0033-カルマンってほんと気持ち悪い-
普通に魂を貸そうとしようとしたんだけど──。
「ひぃぃぃぃっ!」
僕に魂を貸してくれと言った
えっ? 急にどうしたの? なんて呑気に思いながら後ろを振り返ると
〝おまえなんだ? 殺されたいのか? 俺以外の人間がコイツの魂を好きにしていいと思っているのか?〟
とでも言いたげな表情でカルマンが
「カルマン! そんなに怖い顔で睨んじゃダメでしょ!
そんな怖い顔をしているカルマンの両頬を引っ張りながら僕はメッ。なんて注意を促す。
というか、まだ契約前なんだし他の人に遣われても良くない? そう思うけど、まぁ母さんの前で意識を失えば折角、
カルマンはそれを気にしてくれているのかな? そう思っていると、
「おまえ、どうして他の
カルマンはどこか怒った様な……よく解らない表情で僕に聞く。
「えっ? 逆に
僕はキョトンとした表情でカルマンに聞き返す。
「おまえ……俺のことバカにしてるだろ? 一応、俺も
今までそんなこと気にする素振りも見せなかったのに、どーして
「えっ! ぜぇ〜んぜんっ! バカにしてないよ? ほ〜んのちょっとだけ非常識で、人間性が欠けているなって思ってるだけ!』
僕は指を使って少しだけとジェスチャーしながら悪気なくカルマンに正論の刃を突きつける。
「……おまえそれをバカにしていると言うんだ。はぁ──まぁ良い」
カルマンは大きな溜め息をついたあと、僕の魂は俺のものだと訳の解らないことを言い、メテオリットの欠片に単身で乗り込んで行った。
その後も何人かの
「無かったことにしてくれ」
と逃げるように去っていって行く。
そのせいで僕は魂を遣われる事が一度も無くただ傍観しているだけの状態に。
自分と契約する人間だから、他の人には遣わせたくないとか? 絶対、カルマンに恋人がいたらガチガチに束縛されてるな〜。可哀想に。
僕は居るかも解らない恋人を心の中で哀れみながら暇だな〜。と安全地帯でウロウロすることしかできなかった。
途中、僕と同じ
「貴女お名前は?」
「僕はリーウィンですけど?」
「そう……。リーウィンさんって呼んでいいかしら?」
「好きなように呼んでもらってもいいですよ!」
「じゃあリーウィンさんで。リーウィンさんはあの
なんの話しをするのかと思えばカルマンの話か……。なんて内心溜め息をつきたくなったけどここはグッと堪え、なんとか微妙な笑顔で乗り切る。
最近、カルマンと関わることが多くなってきてから、こういう質問をされることが多々ある。
まぁこれは僕の容姿が一番問題なんだと思うけど……。
意外とカルマンは女性人気が高い。
僕からすれば、カルマンのどこに魅力を感じるかは解らないけど、なんでも孤高な瞳が素敵だとか、あの冷たい雰囲気がとか。色々と聞かされる。
そして今回も……。
「僕とカルマンの関係性……。うーん……何なんだろ……? 一度魂を貸した人……かな?」
カルマンとの関係性を聞かれてハッとしたけど、僕とカルマンの関係性ってなんだろ?
最近、家によく来るようになったけど、別に仲が良いともいえないし……かと言って知り合い程度かと言われればちょっと違う……。
考えたところで答えのない質問だ。
無難に返すのが得策だろうと思い、僕はそう答える。
「えっ!? 貴女、なぜそんなにカルマン様と仲がよろしいの!? もしかして……身体でも売りましたの?」
ん……?
よく女性に間違われることはあっても、そんな失礼な質問をされたことは一度もない。
この質問になんの意図があるのか……。
そう思いながらも
「えっと……身体を売るってどういうことですか?」
身体を売るというのがなんなのか? 脳内会議で決定され聞いてみることにした。
「だってそうじゃない! カルマン様に魂を遣われることは女性
なんて彼女は鼻息を少し荒くしながら、興奮気味に僕に詰め寄る。
僕はそんな彼女を冷ややかな目で見ながらも、
カルマンは男女関係なく魂をほとんど遣わない。
母さんから
現に、今も愛用しているであろう武器を片手に、欠片に殴りかかっている。
僕はそれを理解したあとどこから訂正すべきか悩む。
特定の
まぁ、魂の波長が合えばほぼ固定化されるみたいだけど、登録したての僕は色んな人に魂を貸すことの方が重要視される。
教会の要請でカルマンと鉢合わせしたとしても、現に遣われたのは別の
うーん……。
「なんとか言ったらどうですの? 貴女はカルマン様のなんなのですか!? 恋人なの!?」
女性はそう言いながら今にも泣きそうな顔で僕に訴え掛けてきて、言いたいとすることをここで理解した。
なるほど、魂を遣われて羨ましい! じゃなくて、カルマンに気に入られてる? (ように見えるのかな?)から体でも売ってカルマンを射止めたんだろ。なんていう考えに至ったのだろう。
こういう場合、どう説明しても納得なんてして貰えない……。
どう説明するのが一番、まだ被害を産まなくて済むのか。僕はそう考えながらも
「えっと……ごめんなさい。僕こんな見た目でも一応男なんですけど……」
なんて脳死で答える。
「まさか!? そんな訳ないじゃない! 嘘も大概にしてもらっていいかしら!?」
だけど油に火を注ぐ結果になってしまったらしい。女性は怒ったような口調で僕に、なら証明して! なんて無理難題を押し付けてくる。
まぁ案の定と言うか……予想通りの返答が返ってきたなと素直に思う。
でもどうすれば僕が男だって証明出来るんだよ!? 普通に僕って言ってるし男って解るよね!?
なんて言ったところで、最近は女性でも〝僕〟なんて言う人もいるみたいだし……。
かと言ってこんな公の場でカリッシュの腸詰を見せれば人生が終わってしまう。
だから見せる訳にもいかないし……。
僕はどうやってこの女性の勘違いを訂正しようかと頭を悩ませる。
「おい! なんの話してるガウ!?」
僕が頭を抱えていると、面白いことが起こるという勘が働いたのか、影の中からフェルが顔を出し、僕にしか聞こえない声で説明を求めてきた。
「
「なんだそんなことか。オレサマが対処してやろうかガウ?」
珍しくフェルが協力的で頼もしい! なんて思う訳もなく……フェルのことだからどうせろくなことをしでかさない。
念の為、僕はフェルにどうやって対処するのか聞いてみた。
「オマエの急所を殴ってやるガウ!」
予想通りというか……それだけは勘弁して欲しいと言う回答がフェルの口から飛び出してきて僕は絶句する。
「ちょっとそこの
そんな会話をフェルとしていると
「僕……ですか?」
僕は良かった。この女性から離れれる! なんて嬉々としていたのに、
「あっ……いや……君じゃなくて……その隣の女に言ったんだが……」
これはカルマンのせいだ! 僕、誰からも魂を遣われてないんだけど!?
そんな怒りを覚えていると、女性は僕に答えを聞けずモヤモヤしているような態度を見せながらも
渋々ながらもその
だけど離れる前、
「あとで教えてくださいね」
なんて僕に威圧的な声で耳打ちしてきた。
僕はこのあと、丸裸にされて焼き殺されてしまうかもしれない……。
そんな絶望感に襲われる。
これもカルマンのせいだ! なんて文句を言えるような雰囲気でも無いし……。
本当……カルマンとの関係を今後見直すべきだなと僕は実感した。
なんかそんなこと毎回思っている気が……。
はぁ──。
そのあとはほぼ互角の戦いで、僕はただじっと大鎌を振り回し、メテオリットの欠片と対戦しているカルマンや
それから数十分後、終了の合図と同時に両チームのメテオリットの欠片が討伐され、どちらが勝ったのかと言う審議に入った。
両者、自分のチームが勝った! と火花を散らし、一歩も引かない無意味な言い合いを続けている。
なんか楽しそうだな〜。なんて傍観していると、ヌワトルフ神父も母さんも困り顔をしながらどうしたものか……。と二人でなにやら話し合いをし始める。
そのあと、どちらが勝ったか審議に入る流れで休憩の時間へ。
僕とカルマンと別チームの二人を除いた他の
「身体の鍛え方が不十分なんじゃないのか?」
そんな人たちを横目に、カルマンはそう一言、冷たい言葉を放つ。
だけど皆、言い返す度胸も器もなければ疲弊しきっていて、体力すら残っていない。
誰もカルマンに言い返すことなく、ただただ地面に伏し体力を回復させることに専念していた。
「僕、今日来た意味有った?」
「有ったんじゃないのか?」
「カルマンが
僕はカルマンを睨みつけ、カルマンのせいでとあーだこーだと文句を垂れ流し、どうしてくれるんだ! と詰め寄る。
「あの……」
そんな周りから見ればじゃれあいにしか見えないことをしていると、先程の女性が僕の方にやってきて、しおらしく声をかけてきた。
先程までは僕を殺るき満々で食ってかかる勢いだったのに、急にどうしたの? そう思いながら横を見るとカルマンが居る。
あっ、なるほど。
カルマンには良い様に思われたいと。
こんな非常識で非道な人間のどこが良いのか?
ただ顔がいいだけの最低なヤツじゃないか! なんて思いながら要件を聞こうとすると、
「
カルマンが僕を制し、女性に声を掛けた。
「えっ……えっと……カルマン様はこの
女性はモジモジと少し頬をピンクに染め、上目遣いをする。
「コイツは……そうだな……俺の下僕だ」
カルマンは少し考えたあとそう言い切る。
「はぁ──!?」
そして素っ頓狂な声を上げる僕。
「げ……ぼく……?」
だけど、そんな僕の態度なんて気にも止めず、女性はボソリとと復唱したあと、僕にではなくカルマンに再確認する。
「あぁ」
「という事はこの方と御付き合いをされているという訳ではないのですね!?」
「……? なぜ俺が、男であるコイツと付き合わなければならないんだ?」
カルマンは〝コイツなに言ってんだ? バカなのか?〟そう言いたげな白い目で、女性を見ながら引き気味に聞く。
「えっ!?本当に女性ではないのですか!?」
「あぁ……。逆にコイツの何処をどう見て女だと思ったんだ?」
カルマンはそう言ったあと、僕みたいな女が居たら真っ先に殺しているだろうなと鼻で笑った。
「あっ……えっと……。そうだったのですね! 先程は失礼致しましたわ!」
女性はどこか嬉しそうに謝罪したあと、知り合いと思われる別の
「ねぇ? 僕がカルマンの下僕ってどういうこと?」
「簡潔に関係性を答えるなら手っ取り早いだろ?」
「いやだからって僕を勝手に下僕にしないでくれる?」
「なぜだ? 嫌なのか?」
「当たり前でしょ! なんで僕が君の下僕にならなきゃいけないのさ! 本当、フェルみたいなこと言うのやめてよ!気持ち悪いな!」
僕は勝敗が決まるまでカルマンとこんな感じで言い合いながら時間を過ごした。
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