置かれし立場
第20話「インディアス新法」
1542年11月20日神聖ローマ皇帝カール5世(カルロス1世)によりインディアス新法が発布された。
アメリカ大陸の植民地化に関する初めての人道的な法律ともされている。
この法律はコンキスタドール達にとっては都合の悪い法律であり、
せっかく苦労して利権を手に入れてきた彼らの頭を悩ませる事になった。
-コパカバナ-
キロガ「どうですか、任務の方は?」
風格のある貴族風の男が、騎士の様な身なりをした女に語りかけた。
イネス「小娘の子守りとしては、可愛げのあるものではないな。
はぁ・・さき程も拷問の指示を終えてきてばかり・・」
うんざりする様にため息混じりで女は答えた。
キロガ「相変わらず彼女に刺客がさしむけられているのですね。」
イネス「サンティアゴの一件依頼、
残忍な女というイメージが私に定着してしまった様だ。」
キロガ「ただそういった指示だけでなく、重要な任をおってらっしゃる。
今度のここの統治者が女性となったので、貴女がうってつけといった所でしょう。」
イネス「あんな小娘と恋愛話でもしろと言うのか?」
キロガ「はは。
確かに立場のある女性というのは、秘めた思いをお持ちかもしれませんね。貴女の様に。」
女は辺りを見渡し、男を睨みつけた。
キロガ「失礼しました。セニョリータ。」
深々と男は紳士的に礼をした。
イネス「ところでセニョール キロガ。
いい加減、その呼び方をやめて貰えないか?」
キロガ「貴女も分かってるでしょう。
現状、セニョリータとお呼びした方が適切である事を。」
イネス「分かってる、分かってる!
けど、誰もこの場にいないだろう。」
キロガ「ダメですよ。
呼び名というのは常日頃から徹底していないと、思わぬ所で疑惑の目を持たれてしまいます。」
イネス「はあ・・窮屈なものだな。
最近の私の暮らしは。」
キロガ「貴女は様々な功績により、立場のある状態。
ただ悪い事ばかりではないでしょう。」
イネス「そうではあるが・・
そう言えば、私達がインカ帝国と呼んでるものは、
こちらではタワンティンスーユと呼ぶらしいな。」
キロガ「スーユとは邦や州の様な意味があるらしいですね。
で、タワンティンとは4を意味すると。」
イネス「北西部のチンチャイ、北東部のアンティ、南西部のクンティ、ここ南東部のコリャで構成されてるらしいな。」
キロガ「左様で。
特にコリャスーユは、チリへの足掛かりとなる重要な地域とも言えます。
そこでバルディビア様が目を付けたという所ですね。」
イネス「あの人にとっても大事な時期だな、ほんと。」
キロガ「はい、なおさら我々も気を引き締めていかないとですね。」
イネスは少し俯いてため息をつきながらも、どこか嬉しげな表情をしていた。
そして一呼吸置き、キリッとした面持ちで顔を上げて呟いた。
イネス「さて、小娘の様子でも見にいくか。」
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