第21話「腹の探り合い」
-コパカバナ宮廷-
宮廷内は物々しい警備が敷かれていた。
地位のある先住民の男が、配下の者へ指示を出している最中だった。
オトナ「よいな、賊への警戒を怠るでないぞ。
眠くなった者、疲れた者は遠慮せず交代せよ。
警護の質が大事という事を忘れるな!」
兵士「ハッ!肝に銘じております!」
「精が出ますな。」
オトナとはまた異なる装いの先住民の武官らしき男が、オトナに声かけきた。
オトナ「これは、ママニ殿。」
男の名はママニといい、穏やかだが相手の裏側を覗き込む様な眼差しを持つ、どこか食えない雰囲気のある人物である。
ママニ「人手が足りない様でしたら、私の手の者も配置させますよ。」
オトナ「ご厚意は有り難いですが、貴君の手を煩わせる程ではありませぬ。」
オトナは表情を変えぬまま、丁重な雰囲気で答えた。
ママニ「私と貴方は、今やコリャスーユにおいて同じ立場。
お互い15名からなるトクリコクの1人ではありますが、
貴方がその中でも特別な存在だと思っております。」
オトナ「いえいえ、何をおっしゃいます。
貴君からその様な言葉を頂くのは恐縮です。」
ママニ「私たちルパカ王国の者は長年強者についてきました。
今や私たちが従ったタワティンスーユは力を持ちませぬ。」
オトナの表情が少し歪み、微かに感情的に言葉を発した。
「滅多な事をいうものではないですよ。」
ママニは変わらぬ口調で微笑みながら言葉を続けた。
「私はただ貴方と腹を割って話したいだけです。」
オトナ「その様な事をあけすけに話す方とは言葉を選んで話さざるを得ません。」
ママニ「オトナ殿はそれで良いのです。
私たちは、相手の力如何により毒にも薬にもなります。」
オトナ「相手の力如何とは?」
ママニ「改めて言うなれば、
貴方がたの勢力が優勢であれば、
私たちは強力な味方になるという事です。」
オトナ「・・・」
ママニ「貴方が育ての親の様に接してきたチカ様は、今やコリャスーユのアポクナス。」
オトナ「とは言え、チカ様がコリャスーユの統治者ではありますが、
新勢力の支援があってのもの。」
ママニ「チカ様がアポクナスになるには若すぎるという声もあり、
妬む方々もいらっしゃる様ですね。」
オトナ「実際、流行病で皇族の方々が次々と亡くなり、
チカ様が異例の抜擢となったのは事実です。
快く思わない方もいるでしょう。」
ママニ「貴方の願いは、チカ様の幸せですか?
それともコリャ王国、いや失われた大帝国の復興ですか?」
オトナ「・・・私は、ただチカ様の幸せを願うばかりです。」
ママニ「傀儡の王女となるのは幸せでしょうか?」
オトナ「何が言いたいのです?」
ママニ「仮に何か事を起こす時、
もし貴方がたに力がある確信がある様なら私にお声がけください。
きっと、その時は強力な力になりますよ。」
オトナは少しの沈黙の後、笑いながら口を開いた。
「ママニ殿、ご冗談が過ぎますぞ。
貴君の言葉遊びで、誰かの首が飛びかねない。」
ママニも呼応する様に笑った。
「少しは緊張感がほぐれましたか?
ルパカ風の冗談もたまには悪くないですよ。
それでは。」
ママニはその場を離れようと背を向けたが、
すぐに振り返りオトナに再び話しかけた。
「そうそう」
オトナ「まだ何か?」
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