7話-魔境の奥に隠された部屋-
──魔境の奥へと続く扉を開くと、これまたナニカの実験所……いや、研究所? の様な場所なのかな? あちこちに腐敗した肉片や、ナニカの目玉なんかが散乱していた。
多分だけど、臭いの元凶はこれらの腐敗物で間違いないと思う。
「こっちよ」
ここは一体なんなのか? そんなことを考えながら魔境の奥へ奥へと進んでいくと、また微かに誰かの声が脳裏に響く。
僕はその声に引き寄せられるかの様に、もっと奥へ、奥へと進んで行く。
──この
そもそも
不可思議な場所だ。
そしてこんな魔境じみた場所にも関わらず、僕は、初めて訪れた魂を
ちなみに自慢じゃないけど、僕は多分……かなりの方向音痴だと思う。それにも関わらず、迷わずに来れたってことは……どういうこと?
それにどうやってここまで来たか、もう覚えていない。
偶然ここまで来れた。にしては、かなり入り組んでいた気がするけど……。そう思いながらも、厳重な趣きの白い扉の前で僕は一度、深呼吸をしたあと、そっと扉を押した。
もしかすると、この一番最深部に来れたのも、扉を開けたのも。僕の意思ではないのかもしれない。
僕は不思議な感覚を覚えながらも、白い扉を押し続けると、さっきまでとはまた異なる……異様な空間が出迎えてくれた。
僕を出迎えてくれた部屋は、なにかを生み出す実験室なんだと思う。透明な培養ポッドや見たこともないような機械が乱雑に並べられていた。
ほとんどの培養ポッドには起動されていないんだけど、沢山あるうちの培養ポッドの一つだけ。
異様なほど大量の管が取り付けられている。
その培養ポッドには様々な色の液体が、一定の間隔で管を通して注入されているのが見て判る。
なにが入っているのかな〜。なんて思いながら、液体が注入されている培養ポッドを覗くと、中でぷくぷく、コポコポと、音を立てながら、ぐにゃぐにゃしたナニカ──。
得体の知れない……生き物とは到底言い難い半透明なモノが浮遊していた。
「僕を呼んだのは、もしかして君?」
まさかね。なんて思いながらも僕は、冗談半分で聞くけど、返事なんてあるはずもない。
というか、返事なんて返ってきたらびっくりして腰を抜かしちゃうかも。そんなことを考えながら、なんとなくその培養ポッドに手を添える。
ビリッ
「いっ──!」
培養ポッドに手を添えた瞬間、電気が身体中に走った様な──、ナニカに噛み付かれた様なよく解らない痛みが走り、僕は驚きのあまり手を離す。
手を確認する前に培養ポッドをよく見ると、なぜか小さな針のようなモノが等間隔についていた。
きっとそれに指を刺してしまったんだろう。
そのあと手を確認すると、人差し指から微かに血が滲んでいた。
僕は唾を付けておけば血なんて止まる! そう昔、誰かに教えて貰ったのを思い出し、人差し指を咥えながらなぜ、目を凝らさなければ解らないほど小さな針がついていたのか? そんなことを考えていた。
それと同時に、冷静に周りを確認して見れば、ここがなんなのか? 今更ながら不思議であり恐怖に感じてしまう僕がいる。
どうして僕は、こんなところに来ようと思ったんだっけ? ここは見る限り、遥か昔に行われた……、今は禁止されている人体実験をしているような場所なわけで……。
まぁ、実際にそんな場所を見たことがないから、あくまで僕の想像ではあるけど、さっきまではなんとも思わなかったこの空間が、急に恐ろしく思えてきたと同時に、背筋がゾッとする感覚がつたい、冷や汗が垂れる。
もしかして僕は、この部屋に呼ばれた? いや、そんな……まさか……、ね。そんな不安を抱えながらも僕は、なんとも言えない胸騒ぎを覚え、息を飲む。
「誰かいるのだわね?」
悪い憶測は辞めよう。早くこんな場所から立ち去らなければ。そう思った瞬間、どうやって声を届かせたのかは解らないし、もしかしたら広いと思ったこの空間は狭かったのかもしれないけど、遠くの方から誰かの声が聴こえてきた。
もしかするとここは見ちゃダメな場所なのもしれない……。もし見ちゃダメな場所だったら怒られるだけでは済まないんじゃ……。そんな焦りを覚え、僕は慌てて魔境の最奥をあとにした。
「ご馳走様」
そんな声が聴こえたような、聴こえなかったような……。いや、きっと気の所為だ。僕はそう思いながら急いで元いた場所へ戻ろうとする。
人の声が聞こえたからきっと近くに人がいる。きっと、
えっ、どうして人の声が聞こえたの? 一先ず色んな部屋があるけど、見た感じ誰もいなさそうだし……。それに、どうやってあんなところまで、なんの迷いもなく進めたのかやっぱり解らない。
ていうか案の定、僕は今迷子になってる気がする!
もしかして、もう戻れないかもしれない……。戻れたとしても、秘密の場所を見てしまったから、人体実験の道具にされてしまうかも……。
そんな不安を抱えながらも途中から、別の場所に行きかけた僕を、目に見えない誰かが優しく手を引いてくれているように、足が勝手に進んでくれたお陰で、魂を
戻ってこれた瞬間、良かった。無事に生還できた! そう安堵の溜め息を漏らす。
だけど、さっきの場所は一体……? そんな疑問が僕の脳裏にずっと、残り続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます