女王様な彼女と奴隷の僕とのツーショット
「大変、お待たせ致しました。こちら、ご注文のスペシャルジャンボパフェでございます」
「ど、どうも……」
数分後。僕らのテーブルの上には一条さんが注文したショートケーキとコーヒーのセットが先に運ばれてきて、それから遅れながらも、僕の前にでっかいパフェが置かれた。その大きさは今まで僕が見た事が無いほどのサイズであり、思わずドン引きしてしまう。
「ほ、ほわぁ……」
想定していたサイズよりもかなりビッグなサイズだった為、変な声が漏れてしまった。というか、一条さんが奢りって言うので、咄嗟に一番高いやつにしてやれって思っていたから、商品については良く見ていなかったかもしれない。
しかし……ヤバい、これ。絶対に1人前とかじゃない……僕1人で完食出来るとは思えなかった。多分、これ……みんなで食べるパーティー用のやつでしょ……。
「……ポチってー、そんなに食べる方だったっけ?」
僕がその圧倒的なサイズ感に驚愕していると、対面にいる一条さんがそんな風に聞いてきた。彼女はそう言いつつ、頬杖を突きながら首を傾げていた。その振る舞いは普通に先入観なしで見て、仕草90点の可愛さ。先入観ありで見て邪悪さ満点と言ったところだろう。
「え、えぇ、まぁ……こ、これでも、成長期な男の子、なので?」
とりあえず、これが一条さんの奢りである以上……頼んだのに食べ切れないとは、口が裂けても決して言えない為、僕は彼女に見栄を張ってそう返した。
しかし、普通に返答しようとしたものの、何とも歯切れの悪い感じとなってしまった。すると、彼女は怪訝そうな顔をし、ジト目で僕を見ながらこう続けた。
「ふーん……?」
まるで僕の心の奥底を覗こうとするかの様な、そんな風に一条さんは僕の事をジッと見つめてくる。しかし、僕はそれに耐えつつも、しっかりと彼女の目を見つめ返す。ここで視線を外せば、嘘だって事がバレてしまうから。そうして彼女と視線を合わせる事、数十秒ほど―――
「……ま、ポチがそれでいいなら、別にいいけどー」
やがて、彼女はそう呟くと頬杖を突いたまま僕から視線を外した。……ほっ、良かった。何とか僕の心を見透かされる前に誤魔化す事が出来たようだぞ! そんな風に僕がホッと胸を撫で下ろしていると、一条さんが口を開いた。
「じゃ、写真撮るから、こっち向きなさいよねー」
「え?」
「え? じゃないわよ。だから、写真を撮るって言ってるのー」
一条さんはそう言うと、自分のスマートフォンを取り出してカメラアプリを立ち上げ出した。そして自分自身と僕、それから商品が枠内に入る様に位置を調整していた。
「え、あ、その、えーっと……」
「いい? 1度しか撮らないから、ちゃんとポーズを取りなさいよねー」
「い、いや、ちょっと……」
「言っとくけど、待たないから。はい、じゃあ撮るからねー」
そう言いながら一条さんは調整を終えた後、アプリのシャッターボタンを押した。僕は何とかそれに間に合わせ様と、とりあえずその場しのぎのピースサインをして、視線を一条さんのスマホに向ける。
すると、パシャッと眩しい閃光と音が鳴り、写真を撮られてしまった。そして一条さんはすぐにその撮影した写真を確認する為、スマートフォンの画面を眺めていた。
そんな様子を眺めながら僕は呆気に取られるしかなかったし、全くもって流れに着いていけてなかった。
そして僕を置き去りにする様に、一条さんはその写真を確認した後、少しだけ柔らかに微笑むと―――
「うん、まあまあな写真ねー」
そう呟くように言ったのだった。
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