第8話 誕生日

 そこにいたのは......フギンだった。

 

「びっくりした〜空にいるのに地面に人型っぽい影があるのは心臓に悪いって」

 と自分は笑いながらフギンの肩を叩く

 

「だって、子供のミューテェイトが暴れているって早朝に出たのに時間かかり過ぎて心配したんだよ〜!それに私を置いて行ったけど、私は見た目子供だけどサテライトに分類されたんだから少しは役に立てるよ!」

 と2人?で笑っていた、そうするとまたフギンが話し始める。

 

「あと誕生日なんだから、他のヒーローに任せれば良いのに......やっとヒーローが増えてきたんだしさ!」

 

「ヒーローが自分の誕生日祝って遊んでいる時に、同じ誕生日を迎える無力な人が傷つくのは嫌なんだよ。それに私にはもう睡眠と食事はもういらないから時間も人より多く使えるしね」

 

「まあそうだけど......でもケーキは食べようよ〜!!」

 

「そりゃあもちろん食べよう、別に食べれない訳じゃないし!」

と話していると、ほぼ無音で勢い良く飛んできてが前に現れた。

 

「ファイナルミッションターゲット補足、対象メテオブレイカー、フィクストスター級。対象八咫フギン、サテライト級。」


「な!?これは......噂の機械人形か?」

 

「やばいよ、貴音!デカいカマキリ何匹も倒して、アフターメテオの能力者テロリスト達を圧勝で制圧した奴だ!」

 

「E4 限定解除、適応スターダスト級」

そう無機質な合成音声が聞こえると貴音殴りかかるが間にフギンの攻撃が入る。

 

「貴音退いて!鴉式爆裂弾タイプクロウバーストショット!」

 E4の身体にヒットして吹っ飛んでいくがすぐに立ち上がり。

 

「戦闘対象の強さを考慮しコメット級の1段階上、サテライト級解除。守護衛星ガーディアンサテライツ起動」

 そう言うと背中から無数の銀色のボールが飛び出し浮遊する。

 

「なんだ......これはもしかしてロボットアニメでよく見る、独立して動きビームを撃ったりする武装か?」

 

 だとしたらマズい、フギンは高速で旋回したり出来ない。自分はともかくフギンがやられてしまう。

 

「フギィーーンッ!!逃げろ!!」

 

「なん......」

 音もなく球体が裂け光速のレーザーがフギンの身体に当たり、球体自体も飛びかかりフギンの身体にくっつき爆発した。

 

「ゥ............」

 意識なく落ちるフギンを受け止めたが血塗れで羽がもげかけて、肩が裂け足が抉れ指が数本吹き飛んでいた。

 

「フギン!目を開けろ!ケーキ食べるんだろ?なあ?」

 そ呼びかけながら本國から貰った最新の止血、鎮痛、抗生剤など他にも色々混ざった薬剤を刺し少し離れた地面に寝かせる。

 

「動物にも効いてくれよ......」

 そう思いながらさっきぶりだが救急と警察、それと本國にSOS信号を発信させた。理由は白緑の死神に出会ったら呼べとの事だった、呼ぶ理由はわからないが取り敢えずはするだけの事はした。

 

「ターゲット八咫フギン、瀕死。対メテオブレイカー、無制限解除アンリミテッドフィクストスター級。Evolution 4 フルアクティブ」

 緑色の輝きを放ち背中に光輪が現れ、腕が更に2本生えて4本になった。

 

「これは......一体なんなんだよ...... 」


――――――――――――


 研究施設 AM11:44

「やっとメテオブレイカーを九条E4を使って殺せると思うと最高だ。E4を通じて私から誰と戦っているか真実を伝え、その惨めな絶望の馬鹿面を拝ませてもらうとしよう!良い案だろう?本國副総理」

 

「ええ......そうでしょう......」

 このクソ以下のクズが......緊急事態につき、次に人望のある私が副総理(本来は日本に正確には無い役職)になれたが、他の国のナンバー2より力が弱い、私には止める事が出来ない。それに梶原君からの信号が来てそこそこ時間が経っている、幸い近いがこれ以上遅れてられない。

 

「首相......もう少し戦闘している様子を楽しまれては如何でしょう?その方が絶望が増しますぞ」

 

「そうだなぁ、どっちが死んでもどちらも再起不能になるだろうしなぁあ!」

 このバカ笑いするクソを放置して私は向かわねば。

 

 「ん......?本國副総理?どちらに?」

「野暮用です、お気になさらず。後で結末を教えてください」

 

「良い笑い話になるだろう!早う済ませて戻れるなら戻ってきた方が楽しいですぞ」

 

「ええ......」


 A.S.H.に通信したがまだ約85%までしか出来ていないらしい、だがそこまで達成しているなら人工知能補助装置をE4に当てれれば終わるはずだ。急がねば。



 ――――――――――――――

 

「おかしいだろ?オメェ?なんだってそんなに強いんだ?まだ活動期間短いが、こんなに手こずった事は無ぇ」

 

「学習システムによる賜物です」

 そう言いながら数十あるであろうボールから一斉射撃、増やした腕から衝撃波を放ちながら元からある腕を変異させたレーザーブレードを使い襲いかかる。

 

 「ぐうっっ......!?衝撃波のせいで姿勢が保てないッッ!?」

 

 動きを封じられたせいでレーザーは身体にぶち当たり衝撃波により地面に落下し、そこにブレードでトドメを刺しに来た。

 

「やはり、わざわざ近づいたな!喰らえ!」

 そう言いながら両掌をE4に向け極太のビームを放ち、吹っ飛んでいく。そこに追撃を加える為に空に飛びE4の目の前に出る。

 

「おらぁ!ぶっ飛び続けろおぉおお!!」

 

 E4の頭に拳を振り下ろし、地面に墜落寸前で蹴り上げ、更に反撃を許さず蹴り上げ続ける。

 

「E4 フェムトマシン損傷率27% 対象メテオブレイカーの損傷41% 酸素濃度低下、標高15km超え危険です。」

 

「お前、その感じ中身がいるな、誰だ?さっきから日本語って事は日本人だよな?何が目的だ?まあ何であろうとヒーローの私が止めてやる。俺は九条さんを守りたいんだ、お前で躓く訳にはいかない!」

 

「お答えで............劣勢で、なお減らず口を叩く......生意気だ、それに人が中にいる事くらい早く気がついたらどうだ......?」

機械音声にノイズが走り聞き覚えのある嫌な声が聞こえた。それは奴、薬師寺である。

 

「お前が入っていたとはな......なんだ?もう俺の事を始末したくて堪らないのか?人工能力者になれない事が判明したから、ヤケクソで機械を身に纏って襲って来たか」

 いや、しかし......サイズがおかしい気がする。こんなに薬師寺は小さかったか?

 

「私が?私自身がか?いやいや、そんな度胸は無いよ。このE4だってどうなるかわからなかったのだから、これはハッキングによって私の命令にならなんでも聞く傀儡だ」

 と憎たらしく笑う薬師寺。

 

「何だと?じゃあ誰が中身だってんだ、いやそもそもそれならば中身は必要ないだろう?ロボアニメみたいな生体部品扱いか?」

 

「冥土の土産に教えてやろう!これはフェムトマシンという極小の機械が入っている、だからそれの入れ物人間が必要というわけだ。そして何と!入っている人間はこいつでしたぁ〜!!」

 うざい高笑いを上げた後に、フェムトマシンアーマーの顔部分が、液体金属の様に動き無くなりE4の素顔が見えた。 見えた。

 

「あ......ああ............そんな......嫌だ。い、意味がわからない......お、俺は貴女を......守るヒーローに....」

 理解が出来ない、目の前には髪が銀髪になり虚な目に口は半開きで生命を感じない。だが、かろうじて白い息が出ている。九条さんが。

 

「ア゛ア......ああアああぁあアア〜......」

 声にならない嗚咽をしている瞬間に不意打ちでE4に鳩尾を殴られた。

 

「ぐおぅええっっ」

「どうだっ!?お前の恩人に殴られる気分は?苦しいだろう?悲しいだろう?」

 

「いいや、違うねッ!1番苦しんでいるのは九条さんだ、1番悲しんでいるのも九条さんだ。天が赦そうとはお前を赦さない」

 あまねく殺気が薬師寺にも伝わる。

 

「ヒッ!......無意味にビビらせやがって、お前がE4九条を殺さない限り止まらず、九条は民間人を虐殺し続ける設定に変えさせてもらったぞ。ヒーローごっこに熱を入れすぎたな、それでは私は会見の準備をしておこう。メテオブレイカーは所詮は偽善者に過ぎない悪魔だったが政府が処理した。もしくは謎の機械を私主導の政府が破壊し世間の安全は保たれたとな!」


そう言うと薬師寺からの接続が切れ、再び仮面を形成し戦闘体制に入る。

 

「九条さん......やめてください......こんな......こんな事ッ......貴女を救った手で、手を汚したくないです......」

それを無視しE4の拳が脇腹に入り更に衝撃波を放つ。

 

「ぐあぁあーっ!」

 そして貴音の身体を下に蹴り続け、地面に追突してめり込んだ。

 

「ぐふう......おえっ......ダメだ、覚悟を......覚悟をしなければ......」

 地面にめり込んだ貴音に目掛けて球体を全て飛ばす。

「マズい、これはフギンを吹っ飛ばした奴を何十倍でやろうとしてやがる、喰らえば頑丈な私の体も消し飛びかねない......だがッ!」

 

 まさにピンチはチャンスとばかりの好機、飛び回る衛星を撃ち落とす手間が省けるとばかりに貴音のエネルギー系最強の必殺技を放つ。

 

「インクレディブルマイティエナジーバーストッッ!!」

 両手の拳の掌の部分を合わせ突き上げ全身全霊をかけて放つこの技は反動が大きい。本体の体力を非常に消耗してしまう。練習時には動けなくなった程に。だが効果は絶大であった、球体は全て機能不全を起こし落下し停止。だがそれでも破壊し切れない事に貴音は恐怖した。

 

「わざわざ気合い入れにパッと思いついたな技名叫んで、こちとら必死にやって何で壊れねぇんだよ......この技は理論上山だって吹き飛ばせるのによ......でもカスったのと余波で九条さんにもダメージはあった様だ、手足のマシンはほぼ取れて胴体と顔だけになっているな......」

 

 そう思っていると手足のマシンを片手に集中して鋭い金属ブレードを形成した。

 

「諦めが悪いッ!まあ、エネルギーブレードじゃなくて良かったって所かな......九条さん......」

 そう呟き、雄叫びなのか泣き叫ぶ声なのかわからない声をあげてフラフラの身体で殴りかかる。

 

「うあ゙ぁ゙あ゙あ゙ぁ゙あ゙!!!!」

 フェムトマシンを取り除けば良いと考えた貴音はブレードを横から渾身の一撃で叩き折り、その折れたブレードで顔面を殴った。

 

「ッッッ!!............九条さん............」

 仮面は割れ、頭から血を流し虚な片目を晒している。再生されない様にフェムトマシンで出来たものを投げ飛ばした。 九条の身体に胴体のアーマーの残りのマシンが入り、頭部は修復せずそのままで胸部は薄いプレートだけになり、あまり物で全身の強度を上げ殴りかかってきた。

 

「損傷率92% ターゲット補足。抹殺続行」

 

「そんな......」

 もう九条さんに罪を重ねさせたくない、そう決心し己の信条を破るつもりで殴り返した。

 

「もうやめてください......眠ってください......」

 そう言い残りの力を振り絞り何発も殴り吹っ飛んで、E4は関節が普通は曲がらない方向に向き動かなくなった。

 

「うぅ......んぐ......ふッ......九条さん......」

 嗚咽。元々涙脆い貴音は、この今2つを失い茫然自失。直視する事ができず咽び泣くことしか出来ない。

 しかし、骨が無理矢理動かされ肉が裂ける音を響かせながら再起動するE4の割れたマスクから見える、半開きの死んだ目が。

 

「もうやめて......もうやめろよォッ!」

 そう泣き怒りながら手から僅かなエネルギー弾を放ち頭に当たり九条さんは終わった。いや私が終わらせてしまった。

崩れた市街地でくなったものの前で私はただ存在し続ける。

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