これもある意味、罰ゲームと言ってもいいかもしれない
そうしてしばらくその写真を満足そうに見つめていた彼女だったけれど……急にハッとした表情を見せたかと思うと、何故かジト目で僕を見てきた。
「……何よ?」
いや、それはこっちのセリフなんですが? というか……この流れでどうして僕が睨まれなきゃいけないんですかねぇ……? そんな風に心の中では思いつつも、絶対に口にはしなかった。だって、また一条さんの機嫌を損ねると怖いから……。
「……まぁ、いっか。とりあえず、今の写真を送るからー……あんた、スマホ出しなさい」
「あっ、は、はい……」
僕は一条さんの指示に従い、制服のズボンのポケットからスマホを取り出した。それから少しして、チャットアプリに入っている彼女のトーク画面から画像が送信されたという通知が来た。
「ほら、あんたのスマホに送ったから、ちゃんと確認しなさいよねー」
「あ、はい……」
僕は言われた通りにその画像を確認した。すると、そこには満面の笑顔でウィンクをしつつ、ピースサインをしている一条さんが真っ先に目に飛び込んできた。さっきまで不機嫌そうな感じだったのに、この擬態っぷりには流石に感嘆してしまう。
そして、僕はと言うと……同じくピークサインをしつつも困惑した表情のまま、視線をカメラに合わせ様としている僕の姿が写っていた。一緒に写っている一条さんと違い、カメラ慣れしていないのが見え見えだった。
「う、うわぁ……」
「は? 何、そのうわぁ……て。何か文句でもあんの?」
思わず心の声が漏れてしまった僕は、それに反応した一条さんに睨み返されてしまう。だけど、それは仕方ないと思う……だって、その写真の中の僕は完全に罰ゲーム感が半端ないんだもの! 慣れた感じの一条さんと違ってたどたどしい僕の姿、そして目の前に置かれているどデカいパフェ(自業自得)。誰がどう見ても罰ゲーム執行中の絵面だよ、これ。
「べ、別に、何も……」
とりあえず、文句がありますだなんて言えないから、そんな風に一条さんには返しておいた。まぁ、本人はどこか満足している感じだし、良い感じに乗せておけばきっと見逃してくれるだろう。
「 あ、そうだ。忘れる前に言っておくけどー、今の写真……ま、待ち受けに、しておきなさいよね」
「え?」
不意に一条さんはそう言うと、またも自分のスマホで素早い手付きで操作をし始めた。そして少しして、彼女はそのスマホの画面を見せてくる。そこにはさっきの写真が待ち受け画面に設定されているのが確認出来た。
「ほら、あたしは終わったから、ポチもちゃんと設定しときなさいよねー」
「い、いや……流石にこれは……ちょっと……」
「何? また文句でもあるわけー?」
僕は思わず一条さんに対して抗議する意を込めて言ってみたのだが、彼女はギロリと僕を睨みながらそう言ってきた。その声色と彼女の表情に萎縮した僕は―――
「な、何でもありませんっ!!」
すぐに姿勢を正して敬礼のポーズをとると、そう大きな声で返答してしまった。そしてすかさず僕もスマホを操作して、気は乗らないけどもさっきの写真を待ち受けに設定した。
本当に情けないとは自分でも思うけど……でも! だけど! 仕方ないじゃないか!? だって、怖いんだもん!! 反対したら何を言われるか分からないんだから!!!
そんな僕とは正反対に一条さんはニッコニコで上機嫌そうにしていた。さっきまでの不機嫌さが嘘の様な笑顔である。何で? 僕の情けない姿がそんなに面白いのかな? やっぱり悪魔だよ、この人……奢って貰っている手前、言えないけど!
「こ、これで……良かった、でしょうか?」
僕は悔しく思いつつも、スマホの待ち受け画面を表示して、それを一条さんに見せた。すると、彼女はスマホを自分の方に引き寄せて、それをジッと見つめ始めた。
「ふーん? 良いんじゃないー?」
そしてしばらくした後、一条さんはそう言いながら微笑んだ。その表情を見て僕はホッと胸を撫で下ろした。
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