私立ポッポ大学
『これより、第2回鉄道将軍会議を始めたいと思う。司会は前回に引き続き、私が務めさせていただく』
3月30日、ポッポベースの会議室にて、2週間ぶり2度目の鉄道将軍会議が始まろうとしていた。
「まず、ポッポズワールドの建造状況についてだが、ポッポベースに続き外壁も完成しつつある。あとはインフラ整備をすれば、ひとまずひと段落だ」
ノートに書いた完成予想図を見せつつ、ダンがポッポズワールド建造の現状について話す。
ポッポズワールドは、ポッポマンたちの拠点兼ダンが理想の人生を歩む舞台として構想された都市であった。
現時点では彼のいうとおりポッポベースと外壁しかないが、いずれ各眷属の家も本人の要望に従って用意する予定が建てられている。
「で、次は何をするんだい?会議があるってことはこの『先』があるんだろう?」
昔からの付き合いであるゴウタがこの後の流れを察し、話を進める。
「そうだね……ここから先は『大学』を作ろうと思うんだ」
「大学……ずいぶんと具体的な施設を作ろうとしているね。どうして作るの?」
「テンスケに応えて教えよう。俺のコンプレックスを埋め、未練を断ち切るためだ……!!」
(恥ずかしげもなくみっともないことを言うんじゃないよ箱根ダン!)
ダンの堂々としたコンプレックスと未練宣言に、第四将軍ことヤクマルはツッコミを入れる。
「高校を途中退学し、大学に行けなかったコンプレックスと、リンちゃんと一緒の学校に行けなかった未練を、同時に解決するための施設……それが大学だ」
「なるほど……名づけるなら、私立ポッポ大学』って感じかな?」
「おお、いい名前じゃん!ゴウタの案採用!名前は私立ポッポ大学で決定!」
(クソダセえええええええええ!!もっと無いアタマ捻ろや!)
あまりに安直な名前に、ヤクマルが心の中で罵倒する。
『大学くらいの規模の建造物を建てられる土地は十分に残っていたので、きわめて現実的な計画になります』
(教師どうするんだよ!大学教授できるくらい頭いい眷属なんて、綾瀬ノリオとオーリン人の眷属数人くらいしかいないぞ。教員不足だって!)
『9月1日に開校&入学式を行うことを目標にするのもアリかもしれません』
ヤクマルの心の中の指摘が届くことは無く、大学の計画は進んでいく。
「あ、あの……授業内容とかはどうなるんで……しょう……か……」
粛清される恐怖におびえつつ、ヤクマルがダンに質問する。
ダンはしばらく考え込み、数分後に口を開いた。
「……正直、僕の学力では一般的な大学の授業についていけない。だから、眷属のみんなから、その人の得意分野を学ぼうと思う。僕のわかる範囲で」
「なるほど……いい意見ッスね」
(オマエの割にはなっ!)
心の中で罵倒を交えつつ、ダンの出した意見を褒めるヤクマル。
「まあ、大学の話は外壁とインフラが完成してから改めて詰めようと思う。さて、次の議題についでだが……トンコ、資料をみんなに配ってくれ」
トンコがあらかじめ印刷された資料を他将軍3名とダンに配る。
そこには、デカデカと『記憶改変ができる眷属が欲しい』と書かれていた。
■□■□■□■
「記憶改変ができる眷属が現れるまでが……俺が離反できるタイムリミットっスかねぇ……」
同日の午後、鉄道将軍会議終了後に瑞穂に来たヤクマルが、山奥の自然に目をむけつつ、現状の整理をする。
箱根ダンが記憶改変できる眷属を欲した理由は3つあり、そのうちの2つが会議において彼らに説明された。
1つ目の理由は、より確実に欲しい能力を持った眷属を手に入れるため。
眷属の能力が本人の趣味嗜好や願望に由来している以上、一般人に対して記憶改変できる眷属がいれば理想の眷属を低コストで作れるようになるのだ。
2つ目の理由は、仲間の裏切りを防ぐため。
ポッポマンは、眷属の身体を支配下におけても、心までは支配下におけない。
それどころか、心を読むことすらできない。
だからこそ、自分への反感を抱かないように、自分を崇拝してくれるように記憶改変することで裏切りを防げるのだと、彼は会議で高らかに語った。
「まったく……信頼できるヤツだけ集めた会議であんなこと言われたら、心臓バクバクするじゃん……!」
なお、3つ目の理由は「恥ずかしいから」と将軍にすら教えなかった。
「とにかく……そんな眷属が出たらヤバすぎる。俺の心は確実に……塗りつぶされる」
ヤクマルが震える手を抑え、大好きクラブの部員がまとめてくれた資料に目を通す。
「信頼できる目撃情報は2つのみ。いずれも、場所は
決意を新たにしたサイコは、能力を使ってポッポズワールドへと帰還していった。
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