第3話タバコ族

この新しい作業所で喫煙するのは武田と職員の南雲さんだけであった。

喫煙所のベンチに座り、タバコに火をつける。

喫煙者はこの2人しかいなかった。

キャンプ用のベンチがあり、小さな灰皿があった。

亀山芽依は喫煙者では無いが、ベンチに座り武田や南雲さんが楽しそうに話すのでかめちゃんは寄ってくるのだ。

かめちゃんは軽い知的障がい者。

いつも、ニコニコしていて武田に何かと懐いている。

武田は44歳だから22歳のかめちゃんは下手すると、娘みたいだ。現に武田には中学3年生の息子がいる。

休憩が終わると、半沢ユイナと3人で刺繍糸ししゅういとをハサミでカットする作業をした。

半沢は50歳のおばさんで、元看護師長さん。メガネを掛けていて、いかにもリーダー的な女性であった。彼女も統合失調症だ。


作業していると、サビ管が面接をしている。

ラジオが流れているので、話し声は聴こえないし、個室に入っている。

スーツ姿の若い男性だった。

その男性は翌日から出勤した。名前は金田一竜太。27歳のこの男性はてんかん持ちだった。喫煙族となった。

金田一君は、刺繍糸のカットが下手だった。生地に穴を開けたり、その都度南雲さんが注意している。

武田は、金田一の趣味は何か?と尋ねると飲酒ですと答えた。

飲酒が趣味って、日本語が合っているのだろうか?

帰宅途中、武田と金田一はコンビニでビールを買って飲んだ。

2人は結構飲めるタイプなので、居酒屋に一緒に居酒屋へ行ったりする仲間になった。利用者が増えると面倒くさい人間関係になるが、武田と金田一はステップアップする為にこの作業所に通っているので、ハローワークのネット検索を毎日していると言う。


名古屋市の千種区今池にある「鶏のちから」なる居酒屋が彼らのホームとなった。

給料日には1人3000円までと決めて飲んだ。

福祉作業所は薄給なので贅沢はできない。

刺繍が終わると、いつものDVDはこの磨き。

箱にシールが貼ってあるので、「ハガシ」の作業になった人は、ヘラを使ってシールを剥がす。これが難儀な仕事なのだ。

武田はどんどん剥がし、他の3人がオイルで磨く。

「剥がし」は、力がいるので男性の武田や金田一が交代で作業した。

そうしていると、また面接を受ける者がいた。果たして、いい奴なのか武田と金田一は喫煙しながら話した。かめちゃんも不安がっていた。

半沢さんは、ここの事業所は事務員を募集していたのに、DVD磨きに不満を抱いていた。

さて、どうなることやら。

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