野望成就編
僕の世界と鉄道将軍会議
ポッポマンが瑞穂に襲来し、ダコンがオーリンに襲来してから1日が経った。
「……キミたちの死は無駄にしないっス」
都市建設予定の一角に作った墓地の前で、モブ2こと脇田ヤクマルは20個の墓石に手を合わせる。
今回の襲撃で、19体の不完全な眷属とディスコが命を絶やし、うち13体がポッポマンの糧となった。
3割ほど出来ていた街も、ダコンとの戦闘で完成予定日が1日だけ遅れることになった。
それでもなお、ポッポマンは歩みを止めることは無い。
「この街の名前は、ポッポズワールドにしようかと思うんだ」
都市建設予定地の中心にある正方形の宮殿『ポッポベース』内部にて、箱根ダンが都市の名前についてヒンヘン首相に伝える
「ポッポマンの世界……ですカ。いい名前だと思いマス」
「そうか!ありがとう。それとあなたが貢いでくださったこの服、なかなか着心地よくて最高だよ」
ダンは今から数十分前、ヒンヘンから特注の衣装をプレゼントされた。
瑞穂とオーリンの伝統衣装を混ぜ合わせたような紺の長袖服で、それを纏ったダンはまるで王様のようであった。
「とりあえず、部下の
「は、はい!」
それから5分ほど雑談した後、ヒンヘン首相は帰っていった。
彼は最近、オーリン統一による様々な業務で忙しいのだという。
『では、これより第1回鉄道将軍会議を始めたいと思う。視界は私、第二将軍こと座間トンコが務めさせていただく』
3月16日午後3時、箱根ダンと彼が選んだ幹部『鉄道将軍』たちを集めた会議がトンコのテレパシーによって始まった。
参加者たちはポッポベースの中にある会議室にて、ゲーミングチェアに座っている。
「結論から言おう。俺はこれから様々な国際問題に介入していこうと思う」
ダンはもったいぶらず、いきなり結論を話す。
「国際問題に介入ってのは……別の国でオーリンみたいなことをするってことであってるかい?」
第一将軍に選ばれたゴウタが、行儀よく座りながらダンの発言の意図を確認する。
なお、各将軍にはダンが気に入っている順に第一、第二……と数字が割り振られている。
「さすがゴウタ。察しが良くて助かるよ。色んな国で起こっている対立問題を力で無理やり解決して、味方となる国を作るんだ」
「なんと暴力的……いいね。僕も賛成」
第三将軍であるテンスケが、ダンの野蛮な意見に強く賛同する。
「んで、首を突っ込む国際問題はもう決めたんスか?」
不完全な眷属で唯一将軍に選ばれた第四将軍のヤクマルが身体を机に乗り出し、ダンに質問を行う。
「ああ、安心してくれ。すでに3件ほど選んでいる」
そう言って、ダンはwikiサイトを印刷した紙を何枚か机の上に置く。
彼が選んだ国際問題は全部で3つ。
1つ目は、モスカー連邦によるオトナリア公国への侵略戦争。
世界最大の領土を持つモスカー連邦が一方的に始めた侵略戦争は、連邦側がニュークリア爆弾を持っていることもあり、国際社会がなかなか介入できてない。
なお、ダンは『自分は弱い者の味方だ』という自己認識があるため、規模的に劣勢なオトナリア公国の味方になるつもりである。
2つ目は、聖地ハザマーダ争奪紛争。
お互いにとっての聖地であるハザマーダという地域をめぐり、アーワン族とイーツー族の間で千年規模で続く終わりなき紛争である。
なお、ダンは『自分は平和主義者だ』という自己認識があるため、聖地を人が二度と住めないレベルにまで木っ端みじんにしてこの問題を解決するつもりである。
3つ目は、
世界有数の経済規模を誇り、オーリン島の北に位置する秦国は、西オーリンほどではないものの独裁的な気質があり、多くの少数民族を迫害している。
なお、ダンは『自分は人権尊重主義者だ』という自己認識があるため、秦国の現体制を崩壊させるつもりである。
いずれも、介入すれば西オーリン侵攻時以上の世界的混乱が予想される国際問題であった。
「3つ目の案は……さすがにムリなんじゃないのかぁ?秦国ってけっこう規模デカいし」
ゴウタが3つ目の案に難色を示す。
『お言葉ですが、2つ目の案に関しても聖地を木端微塵にできる手段が現在の我々にはありませぬ』
トンコも、2つ目の案に対し、実現性の観点から難色を目指す。
「まあ、そうだよな……2や3の案に関しては、今すぐ行う必要性はないか。所詮、これは過程であって手段にすぎないし」
「お、お言葉なんですが、再び国際問題に介入する目的って何なんスか……?」
この中では格段に戦闘力の低いヤクマルが、ビビりながらもダンの真意を探ろうとする。
「……脅迫の根拠、かな。『次はこんなことをするぞ』って言った時にきちんと恐れてくれないと意味ないからね」
「脅迫の材料って……!」
ヤクマルは察した。
箱根ダンという男がこれから行う行為の全貌を。
「相手も同じ力を持っている以上、もはや単純な暴力による脅しは効かない……かくなる上は、人質と脅迫……だ!」
ヤクマルもテンスケから聞いて知っていた。
瑞穂の地で、ダンは想い人に自分と同じ力で打ちのめされたことを。
ヤクマルは気付いた。
ダンは、世界中の罪なき人民を人質にして、想い人と付き合おうとしていることを。
「……!?……!!」
察しが悪く、なんとなくで眷属になっていたヤクマルでも、さすがにここでダンの邪悪極まりない魂胆に気付き、汗が止まらなくなり始める。
逃げ出したい。
これ以上このバケモノとは一緒にいたくない。
しかし、彼の眷属になってしまった以上、彼の命令に逆らうことはできず、身体の自由すら取られる可能性が常に存在する。
「……なんだヤクマル、汗でもかいて体調でも悪いのか?」
「い、いえ……これは武者震いってヤツっス!」
(このバケモノ!!倫理観が底を尽きたドブカスクソガキめ!)
ダンが自分の心までは読めないことをいいことに、心の中で精いっぱい罵倒するヤクマル。
そんな彼の罵倒はよそに、鉄道将軍会議は順調に進んだ。
鉄道将軍4名とポッポマンによる厳正な会議のもと、『オトナリア公国の助太刀と連邦の現体制崩壊』を実行することが決まった。
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