ニュークリアなき世界を作る能力
「ポッポマン様、この計画にはモスカー連邦がヤケクソになってニュークリア爆弾をオトナリア公国に撃ちまくるリスクがあります」
ポッポベースの執務室にて、モスカー連邦襲撃計画の資料を見た綾瀬ノリオが、想定されるリスクをダンに提示する。
モスカー連邦は、西オーリンの比ではないレベルで大量のニュークリア爆弾を持っている。
その数は1000を超えており、すべて爆発すれば人類は余裕で滅ぼせるとされている。
「この作戦を実行するのであれば、ニュークリア爆弾を無力化する能力を持った眷属は、必要不可欠でしょう……用意できるかはさておき」
「いや、作れる見当はすでについている」
ダンはここ最近、眷属たちが目覚める能力について、ひとつ気付いたことがあった。
それは、基本的に本人にとって相性の良い能力や願望を叶えるのに都合が良い能力があてがわれることである。
素での視覚に不安のあるゴウタには、周囲の状況が360度はっきりとわかる超感覚が。
生まれつき発声が苦手で会話が嫌いなトンコには、口を介さずに意思疎通ができるテレパシーが。
そして、この間死への恐怖を感じ、逃れたいと願って完全な眷属になったモブ1は、一定時間だけ不死身になる能力があてがわれた。
能力と本人の間には、一定の関連性があることは火を見るよりも明らかであった。
「……なるほど。つまり、人選次第である程度欲しい能力を持った眷属は作れるというわけですか。さすがポッポマン様、聡明ですね」
ダンの仮説を聞いたノリオが、自らの崇拝対象を褒めたたえる。
「ニュークリア爆弾もとい、それを形成するニュークリア物質を憎む人は多い……彼らなら、いい能力に目覚めそうだと思わないか?」
「よい考えですね。ニュークリア爆弾をこの世から減らすことはわりかし人道的とされているので、国際的批判も少ないでしょう」
こうして数日後、ダンの要請を受けたヒンヘン首相の指示によって、ニュークリア爆弾や物質を憎み、ポッポマンの眷属になりたいと願う人々17名が集まった。
「すばらしい!この能力なら確実に広範囲のニュークリア爆弾を無効化どころか消滅させられそうだ!」
17名の志願者のうち、9名が完全な眷属となり、その中の3人がニュークリア物質を無効化できる能力に目覚めた。
そして、そのうちの1人である30代女性『
「周囲のニュークリア物質を消滅させる粉をあたりにまき散らしながら飛ぶ蝶を手から生み出す能力……最高やんけ!しかも蝶は本人から離れても消滅しないし!」
『……アリガトウ』
モゲンが、褒められたことに対し、カタコトながら瑞穂語で感謝の意をあらわす。
「ダン、蝶の耐寒実験の研究結果も先ほど出た。モスカー連邦の寒さには十分に耐えられそうだったよ」
ゴウタの知らせを受け、ダンのモスカー連邦攻撃作戦の実現性がほぼ確実になる。
「ありがとう、ソウ・モゲン!そして、キミの
モゲン変身形態あらため、バタフライは4本の腕と羽を持っておりまさしく蝶のような見た目をしていた。
「そして……キミのおかげでこの後の計画は少し変更になりそうだ……ああ、楽しみ!」
ニュークリア爆弾は、ポッポマンに関係なく人類が抱えている問題である。
仮にそれらをすべて無力化して使えなくすれば、ポッポマン一味は一部の人々から『必要悪』として支持を得ることもできるであろう。
そうすれば、むやみに国際問題にかかわるよりも手っ取り早く、支持者を増やすことができる。
「あとは街を守るバリアを出せる眷属とステルス性能を物に付与する眷属さえいれば……僕の計画は完璧になる!アハハハハハ!」
『……ソロソロ、ヘンシン、トキタイデス』
バタフライのことはそっちのけで、箱根ダンは自分の計画に酔いしれた。
17人を眷属にした翌日、ダンは街を守るバリアを出せる眷属とステルス性能を持った眷属をポッポズワールドに呼び寄せた。
この2体の眷属に関しては、新しく作る必要はなかった。
西オーリン侵攻の際に作った100体の眷属の中に、条件を満たす者が1人ずついたからである。
バリアを作る能力を持った眷属の鉄道名はパール。
頭部が貝に覆われた見た目をしており、貝殻のような形状をしたバリアを自由な大きさで2枚だけ出せる能力を持つ。
変身者はオーリン人男性の
彼は常日頃から外傷による死の恐怖を強く抱いていたらしい。
ステルス性能を付与する能力を持った眷属の鉄道名はストライプ。
全身が迷彩柄に覆われており、触れたものをレーダーや目視で見つけられない状態にする能力を持つ。
変身者は海外にルーツを持つオーリン人男性のフラト・グレイブ。
彼は常日ごろから『消えたい』と願っていたらしい。
両者ともに、西オーリン併合の際には国境付近の方で活躍していたらしい。
ダンはバリアが張れるカクハンに街を守るバリアを1枚展開するように頼み、ステルスを付与できるフラトに、とある物をステルス化させるように頼んだ。
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