第2話

1(裏)

「今日も柊さん可愛かったな。」


「ほんとにそれな!あのルックスで頑張り屋なんだからそりゃ女優オファーも来るに決まってるよな〜!」


「1年の夏に声がかかってそのままデビューだからもうそろそろ1年なのか。俺たちでもなんか祝いたいよな。」


「それな!クラスのみんなに声掛けてなんかやっちゃう?」


「それありだな。きっと柊さんも喜んでくれるに違いないな。」


 今日もボクの事で盛りあがっている。


 ボクは柊暦。1年ほど前に芸能関係者にスカウトされて女優になった高校二年生だ。

 まだ脇役ばかりだけど最近ではSNSでちょこちょこ名前を見ることもあって少しずつ有名になっていると思う。

 ボクは自分でも思うけど可愛い方だとは思う。だから昔から男子とかからはよくモテていた。その代わり女子たちからは嫉妬を向けられることが多いんだ。表立った嫌がらせは受けてないけどグループ分けとかの時は毎回先生とやるか余り物として分けられていた。


 ボクは一人称が「ボク」というちょっと珍しいこともあって小学生の時は喋り方とかもバカにされたりとかもしていた。

 だから今は人がいる時は「私」を使うようにしている。それでも意識しないとボクが出てきそうで怖い。

 よくハブられたりしていたせいで頼れる友達なんかもいなかったからできるだけ成績を下げないように先生の心象を良くしようと頑張っていたらいつの間にか

 「柊さんは何でも一生懸命」というふうに男子たちに思われた反面女子たちからは「先生に取り入ってる」と思われている。


 そういうことが昔から続いてるせいでボクは心の底から笑えなくなった。

 小学生の頃なんかはまだ一人称をからかわれただけだって言う今考えるとそこまでだった気がすることも当時はとても辛かったんだ。そういうことの積み重ねがあったからボクはなるべく人に嫌な印象を与えないように常に笑顔で何でも断らずに最後まで頑張るという印象を周りに与えるようになったんだと思う。それでもほとんどの女子たちからは妬まれているけど。


 そんなことがずっとあったから芸能事務所のスカウトはありがたかった。自分の見た目を評価してスカウトされたのは純粋に嬉しいし、自分を誤魔化して周りにいい印象を与えようと生きてきた僕にとって演技は得意な方だと思ってたこともある。

 でも1番は学校から離れられると思ったからだ。

 少しでも有名になればこの嫌な空間から仕事を理由に抜け出せると思ったからだ。


 今はまだそこまで抜け出せる訳では無いけど少しずつ有名になっては来ているからこのまま頑張ればもっと抜け出せるようになるはずだ。




 そんなことを考えてるといつの間にかクラスからボク以外いなくなったみたいだ。


 ボクはたまに誰もいなくなった教室でストレスを発散することにしている。嫌な思いをしているところなんだからこれくらいは許されるはずだ。

 ボクだって怒りはあるしね。

 だから今日もいつものように文句を言うことにした。

そこまで声は大きくしないけど。


「なんでボクばっかりこんな目にあうんだ!」


「ボクだって普通に友達と楽しく学生生活をすごしたいんだ!」


「ボクだって別にモテたくてモテるわけじゃないのになんで妬まれなくちゃいけないんだ!」


「もう疲れたよ!」


 こんなふうにやっていたからかな。

 近づいてくる足音にボクは気づかなかった。



 ――ガラガラッ


 ――――――――――――――――――――


 メモ。

 1354文字。


――――――――――――――――――――


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