幼馴染VS幼馴染

『私の能力は、触れたものを消し去る【消しハンド】だ!消えたくなければ、これ以上の悪行はやめろ!』


 開口一番、シュポガールが近くのレンガ片を裏世界に送りながら、堂々とウソを付く。


『厄介な能力に目覚めやがって……!』


 しかし、リンが目覚めた能力の詳細を知らなかったポッポマンの拳を遠ざけるには、それだけで十分だった。


 ブチッ!


『……ンギイイイイイイイ!大人しく俺の恋人になれええええええ!!』


 電柱を引きちぎり、シュポガールへと投げつけるポッポマン。


 しかし、直後にシュポガールの姿が消え、電柱は地面と大激突する。


 ドゴッ!


 ヴァンッ!

『おりゃあ!』


 直後、ポッポマンの背後にシュポガールが現れ、ポッポマンの背中が思いっきり叩かれようとした。


 しかし、叩かれようとした瞬間だけ、ポッポマンはその場から消えた。


『な、消えただと』


『俺は、ここにいるっ!』

 次の瞬間、ポッポマンは元居た位置に再び現れ、攻撃体勢に入った。


 ドスッ!

 ヴァン!


 ポッポマンの反撃を裏世界への移動で回避しながら、シュポガールはポッポマンが持つ無敵の力を考察し始めた。


(無敵の力って、身体が透明になるとかそういう系ではなさそうだな。じゃあ、ちょっとこれ、使わせてもらうよ)


 シュポガールはX界に隠していた新兵器『BBBガトリング付きドローン』を持ち、現世へと戻った。


『それは、さっきのボーンロイド共も使っていた新兵器……がついたドローン!』


『私は、あらゆる物を作り出す能力【組みハンド】も持っている!』


 自信満々にウソを付きつつ、ガトリングの電源を起動させるシュポガール。


 ドドドドドドドッドドドドッド……!


 ポッポマンめがけ、無数のビービービー玉が発射されていく。


 その隙にシュポガールはとある仮説を確かめるべく、3つある裏世界を短いスパンで何回も往復する。


(……やっぱりそうだったか!)


 裏世界で彼女が見たのは、一瞬だけ何度も裏世界に来ては立ち去るポッポマンであった。


 


 ポッポマンの無敵の力とは、自分が持つ裏世界に行く能力のオート版なのではないか。


 シュポガールが立てた仮説は、真実であった。


 攻撃が直撃する寸前に自動的に身体を裏世界に転移させ、攻撃を回避した後にもとの世界に自動で戻す能力。


 それこそが、無敵の力の真相であった。


 今までは、ボーンロイドやドローンのカメラでは追い付けられないほどに素早く移動していたため、それが判明することはなかった。


 しかし、ポッポマンと同等のスペックを持つシュポガールの目によって、はじめて転移している瞬間を見られることになったのだ。


『邪魔だっ!』


 ゴッドン!


 元の世界にて、ドローンがポッポマンの手で破壊される。

 

 しかし、シュポガールも裏世界からあらかじめ置いておいた強化量産型ボーンロイド2体を連れてくる。


『『当機は、ヘイアンに接続されました』』


 電波が届くようになったことで、ボーンロイドたちがヘイアンに接続される。


『ぐわああああああああ!!もうヘイアンとは戦いたくないっ!アイツウザーーい!ヤダ!ヤダ!』


 ヘイアンの名を聞き、ポッポマンが不快感をあらわにする。


『銃撃を開始いたします。おかわりの拒否権はありませんよ』


 ドドドドドドドッドドドドッド……!


 ボーンロイドもBBBガトリングを使い、ポッポマンの体力を消耗しにかかる。


 グアッ!ブアンッ!ドンッ!


『うがぁ!壊れろ!壊れろぉ!』


 ボーンロイドを壊すべく、何度も何度も腕を振りかざすポッポマン。


 しかし、その動きはすべて見切られ、無駄になっていく。


 そうこうしているうちにも、ポッポマンの体力は無敵の力という名のオート転移でどんどんと削られていく。


 無敵の力がなければ、リンの能力によって消されるかもしれない。


 ポッポマンの心に、焦りが満ち溢れる。


『どうしよう……どうしよう……!どうしよおおおおおおお!もうどうすればいいかわかんないよ!誰か助けてーーーーっ!』


 焦燥感のあまり、ポッポマンはパニックを起こしてしまう。


 その時であった。




『……今度は僕が、助ける番だ!』


 リキッドが幼馴染同士の戦いに乱入する。


『助かったぞリキッド!ポッポ・コネクションッ!』


 ポッポマンが胸の口の中に、リキッドを入れ込む。

 

 リキッポが、シュポガールの前に立ちはだかる。


『ありがとおおお!リキッドおおおおお!』


 ジョバジョバジョバジョバ……!


 リキッポが感動の意を表すと同時に戦闘のために大量の涙を流す。

 

『鍾乳洞大生成!』


 そして、技名を叫びながらそれらを鋭いハリのような固形へとかため、辺り一面を鋭いハリの山にした。


『これで……むやみに移動はできないね……俺に抗うの、やめてくれるかな?』


 ポッポマンの言う通り、今ここで転移を利用して移動したなら、位置を上手く調整して戻らないと針に刺さってしまう。


『……抗ってやる!』


 それでも、シュポガールは諦めない。


『キミの目的が何であれ、破壊と殺人を手段に選ぶなんて、絶対に許さない!』


『しょうがないじゃんっ!』

 バシャバシャバシャバシャ……!


 リキッポが素で泣き始め、大量の涙を流し始める。


『何も持っていない弱者が願いを叶える手段は、暴力しかないんだよぉ!ウッワアアアアアア!グアアアアアアアアアア!』

 ジョバババババババッ!


 彼の嗚咽と共に、涙がリキッポを中心にどんどんと大きな恐竜を模した形へと変化していく。


恐竜王大きょうりゅうおうだい建立こんりゅう!』


 結果、涙で形作られ全長7メートルの恐竜が出来上がる。


 もちろん、中にはリキッポの姿も確認できる。


『グアアアアアアアア!!』


 恐竜は泣き叫ぶ声を上げ、国立研究所の建物群へと迫ろうとする。


『これ以上壊されて……たまるか!』


 負けじとシュポガールが恐竜を押しとめようとする。


『グッ、恐竜部分もポッポマンの身体扱いされているせいか、裏世界に転送できない……!パワー負けしている』


 どんどんとシュポガールの身体が建物群へと近づいていく。


(もう……限界……ムリ、ムリ!)


 心の中で弱音を吐いたその刹那。


バリバリバリバッシャアアアアアアアアアアアン!


 恐竜めがけ、巨大な稲妻が落ちた。


 バリバリッ…… 


 恐竜を模した涙の塊は砕け散り、中のリキッポが露出する。


『……ネリちゃん!』


 シュポガールが近くを見ると、スラッシュに似た姿のバケモノがいた。


『いや……今はエレキって呼んで欲しいかなぁ。私も変身できるようになったから、手伝いに来たよ」


『ありがとう……!』

 

 戦いは、佳境を迎えようとしていた。

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