第3話

「それでさあ、メジャーデビュウーっていう話

なんだけどさ」

紗香が放課後にアキラに屋上で

せっついた。

「ああ、あれ」

「うん」

「ウソ」

「ゲッ」

「オマエ、ああでも言わなきゃ食い付いてくれねえだろ。

だから」

「ウソをついたと」

「そう」

「八回殺して磔獄門火炙りに十回処刑する」

「念入りだな、二回磔獄門火炙りが多かねえかい」

アキラが耳の穴を綿棒でかっぽじった。

「実はな」

「なん」

「メジャーデビュウーっていうのはウソじゃねえんだ」

「それじゃあ」

「ただし原始時代でだ」

アキラが大真面目な顔をしてそう断言した。

紗香がアキラの目の前で手をひらひらした。

「大丈夫か、連日の四十度に迫る暑さの

せいで頭がおかしくなったのと違うか」

「アホ、オレは正常だよ」

「いや、そう思い込むのが一番怪しい」

空は真っ青、抜けるような青空だった。

ヘリコプターが爆音を残して飛び去って行った。

「タイムスリップエージェントとは

もう話をつけてある」

「先生ーっ、アキラ変なんです」

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