極秘会議と誘拐
「丸山さん、鎌倉さん、そして出水隊長。私の誘いにのってここまで来てくれてありがとう。心より歓迎しよう」
3月22日、リンやネリ、出水タロウの身体はタカセ区と呼ばれている人工島に隠された研究所『シキムラボ』の中にあった。
シキムラボは、四木村夫妻が満足に国家機密の研究を行えるようにするために作られた研究所である。
2人はポッポマンの出現以降、そこに隠れることを国から命じられ、ボーンロイド越しに指示を出していた。
「久しぶりですね……ドクター四木村」
「……その言い方だと、ボクかケイスケか分からないんだけど」
四木村
「どっちもですかね。それで、なんで俺たち3人を呼び寄せたのですか」
「……ポッポマンとその勢力に、絶対にバレてはいけない話をするためだ……タイラ、この部屋を暗くしてモニターを投影してくれ」
シキムラボの会議室はだんだんと暗くなっていき、プレゼンテーション資料のような画面が壁に投影される。
そこには、大々的にこう書かれていた。
『ポッポマンに安らぎを与えよう』と。
「ここ数日、人工知能や専門家の方々にポッポマンという存在の分析と対処法を考えてもらった。そして、これが導き出された結論だ」
「……あのバケモノにわざわざ安らぎを与える理由を、教えてくださいよ」
突拍子もない上に納得できない対処法に対し、出水タロウは暗に拒否感を示す。
「出水隊長、ポッポマンが負の感情で力を増すことはすでに知っているな」
「まあ、そうですね。丸山さんの中にいるポガステアもそう言っているらしいですし、客観的なデータでもきちんと証拠があったはずです」
「だから与えるのだ。わざとストレスのない状態を最低でも半年ほど作ることで、彼は大幅に弱体化する可能性が高い……そう、AIは予測したのだ」
「なるほどな……確かにこれはポッポマン勢力にバレてはいけない作戦だ」
「仮に安らぎを与えても、それが弱体化の手段だと知ってしまえば、逆上して逆に強化されかねないからな。では、次に具体的な安らぎの手段についでだが……」
シキムラボの極秘会議は、続いていく。
■□■□■□■
一方そのころ、厚山県厚山市のとある家に、3人の人間が訪れようとしていた。
『ピンポーン』
「おとうさん、私がかわりに出る」
「そうか。まあ……たぶん政府の安否確認だろ」
その家には、2人の人間が住んでいた。
丸山リンの父と、丸山リンの母である。
2人は娘が国立研究所に連行されて以降も、警視庁から貸し出された護衛用ボーンロイド1体と共に引っ越しせずに厚山市で暮らし続けていた。
「はいはーい、なんですk……」
「「動くな!ポッポマン大好き倶楽部だ!言うこと聞かなかったら撃つぞ!」」
来訪者たちの正体は、ポッポマン大好き倶楽部の部員であった。
大好き倶楽部のメンバーは、ポッポマンのもとに上陸した複数名以外にも存在している。
彼らはポッポマンに貢献するべく、綾瀬ノリオの指示のもと、来たるべきその時まで息を潜めていたのだ。
「あっああっ……あっ」
「安心してください。あなた達とその娘がポッポマン様に逆らわなければ、命は保障されるでしょう。大人しく、我々に拉致されてください」
部員たちによって、瞬く間に拘束されていくリンの母。
「お、おい!どういうことなんだ!オマエたちは一体何なんだ!」
『外敵を確認、排除フェーズに移ります』
家の奥から、リンの父とボーンロイドが出てくる。
「ポッポマン様の従順な眷属……といったところでしょうか。変身」
部員の1人が、サナギになってバケモノになる。
『チクバ特別区でポッポマン様のケムリを吸い、授かったこの力……使わせてもらいます!』
ポッポマンがチクバ特別区を襲撃したあの日、瑞穂に残っていたポッポマン大好き倶楽部の人々もノリオの指示でそこを訪れていた。
そして、その時にポッポマンが排出していたケムリを吸った後、夢の中で同意したことで、彼らは国にマークされずに眷属になっていたのだ。
『邪魔だクソロボット!』
ドゴッ!
バケモノの拳が、護衛用ボーンロイドを破壊する。
「あっ……ああっ!」
『さてと……大人しく献上品になってもらおうか』
リンの父も、部員によって拘束された。
その後、部員たちはポッポズワールドの中にいるワープの能力を持った眷属によって即座にオーリンへと逃げていった。
ボーンロイド部隊と警察が駆け付けた時には、誰もいなかったのだという。
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