無敵のバケモノは、無敵であった

 今から1世紀ほど前、世界規模の戦争が起こった。


 その終盤、人類は今までの醜態の集大成のような極悪な兵器を作り上げた。


 その兵器はミサイルのような形をしており、打ち込まれた地点は地獄のような熱に覆われた後、そこにいたあらゆるものを汚染していった。


 終戦後、人類は醜悪でクソ外道な精神性をしていたので、いつ使うかもわからないその兵器をどんどんと量産していった。


 現在、この世界にはこの星を3度滅ぼせるほどのソレがある。


 兵器の名は、『ニュークリア爆弾』であった。


 人類は、滅びるべきクソ外道生命体であった。


 


 東オーリン首相であるオウ・ヒンヘンは、心のどこかで少しだけ期待していた。


 いくら無敵のバケモノでも、さすがに西オーリンからニュークリア爆弾を打ち込まれたら死ぬのではないかと。


 西オーリンは、ニュークリア爆弾を3つほど所持していた。


 そして、ニュークリア爆弾は人類最強の兵器でった。


 だからこそ、この戦いでポッポマンがニュークリア爆弾に当たって殉職することを、少しだけ期待していたのだ。


 ポッポマンがキャクサでニュークリア爆弾に被弾したという知らせを聞いたとき、ヒンヘンの心は騒ぎ出した。


 国境線の西オーリン軍は数分前に完全に排除した。


 西オーリン内の軍事施設も、自国出身のバケモノで制圧しつつある。


 今、ポッポマンが殉職しても、もう自国軍でどうにでもなるところまで作戦は進んでいる。


「さて、彼はいったいどうなったのかな?」


 ポッポマンと同じく首都にいた眷属たちは、どうなったのだろうか?




『うわっ……周囲の建物が全部倒壊している……』


 轟音を聞き、地上に戻ったポッポマンが見たのは、ニュークリア爆弾によって焦土と化した西オーリンの首都であった。


『にしても、この爆弾はどっちが放ったんだろうね』


 瓦礫の中から、彼に遅れてキャクサに来ていたリキッドが姿をあらわす。


 身体には変わった様子はなかった。


『東オーリン……ではないと思うなぁ。公式声明では持ってないっぽいし』


 続いて、スラッシュも瓦礫の中から顔を出す。


 それに伴い、首都に来ていた他の眷属たちも瓦礫を押しのけ続々とポッポマンのもとに集まって来る。


『西オーリンが我々を道連れにしようと放った……という線が有力かもしれませんね』


 サイコの推測は正しかった。


 このミサイルは、国の終焉を悟ったカコンがポッポマンが到着する直前の地下3階で周辺の基地に命令して発射させたものであった。


 


 それから数十分後、ポッポマンたちは迎えのヘリに乗せられて焦土とかしたキャクサを後にした。


 そして、ニュークリア爆弾によって身体が汚染されてないかどうか調べられた。


 結果、ポッポマンと眷属たちの中で汚染されている人は、誰一人いなかった。


 ポッポマンはニュークリア爆弾に絶対的な耐性を持っていたのだ。




 無敵のバケモノは、無敵であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る