第23話 撃退
今の雷によって悪魔たちは跡形もなく消滅した。
それを目の当たりにしたヴィニアやシアンはポカンと口を開け、目を丸くしている。
「レオ王子……ボクには貴方の底が見えません。どうしたらそんなに強くなれるのですか?」
「さぁ……まあでも、ヴィニアはいずれ俺なんかよりずっと強くなる。だからあんま心配はいらないぞ」
「今のを見ると、とてもそうは思えないのですが……」
少なくともバアルを倒せるだけのポテンシャルは秘めているわけだからな。
彼女が成長してくれればこの戦争もそこまで心配することはないはずだ。
さらに俺たちには他にも頼もしい仲間がいる。
「威勢の良かった割に大したことないのね」
「どうなっているんだ……あり得ない、その人間は一体何者だ⁉︎」
「言ったはずよ?彼は私の夫となる男、少しは魅力を理解してもらえたかしら」
サミジーナは片膝をつき、息を切らしている。
対するグレモリーは涼しい顔をしており、勝敗は火を見るより明らかだ。
「お前もだ、グレモリー……本気で我らに刃向かうというのか?魔王バアル様に勝てると思っているのか?」
「ええ、貴方たちはすぐに思い知ることになるわ、真の悪魔の王の存在をね。まあ残念ながら貴方はその時を迎えられないのだけれど」
グレモリーがゆっくりと天に掲げた大鎌は、太陽を反射してギラリと光る。
「お前はいずれ後悔するだろう……我らに、バアル様に従わなかったことを」
「私がこの選択を後悔することは決してないわ。それじゃあね、さようなら」
最後の瞬間はあまりにも静かであった。
優雅に、それでいて鋭く振り下ろされた大鎌は、サミジーナの首をいとも容易く刎ね飛ばした。
「終わったわ、レオ王子」
「見てたよ。想像以上に強いんだな」
「そうね、貴方のことを想えばどこまでも強くなれるわ」
「……そうか」
グレモリーはなんでもないように恥ずかしいセリフを口にする、どこまで本気かわからない。
ただ、彼女が頼れる味方であることだけは確かだ。
「それにしても、俺たちは思った以上にバランスが取れてて相性も良いな」
「そうですか?ボクたちとレオ王子とでかなり差があると思いますが……」
「そんなことないさ。みんな俺にできないことができるからな」
「治癒魔法を身につけて本当に良かったです。おかげでこうしてレオさんのお役に立てるのですから」
大鎌を武器として近接戦闘を得意とするグレモリー、治癒魔法によって仲間を回復できるシアン、攻撃魔法と補助魔法のほとんどを身につけた俺。
勇者ヴィニアに加え、最もオーソドックスな役割をこなせる3人が集まってパーティが結成されている。
俺とグレモリー、本来ゲームでは登場しない二人がいるものの、既に完成形に近いといっても差し支えない。
「ただ、数は多いに越したことないわ。バアルは魔界の悪魔を大勢引き連れてきている、対策は必要かもしれないわね」
「そうだな、でも悪魔と対等に渡り合える奴なんてそう簡単には──」
いや、俺は少なくとも数人知っている。
今この世界のどこかにはいずれ勇者パーティの一員となるメンバーがいるはず。
彼女たちを見つけ出してジョット王国に集めることができれば、魔王軍との戦争もより楽に進められるのではないか。
どちらにせよ、これから奴らとの全面衝突は避けられない。
そしてこの一件で俺たちはバアルに目をつけられてしまった。
ならば間違いなく必要だ、魔王軍を倒せるだけの才能を持った者たちの力が。
「探そう、共に魔王軍と戦う仲間を」
「そんな簡単に見つかるものなのでしょうか」
「まずは一人心当たりがある。けどその話はあとだ、今は帰ろう。傷ついた人や疲弊した人も多いからな」
「そうですね。改めてレオさん、本日は本当にありがとうございました。おかげでこの国を守り抜くことができました、正式なお礼はまた後日させていただきます」
「いいよ、魔王が現れたんだ。これからは今まで以上に助け合っていかないといけない、いちいち礼をしてたらキリがないからな」
「……レオさんと巡り会えたことは、私の人生における最大の幸福です」
「大袈裟だっての、それより早く帰ろうぜ。みんなも疲れてるしな」
「はい。それではまた会える日を心待ちにしております」
悪魔の大軍勢との交戦になったのだ、ましてやジョット王国もリュンヌ王国も小国、騎士団の受けた被害は決して小さいものではない。
それでも魔王を退けたことを今は喜ぶべきなのだろう。
俺たちは勝利の報告を手土産に、傷ついた兵を連れてそれぞれの国に戻る。
そして悪魔を退け、リュンヌ王国の防衛に成功したことを報告すると同時に、悪魔たちの王バアルが地上に顕現し、魔王軍の侵略が始まったことを伝えた。
その情報は瞬く間に国境を超えて世界中に広まり、人類は魔王軍との戦争に備え始めるのであった。
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