第5話 お転婆少女はまさかの──!?
「え!?王女!?あなた王女だったの!?」
私が大声で叫ぶとサイレントベアーは少しビクッとしてグルルと唸った。
「あっ、ごめんね!!」
『い、いや…大丈夫。少しビックリしただけだ!』
サイレントベアーは少しまだピクピクしてる。
そしてメルネット…様?は驚いたように言っ
「あれ?まだ言ってなかったっけ?ま、いっか!!」
そう言うとメルネット…様はサイレントベアーから離れて姿勢を正した。
「では改めまして!!私はメルネット・リル・ベルシャルト!!よろしくね!!お姉ちゃん!!」
きれいなカーテシーをしたあとに満面のニッコリした笑みを浮かべたメルネット様はまるで女神のようだった。
可愛いいい!!!!!!!
はっ、!!
「ごごごごめんなさい!!メルネット様がまさか王女……様とはっ!!」
私があたふたしているとメルネット様は少し悲しそうに言った。
「お姉ちゃん…メルネット『様』じゃなくてメルティーって呼んで?私、お姉ちゃんにメルティーって呼んで欲しい。敬語もいらないよ!!」
め、メルティー?
聞いたことがある。
人間族のおえらいさん──貴族には愛称があって、貴族の友人や家族などの許された人しか呼べない名があるって…。
「だけどそれって不敬罪とかに…」
チラッとチトーリに目線を向けるとパチっと目が合った。
「メルネット様、いくらメルネット様のお願いでも、それでは不敬罪としてこの女が処されてしまいます。」
チトーリがそう言うと、メルネット様は眉をハの字にした。
「わかった…。じゃ、じゃあ〜メルネットちゃんは?それならいいでしょ?ね?ねっ?」
それもギリギリアウトなのでは!
またもやチトーリに目線を向けると、チトーリは汗を書きながらしぶしぶウンと頷いた。
え、マジで…?
「で、ですが…」
なんとか免れようとするも、メルネット様が泣きそうになりながら「お願いっ!!」と言ってくる。
「うう〜…。わかったよ…メルネットちゃん!!……ふ、不敬罪とかにしないでね!!」
私が言うとメルネットちゃんは急に笑顔になって「やったー!!!!」と言いながらぴょんぴょん飛び跳ねた。
可愛い!!
私もこんな妹がいたらな〜!!
私がそんな事を思っていたら、メルネットが私に抱きついて来た。
「チトーリ!!あのね!!お姉ちゃんには獣精霊様の加護があるんだよ!!」
メルネットがチトーリに言うと、チトーリはほぉと興味深そうに私を見た。
「加護持ちですか。これはこれは珍しい。獣精霊様の加護は確か…動物との意思疎通を可能にする加護…でしたかな?」
チトーリは博識なのか!!
「凄い!!良くわかりましたね!!」
獣精霊の加護はあまり多くない。そもそも加護持ち事態が少ないので、加護の内容も持ってる人しか知らないことが多い。
戦の時も加護持ちは特にマークされていた。
なぜかというと加護の内容がわからないからだ。加護の内容がわからないのに迂闊に戦うと痛い目にあう。
「ハッハッハ。なに、戦の時代にベルシャルト王国を救ってくれた英雄の1人が、獣精霊様の加護を持っていたんですよ。」
チトーリはニコニコしながら話す。
「これは私達、ベルシャルト王国民なら皆知ってるようなお話です。」
────これは昔、新星暦ではなく星暦だったころのお話。
ベルシャルト王国がまだシャルテ帝国だったころ。
人間族は数は多かったが、戦力は全くと言ってもいいほどなかった。
食料も尽き皆痩せこけ、戦士達もぞろぞろと倒れていった。
そんな時、運悪く魔界にいた魔族の中でも特に強い力を持っているとされた魔神族が帝国を襲った。
ここまでか…皆そう思った。
しかし、突然帝国が光に包まれ重症を負っていた者も、病気で倒れていた者も皆一瞬で健康体になった。
何が起きた?
皆疑問に思った。
ふと空を見上げると、薄い金髪に天使の羽と光輝く白いアウレオラを持った少女が空を架けて魔神族と戦っていた。
よく見ると少女以外にも羽やアウレオラを持っている数十名の少年少女達が魔神族と勇敢に戦っている。
天神族と呼ばれる種族だ。
下に落ちてきた者もいた。しかし、すぐ立ち上がって戦った。
特に目を引いたのは、金髪の少女。
まるで妖精のように舞い、敵を圧倒する。
皆少女に釘付けになった。
気づいたら戦いは終わっていて魔神族は引いていった。
そして下に降りて来た少年少女達を英雄として奉った。
しかし、魔神族が引いても飢餓でまた人々が死ぬ。
どうしたものか。と悩んでいたら、金髪の少女がある提案をした。
なんと、森の恵みを分けてくれると言うのだ。
森の恵みは動物と森を仕切っている妖精族や精霊族に許可をもらわないと採ってはいけないという掟がある。
自分達人間族は弱いがために森の中の種族たちに出会う前に魔獣などにやられてしまう。
しかし、少女はすべてを解決してくれた。
動物や精霊族、妖精族には少女が話をつけてくれたらしい。
どうやら少女は動物と話せる獣精霊の加護があると言うのだ。
魔獣はというと、ほとんどすべて片付けたので心配無用といった。
森に行って見ると、今まで歓迎されず、妖精族の力で無理やり戻されていたのだが、まるで歓迎するとでも言うように木々が風で揺れる。
ああ本当にありがとう。
「と、言う話です。」
チトーリがニコニコしながらゆっくりとメルネットにもわかるように話した。
「いや長くない!?」
私がすかさず突っ込むと、チトーリはハッハッハと笑った。
「いやはや、これは私が書物で読んだことなのです。ベルシャルト王国の皆が知ってるものはもう少し短いですぞ。」
チトーリは達者なおヒゲを触りながら言った。
きっとこのお話は私達の事だろう。
あの時は見てられなくて助けたけど…こんな風に語られてたなんて…!!なんか恥ずかしい!!
「わー!!やっぱり英雄様達はかっこいいなー!!」
と言いながらメルネットは私に再びぎゅっと抱きついた。
「まぁ、お姉ちゃんの方がかっこいいけどね!!」
メルネットはニッコリ笑ってえへへと一層抱きしめる力を強くする。
か、カワワワ!!
何この子!!可愛い過ぎるんですけどー!!!
後日談
「ねえチトーリ?私がメルネットちゃんを助ける前に剣の交わる音が聞こえたんだけど…なにかあったの?」
私がチトーリに聞くとチトーリは答えた。
「興奮したブルーベアーが私に襲いかかって来たのです。雌だったのでギリギリ互角に渡り合えましたが、雄だったらきっと私は今ここにいないでしょう。」
チトーリは遠い目をしながら少し青い顔をした。
「雌でも渡り合えたなら人間としてはいい方なんじゃないかな?結構強いでしょ?チトーリ」
私がそう言うとチトーリは涙目で感謝を伝えられた。
「本当にありがとうございます!私だけではきっとメルネット様と一緒にお空の向こう側に行っていたでしょう!!」
チトーリがそう言うと、メルネットも涙目で感謝を口にした。
「そうだよ!!本当にありがとうお姉ちゃん!!」
あはは…
私は苦笑いをするしかなかった。
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