ポガステア・オリジン
ポガステアは、人類たちが住む3次元の世界とは別の場所にある、4次元の世界で知的生命体として生まれた。
同胞も多く、人類のような社会も作っており、人類のように弱い個体を蹴落として殺してもいた。
ポガステアは、同胞に比べて頭が弱かった。
地球人の天才レベルの頭脳でも、ポガステアの同胞にとっては生きる基準点といった感じだったのだ。
地球人の中学生レベルの知能で成長が止まったポガステアは、廃棄すべき弱者として3次元世界へと追放された。
慣れない3次元で身体が弱っていく中、2人の地球人が彼を見つけた。
「……だいじょうぶ?僕の駄菓子、たべる?」
男の子の方の名は箱根ダン。
「なにこれ……もしかしてUMA?」
女の子の方の名は丸山リン。
2人は、ポガステアにとって最初で最後の友人で親友になった。
それからの余生を、ポガステアはリンやダンと共に楽しく過ごしていった。
ランドセルの中に潜むことで2人が大好きな電車に一緒に乗ってみたり、2人の家に行ってみたり、一緒に睡眠をとったり……
しかし、そんな日々も長くは続かなかった。
ポガステアの身体は少しづつ死へと近づいていった。
「話ってなにかな?」「ポガステア……身体……だいじょうぶ?」
身体がひび割れ始めたころ、ポガステアは死期を悟り、2人に贈り物をすることにした。
『僕はもうダメみたいだから……2人に力を、あげるね』
ポガステアには、知能と引き換えに持ち合わせていた特別な『力』があった。
それは、『自分が持つ細胞を他の生命体に授け、強化させる』というポッポマンとシュポガールが持つ『眷属化』に酷似した能力であった。
四次元にいた頃、彼はそれを使って誰かに愛されようとしたこともある。
しかし、細胞と共に力を貰っても『頭が悪いから』と同胞は相手にしなかったのだが。
『僕の力は……9年くらいしたら、キミたちに根付いて役に立つと思うよ』
ポガステアは知っていた。
4次元生命体の持つエネルギーは、3次元の世界においては規格外であることを。
ポガステアは知っていた。
圧倒的な力は、あらゆる問題を簡単に解決できることを。
2人に自分の全細胞を半分ずつ分け与えたことで、ポガステアは消滅した。
それから、ポガステアはダンの中で再び人格を形成していき、ダンの人生を見ることになった。
ダンの人生は、両親の死をきっかけにどんどんと悲惨な方向へ向かっていった。
叔父叔母夫婦から存在を否定され、人々から蔑まれ、最後の希望すら完全に潰え、想い人からも拒絶され……
ダンの心は何度も壊れて砕け散り、その度に歪んだ形で無理やり治っていった。
ダンは、その魅力のなさゆえに社会から虐げられていた。
そう、母星にいた頃のポガステアと同様に。
■□■□■□■
『そうだった……僕たちは、虐げられたんだ。僕は、キミを助けるよ。そして……キミの暴力を肯定しよう』
過去を思い出したポガステアはダンを助ける決意を固め、彼が人々に振るってきた暴力を肯定した。
『知的生命体は愚かだから、自分よりも弱い存在を蔑み、殺そうとしてくる。僕たち弱者が生き残るには……やっぱり暴力以外の手段はないんだね』
「わかって、くれたんだね……」
『さあ、始めよう。今まで僕たちのすべてを奪って搾取したきた卑劣な強者への……復讐を!』
ポガステアが、ダンの手を握る。
「キミと僕は……一緒だ。ポッポマンと……一緒だ」
力がダンの理念を拒まなくなった今、ポッポマンは万全かつ完全な状態へと至った。
■□■□■□■
カラカラカラ……バリッ!
凍り付こうとしている都市建設予定地にて、ポッポマンの身体が頭の口だけ露出した形のサナギで覆われる。
[……ふたたびの変身か。拙者は人間みたいには待たぬぞ]
しかし、ダコンはそれを防ごうと再び身体の一部を虫にして飛ばす。
その時であった。
ドガアアアアアアアアアン!
ダコンの近くで、高熱を伴う爆発が起きる。
[こんなバケモノどもに……味方する人間もいるのだな……]
ダコンが上を見上げると、そこにはオーリン軍の耐寒機能付き戦闘機が何機も空を飛びまわっていた。
ダコンの言う通り、彼らはポッポマンの眷属ではない普通の人間である。
しかし、ポッポマンのおかげで自分たちの悲願であった西オーリン併合を果たせたことから、恩返しとして助けに来たのだ。
[厄介なことに……なってきたな]
そうつぶやくダコンの視界の先では、サナギ状態のポッポマンが寒さで息絶えたばかりのディスコを口に入れようとしていた。
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