第6話

「キミたちはどんな音楽をやるの」

ステゴザウルスの赤ちゃんが大きな体を

揺すりながら聴いてきた。

「ま、つ、まあロックっすかねえ」

アキラが腕組みしながら、難しそうな

顔をして答えた。

「ヘエーっ、」聴かせてみてよ」

ステゴザウルスがその場にドッカリと腰を

降ろした。

「どうするう?紗香のミラクルボイス初お披露目

といくか」

「勝手にお披露目しないでよ、わたしまだ人前で

歌ったことがないのよ」

「何とかなる、人前じゃないし,GOだ」

「なにがゴーよ。みんな用意はいい?あれ行くわよ

ONEツースリーフォー」

紗香が脚を蹴り上げる。

アキラがギターをジミヘンドリックスのように

鳴らし始めた。

アキラの腕は確かだ。

三鷹がSŁADEŁ451314インチ透明

スネアドラムを叩いた。

不知火のベースと吹滝のギターも唸った。

アップテンポの曲が始まった。

♬♪昨日はもうあの海に捨てた

今日からは新しい毎日が始まる

古いジーンズ脱ぎ捨てたら

ワクワクするような冒険だ

もうゾンビのような人ごみにはサヨナラさ

大人たちの支配

鎖嚙みちぎって

目にもの見せてやろう

みんなこの指にとまれ


覚えているかい あの夏の日

焼かれてトーストになった 毎日が煌めく

古いシューズ脱ぎ捨てたら

大空まで飛んでいけるよ

もう悪魔のような教科書にはサヨナラさ

大人たちの呪縛

粉々にして

目のもの見せてやろう

みんなダッシュを決めるぜ♪♪


そこまで紗香が歌ったときステゴザウルスの

こどもが涙を流し始めた。

「スゴイ、素晴らしい、グレート」

ステゴザウルスが称賛を惜しまない。

「こいつ本当にただの恐竜か」

アキラが紗香にそっと耳打ちした。

「怪しいわね。どっかのスパイかも

しれないわ」

紗香も難しい顔で頻りに頷いた。


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