初見殺し
「ところでなんだけど、どうして綾瀬さんは今回の襲撃に参加しなかったんだ?」
オーリンにある都市建造予定地にて、ポッポマン大好き倶楽部の代表である綾瀬ノリオが、共に紅茶を飲んでいたディスコこと湯本ゼントに問いかけられる。
「……今回の襲撃内で使う、とある作戦をAIどもに察知されないためですかね」
「ふーん。武力行使って字面に反して頭、使うんだな……ヘックシュン!」
「おいおい、風邪ですか?……私もなんだか寒くなってきましたね」
ノリオもゼントも、まだ知らなかった。
都市建設予定地付近の気温が、尋常じゃない勢いで下がっていることに
■□■□■□■
『初見殺しの合体パターンで意表を突こうとするは、貴方は私の知性を舐めているのですか』
ヤエザクラの目の前に、リキッポが立ちはだかる、
ヘイアンの言う通り、この合体はまだ瑞穂のAIに見せたことはない。
ジョバジョバジョバジョバ!!
前動作なく、リキッポがおびただしい量の涙を出す。
ヤエザクラも強化量産型ボーンロイドも耐水性はすさまじい。
しかし、水流に抗うのは難しく、戦っていた場所が住宅の路地であったことも相まって彼らを囲んでいた半数のボーンロイドが、なすすべなく遠くへ流されていく。
しかし、ヤエザクラは4本脚がクモのような長い構造になっていたことから、踏ん張って耐えきった。
カラカラカラッ……!
『高層建築物の新規製造を把握……未知の予備動作です』
続いて、リキッポは大量の涙を自らの頭上に集めて固形化することで、高層建築のような塊を作り出していく。
『……摩天楼大圧殺!!』
リキッポの技名叫びと共に、高層建築のような塊がヤエザクラに向けて落とされる。
『また質量でのゴリ押しですか……あなたは単調ですね』
すばしっこく攻撃をよける相手に対し、体積と質量が大きいもので押しつぶす。
それは、厚山市でオサム操るハイビスカス相手に行った戦法と全く同じであった。
『エンジン、全開です』
ヤエザクラは全力で後ろに向かい、塊の直撃を避ける。
『固形化解除!』
続いて、塊が元の液体へと戻り、すさまじい水しぶきがヤエザクラへと向かう。
ヤエザクラには飛行機能がなかったため、機体はあっという間に水しぶきに飲まれていく。
『固形化!』
そのタイミングで、再び涙は固形化した
ヤエザクラは、硬い涙の中に閉じ込められた。
『ンギイイイイイイイイ!!勝った!勝った!最高!』
リキッポは大量にケムリを吐きつつ、勝利に酔いしれ始める。
ケムリはリキッポになっていつもよりも勢いがいいことも相まって、一気に周囲10キロに渡って広がっていく
ズドドドドドドッドドッドドドッドドッド!
『私の身体は、ヤエザクラだけではありませんよ』
涙に閉じ込められなかった強化量産型ボーンロイド5体が、ビービービー弾をリキッポに浴びせてくる。
しかし、リキッポはそれを意に介することなく、いつもより早くなった脚でボーンロイドを置いていき、再び国立研究所を目指す。
『ポッポマン、リキッド、無事であったか。私も糸で編んだ鎧のおかげで無事である』
国立研究所まで残り500メートルの地点にて、ポッポマンたち3体は合流することになった。
『僕はちょっとヤバかったけどね……というか、この辺ボーンロイドいないね。どこいったんだろ』
『無駄な抵抗をやめてくれたのか、それとも涙の中に閉じ込められたヤエザクラを救出するのにリソースを裂いているのか……どっちだ?』
『まあ、いいではないか。ここまでくれば、我が主の本懐はすぐそこだ。いなければ、人質でもとってムリヤリ表に出せばよい』
『……そうだな。覚悟、決めるか』
ポッポマンはサナギになり、人としての姿に戻る。
『頑張ってくれ我が主。我々はあなたの告白を妨害する奴らを威圧し、警戒する任につく』
『まあ、頑張ってね。最悪、暴力出しとけばいけるよ』
眷属2人に見送られながら、箱根ダンは黒い霞のような煙を放出しつつ、研究所の正門へと歩いていった。
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