第2話 歪む性癖
そう、着ぐるみを着て動画配信をする、これが最近彼女がハマっていることなのだ。
もともと彼女の趣味は漫画やアニメ、ゲームだった。
大学の時に好きが高じてキャラクターに変身できるコスプレにハマり、社会人になって収入が一気に増えたことから完全にキャラクターになることができる着ぐるみにハマってしまった。
年に数回あるコスプレイベントへの参加はしているものの、京子は何か満たされない日々を送っていた。
もっとキャラクターになりきった可愛い自分を見てもらいたい、そんな気持ちで始めたSNSへの写真投稿。
写真へのいいね!やフォロワー数が日に日に増えていく。
着ぐるみを着ていれば顔も隠れるし、会社にバレるリスクも少ない。
膨らむ承認欲求が彼女を徐々に大胆に、そして歪めていった。
ある日、彼女はいつものようにアニメのキャラクターの着ぐるみを着て自宅で撮影し、写真を投稿した。
しかしその日の写真に対してやけにいいね!の数が多く、彼女は疑問に感じていた。
(前にも同じキャラで同じような写真upしたんだけど…なんでかな?本当は野暮だけど…ちょっとなんでか聞いてみよっか)
投稿した写真を引用し、理由を聞いてみることにした。
軽い気持ちでやったつもりが、今後彼女の活動、いや性癖までも歪めていくことになる。
(…え…え?やだ…そんなとこ…見てるの…)
返信されたコメントに困惑する京子。
コメントの内容は"汗染み"に関するものがほとんどだった。
撮影日はエアコンが壊れていつも以上に汗だくになっていた記憶はある。
だが着ぐるみはそういうものだと思って特に気にしていなかった。
しかしその日の写真に関してはいつも以上に染みがわかりやすかったらしい。
▷脇の下がすごいです!
▷首筋にめっちゃ垂れてて興奮しました!
▷タイツだけでなくスカートにまで染みてますよ
ショーツをギリギリで見せない構図で撮ったり、エッチなポーズをして煽ってみたりしたことはあった。
でもフォロワー達はそれ以上に中身である彼女に起因している本質的なエロさに興味があったのだ。
(わたし日頃からそんな目で見られて…じゃあこの写真も?もしかしてこれも!?)
京子は過去の投稿を見返した。
やはり自分が意図してエロさ醸し出したものよりも、注意深く見れば汗染みができている写真の方が引用やいいね!が多い傾向が見られた。
京子の知らないところでは密かに"汗染みの人"で浸透していたらしい。
無自覚にそんな写真をあげていた自分とそれを厭らしい目で見られていた事実に困惑する。
(やだ…見ないで…見ないで…)
気持ちとは裏腹に不思議と胸が高鳴り、興奮が収まらない。
お腹の奥がじわっと熱くなり、恥部から厭らしい体液がじゅわ…と流れ出てきてしまった。
彼女の中で何かが変わってしまった瞬間だった。
この時からか、京子のSNSへの価値観が変化していく。
以前のようないいね!などの数字に囚われず、いかにフォロワーに官能的に見せれるかを考えるようになってしまう。
しかしR-18認定されるような露骨な表現は避けたいとも思っていた。
注意深く見ればわかったり、フォロワーに想像させることに重点を置いた。
今回の動画配信で言えば、視聴者にはわざわざ裏起毛の肌タイツまで着て部屋の温度を上げていることや、マスクの中では猿轡を咥えていて涎が垂れそうなこと、マスクに鍵をかけていることなどはわからない。
しかし配信時間が長くなれば汗をかき、タイツが染みてくる。
配信中は何も喋らないのにマイクを入れることで自分の呼吸音をあえて聞かせ、不自然な呼吸音から猿轡を咥えているとはわからなくとも、何かを示唆させることはできる。
マスクを固定している金具をちらりと見せることと、鍵が入った箱のタイマーの数字が減っていくことに何かを想像する視聴者もいるかもしれない。
それらの変化や違和感をリアルタイムで見せる。
あえて全てを開示しない。彼女だけが全てを知っている。
その状況に彼女は興奮を覚えていた。
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