僕だけの街、造営開始
ポッポマンの東オーリン帰還後、西オーリンは東オーリンに併合され、約半世紀ぶりにオーリンは1つになった。
あまりにも強引かつゴリ押し極まりない併合に、国際社会は反発の意を示したが、ヒンヘン首相は意に介さなかった。
「作戦への協力、感謝しマス。お礼に、あなたの欲しいものを報酬として与えまショウ」
3月9日午前10時、検査が一通り終わって一晩眠ったダンに対し、首相は彼を官邸に呼び出し報酬の話をする。
「俺が自由に使える直径10キロの空き地と、俺と眷属がタダで東オーリン中の店を使用できる権利それで充分かな」
「わかりまシタ。今すぐ用意いたしマス」
3月12日、箱根ダンとリキッドの中の人である海老名テンスケは元西オーリンだった平地へと来ていた。
あれから、オーリン政府は念入りに会議を重ね『既存の都市機能に影響がない上にある程度交通の便が良い場所』を見つけ、ダンに献上した。
そこはかつて、西オーリン政府が都市の造営計画を立てて整地した後、計画がボツになって放置された地域であった。
ボツになった原因でもある東オーリン都市部への近さと海沿いであることは、今では交通の便の良さにもつながっている。
もともと他国の土地だったこともあり、仮にここが通り抜け不可の場所になっても既存の都市機能に問題は発生しない。
結果、名前すらついていないその平野が、ポッポマンに献上する土地として選ばれ、今に至るのであった。
「さてと、まずは中心となる建物でも作ろうかな。テンスケ、俺と共に変身しようか」
ダンとテンスケはサナギへと変わり、共に異形の化物へと変貌する。
『ちょっと失礼。あとで吐きだす!』
続いて、ポッポマンがリキッドを飲み込む。
『
ポッポマンにリキッドの力が流れ込み、彼はリキッポとなった。
『うっ……うっ……ウワアアアアアアアアアアアアアン!』
ジョバジョバジョバジョバジョバッ!
リキッポも、リキッドと同様に任意で大量の涙を出す体質を持っていた。
カラカラカラカラッ……
そして、体液を自由に操作して固形物にする能力も引き続き持っており、それを利用して巨大な宮殿を土地の中心にて一気に作り上げていく。
リキッド単体では、体液でつくった生成物はリキッドから距離が離れたり一定時間経つと崩れるのだが、リキッポの生成物はそのデメリットを克服している。
彼の宮殿は、彼の変身が解かれた後でも、半永久的に残るのだ。
約10分後、時間切れで胸の口がリキッドを吐き出し、彼の増結合が解除される。
その時点ですでに、土台の石垣部分がキッチリと完成していた。
『リキッド……休憩にしよう。何がいい?』
『うーん。僕はヒザでいいかな』
『よし、早速変身解除してピザを頼もう』
虐殺者とは思えないような穏やかな会話を交わしながら、2人による街の造営作業は着々と進んでいくのであった。
■□■□■□■
『ついに……アレを使うのですか。くれぐれも、ポッポマンにあなたの国のものだとバレないようにしてくださいよ』
アレスカ国の大統領執務室にて、パソコンの画面に映る瑞穂国総理が通話相手に忠告を行う。
「安心しろミスター風見。仮にパワーソースが宇宙人だとしても、ヤツの本質は人間だ。ナチュラルなエイリアンの敵じゃないさ」
そう言いつつ、アレスカ大統領は自身の腕の中に納まる卵を優しくなでる。
「頼んだよ……ダコン」
ポッポマン最大の脅威が、近づこうとしていた。
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