襲来編

手に入れろ想い人

「さてと……メンバー選出はこんな感じでいいかな」


 3月14日の夜、箱根ダンは街の建設予定地に近い高級ホテル内で国立研究所襲撃計画を練り上げた。


「とりあえず、今のうちに首相操って戦闘機2機の予約でもしとこうかな」


 ポッポマンの眷属の身体は、彼の意思でいつでも自由に動かすことができる。


 もちろん、本人が言おうとしてない言葉を言わせることも可能である。


 戦闘機の予約は、速やかに終わった。


「んじゃ、次はトンコの能力で参加メンバーに事前通達でもするか」


 ダンはオーリンで新しく買った携帯を使ってトンコに作戦に関する連絡を行った。


 眷属の身体を自由に操れるとはいえ、さすがに能力の強制行使はできないためである。


 なお、トンコは喋るのが極めて不得意なため、電話の返信はテレパシーで行っている。


「……さてと、明日が楽しみだ。今の僕なら、キミに届くかな」


 深夜1時、ダンはフカフカのベッドで眠りについた。


 


 翌日、すでに3割ほどが完成している都市建設予定地に2機の戦闘機が着陸した。


 今回の作戦に参加しない眷属たちも『見送ってほしい』というダンの指示のもと半数が集結した。


「留守番は俺たちでがんばるから、オマエたちは存分に楽しんでこいよ」


 ダンディな雰囲気の青年が襲撃に参加する6人にねぎらいの言葉をかける。


 彼の名は湯本ゼント。


 完全体の眷属でディスコに変身する。 


「ああ、今回の襲撃で、絶対にキメてやる」


 殺意に満ち溢れた顔で決意を表明するのはスラッシュこと鎌倉ゴウタ。


『国立研究所には鎌倉ネリもいる』という情報を聞いたことで、自ら襲撃作戦の人員に名乗りを上げた。


「さてと、そろそろ乗るか!」


 午前9時30分過ぎ、ダンたち6人は事前に決めた2グループにわかれ、戦闘機に乗ったのち、離陸した。




 今回の作戦では、ポッポマン陣営はAグループとBグループにわかれて襲撃を実行する。


 Aグループは丸山リンの生け捕りを目的にしており、ダンとワイヤーに変身するトンコ、リキッドに変身するテンスケの3人で構成されている。


 トンコは能力が生け捕りに適していることから、テンスケは能力が撤退手段として使えることから選ばれた。


 Bグループは鎌倉ネリの殺害を目的としており、ゴウタとにサイコに変身するセイサク、不完全な眷属でなおかつオーリン人のボン・ジンドーで構成されている。


 セイサクはゴウタが推薦したことで、ジンドーは偏見から来る瑞穂人への殺意をダンが見込んだことで選ばれた。


 なお、ジンドーは『敵を倒すにはまず知ることから』という信念のもと、瑞穂語を習得してある程度なら話せるので、コミュニケーションに問題はない。


 なお、ジンドーにはパイロットしての技量もあるので、Bグループの戦闘機は人機ではなく彼が運転している。


 戦闘機はオーリン領空を出ていき、瑞穂の領空へと向かおうとしていた。

 



■□■□■□■




 一方、オーリンの領空を目指して空を飛ぶ者たちもいた。


 彼らはハエの群れのようにも見えた。


 しかし、異様に下がっていく周囲の気温が、彼らがハエではないことを証明していく。


 途中、彼らは瑞穂の上空1万メートル上を飛ぶ。


 ただでさえ寒い空の気温が、さらに下がっていく。


 異様な気温低下に、瑞穂の人工衛星は本土にむけて警告を伝える。


 しかし、瑞穂の気象予報士や軍人はそれを無視し、一般人に隠した。


 すでにその正体を知っていた上に、空を飛ぶことも許可していたからだ。


 


 彼らの名はダコン。


 アレスカ国が5年前に入手した、火星で作られた生物兵器である。 

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