第28話 第一次大魔侵攻③
まずはこの三悪魔をどうかしない限り状況は好転しない。
特に厄介なのは遠くにいる城壁の上から砲撃を繰り返すサブナックだ、アイツがいる限り恐ろしい速さでこちらの城が崩れていく。
「遠くからちまちまと……」
このままではこちらの被害が甚大だ、どうしても魔力の消費が激しくなるが、障壁魔法で城全体を覆うしかない。
「なんだよテメェ、俺たちの邪魔しようってのかァッ⁉︎」
「ホント邪魔、消えて」
「オラッ、まずお前から殺してやるよ!」
ブエル、アンドラス、サブナックが俺を標的に定めた。
これでいい、まずはコイツらの意識をこちらに集中させる。
「かかってこい、お前ら全員まとめて俺が相手してやる」
「人間風情が、俺たちに勝てると思ってんのか⁉︎」
「ああ、勝てるさ」
「チッ、コイツ!」
上空から急降下してくるブエルは暴風魔法で牽制、吹き荒れる風に流されて制御を失っている間にサブナックに狙いを定める。
「まずはそのふざけた城壁を破壊させてもらうぞ」
こちらへの砲撃を繰り返す城壁に対して反撃の火炎魔法を放つ、だが──
「そんなの無駄」
間にアンドラスが割り込んだ瞬間、再び火球の軌道は大きく逸れていってしまった。
そういえばアンドラスは常時魔法が無効のボスキャラだったな、どうやら不思議な力によって魔法の軌道を変えてしまえるらしい。
魔法でしか戦えない俺とは少し相性が良くないな。
「アンドラス、まずはお前から倒したほうがよさそうだな」
「は、できんの?」
「もちろん」
上空に浮かぶアンドラスに向けて雷撃魔法を放つ。
当然雷は逸れながら地面に落ちていくわけだがそれでいい。
「レオ王子、アイツはボクに任せてください!」
その先には国民の避難誘導を終えたヴィニアが待ち構えていたのだから。
ヴィニアは落ちてきた雷を手にした剣で受け止める。
「ヴィニア、そいつは魔法を無効化する。お前に任せたぞ!」
「はい!」
剣を持ってはいるものの、アンドラスはそこまで近接戦闘は得意としていないはず。
ヴィニアなら問題なく倒せるはずだ。
「それじゃあ次はお前の番だ、サブナック」
「はっ、このオレの砲撃に耐えられるかよ!」
城壁に備え付けられた砲門が開き、一斉掃射が行われる。
襲い来る無数の光線、その一つ一つが凄まじい火力を誇り、爆発と轟音が絶え間なく続く。
こんなものに晒されては大国のデゾンガーン帝国といえどもひとたまりもないだろう。
サブナック、奴はここにいる三悪魔の中でも最も強力で危険な存在だ。
この場にいる全員を守りながら戦うのはなかなかに骨が折れる。
一撃で仕留めるしかない。
「今度はこっちの番だ。いくぞ、秘奥火炎呪文“フランダール”」
アンドラスがヴィニアの相手で手一杯になっている今、俺の魔法を遮るものは何もない。
文字通り最大火力の一撃はサブナックの砲撃さえも飲み込み、城壁に触れたと同時に大爆発を巻き起こす。
「なっ、人間が……このオレを超える威力の魔法だと⁉︎」
「これで終わりだ、秘奥雷撃呪文“ゼルテドライ”」
城壁の破壊には成功した、あとはサブナック本体のみ。
立て直す暇も逃げる時間も与えない、間髪入れずに放った二撃目の魔法を直撃させる。
「ク、ソ……このオレが……」
「あとはブエル、お前だけだ」
「ふざけるなよォ!」
残り二体の悪魔と違って近接戦闘を得意とするブエルは、真正面からこちらに突っ込んでくる。
格好の餌食だ、俺は先ほどのサブナックのそれと同じ原理で、右手から魔力の固まりを光線に変えて放つ。
「がはっ……」
「ヴィニア、そっちもアレで終わらせるぞ!」
「はい、お願いします!」
残るはアンドラス一人。
今度はヴィニアを狙って雷撃魔法を放つと、再びそれを剣で受け止める。
確かに魔法は効かないかもしれない、だが魔法剣となれば話は別だ。
勇者の奥義を防ぐ術をアンドラスは持ち合わせてはいない。
「トゥオーノブレイク!!」
雷を纏った勇者の一撃はアンドラスの剣を叩き折り、そのまま胴体をも両断した。
「す、すごい……」
「救世主だ!」
「今が絶好の機会だ、全軍何としてもこの城を守り抜け!悪魔たちの好きにさせるな!」
これで脅威となっていた三悪魔は全て片付いた。
騎士団も士気を取り戻し、攻勢に出ようとする、だが……
「待て、何か来るぞ!」
「なんだアレは……巨大な熊⁉︎」
俺たちの目の前にはサブナックが生み出した城壁よりも巨大な、岩で出来た熊が立ちはだかっていた。
それは身の毛もよだつ程の威圧感と魔力を放ち、一歩進むごとに大地が鳴動する。
「何あれ……あんなの、どうしろっていうのよ」
その姿に圧倒され、上がりかけていた士気は瞬く間に消え失せ、ユニもまた絶望の表情を浮かべている。
「とうとうお出ましだ、この大軍の親玉が来たぞ」
「レオ王子、どうしますか?」
「決まってるだろ、倒すしかない。アイツらを倒す、この国を守る、そのために俺たちはここに来たんだ」
「その言葉を待っていました。ボクに命令してください、アイツを倒します!」
これ程までに強大な敵と対峙するのは初めてだろう、だがヴィニアだけは希望を失っていない。
いつも通り、それどころかいつも以上に勇敢に立ち向かおうとしている。
「地獄の王、プルソン……中々の大物が来たのね」
「グレモリー!他の悪魔は片付いたのか?」
「ええ、問題ないわ。あとは三人でアレを壊せばいいのね」
本当に頼もしい仲間たちだ。
二人とも目立った外傷はない、多少の疲労は蓄積されているだろうがまだまだやれそうだ。
残る敵はあと一体、なんとしてもここを切り抜け、第一次大魔侵攻で勝利を収めてやる。
「それじゃあ二人とも、アイツを倒すぞ!」
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