんとしなよ」


 巨人にも同じことを言って、キッと睨んでいたガウ。ざまぁみろガウ!


「おまえ、喧嘩売ってんのか?」


 巨人は、そんなモジャモジャの発言にイラッとしたのか知らないガウけど、急に胸ぐらを掴み始め、オレサマ直ぐに理解したガウ!


 面白い祭り・・ごとが始まる気がするガウと!


 オレサマはそれを盛り上げるために取っておきをお見舞して、焚き付けてやったガウ! 感謝しろガウ!


 ※※ ※ ※※ ※ ※※ ※



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