ポッポマン軍団VS独裁国家西オーリン
『移動中ですが、作戦の説明を行います』
3月7日午後8時、ダンたちはポッポマン一味はオーリン島の上空を飛ぶ大型ステルス戦闘機の中にいた。
その中で、骨格人機を通じて初めて作戦に関する説明が行われようとしていた。
『まず、東西オーリンの境界線にいる西オーリンの部隊及び彼らの基地を完膚なきまでに破壊します。これは、我が国出身の方々で行います』
東西オーリンの境界線付近には、大量の西オーリン軍が滞在している。
これは、万が一戦争が起きたとき、真っ先に相手の市街地を壊すためである。
東オーリンの首都は西オーリンにきわめて近いため、これのせいで東オーリンは今までずっと西オーリンに怯えることとなっていた。
しかし、それも今日までである。
ポッポマンの眷属の力を使えば、彼ら市街地に赴く前に蹂躙することができるからである。
なお、ポッポマンと瑞穂人の眷属はその辺の地理に詳しくないため、この作戦にはまったく参加しない。
代わりに、東オーリン出身の眷属50名を中心に構成された部隊が各地で蹂躙することになっている。
『次に、西オーリンの首都にあなたを含めた十数人のバケモノを送り込みます。できれば、王族を優先して殺してください。彼らが独裁の元凶なので』
「豪華そうな服装のヤツとかふくよかそうなヤツを優先すればいいんだよね?」
『まあ、極論そうですね。あの国の一般市民は基本的に飢えてやつれていますので。ただ、影武者とかもいると思うので気を付けてください』
西オーリンの首都であるキャクサには、ポッポマン含めた瑞穂の眷属たちが蹂躙することになった。
特定の地域で蹂躙すればいいだけなことや、強い破壊力を求めてのことだろう
なお、キャクサは人口や外面の発展具合だけ見れば福奥市並みかそれ以上である。
実体は瑞穂国のド田舎以上に過ごしにくい地獄だが。
『ただ今、国境にて眷属たちの奇襲が始まりました!我々もそろそろ奇襲をしかけましょう!』
それから数分後、人機のスピーカーを通じて攻撃開始の指令が出る。
「よしっ!必ず西オーリンを滅ぼして、東オーリンに平和と安心をもたらしてみせる!」
ダンが今までの挙動に反した正義の味方じみたセリフを吐き、戦闘機から地上へとダイブする。
彼の真下には西オーリンの首都であるキャクサがあった。
国の威厳を守るためだけに電灯が付いている虚構の都市へと、ダンは吸い込まれていく。
「変・身!」
落下中、ダンの身体はサナギへと変わっていく。
ドズン!
キャクサの薄っぺらいアスファルトにヒビを入れつつ、サナギは地面へと着地する。
「ゼンデアダグ!ゼンデ!アダグ!」
西オーリン軍の兵士たちがサナギ周辺に集まり、隊長が一斉攻撃を命じる。
しかし、そんなことはおかまいなしにサナギは破れ、中からポッポマンが現れる。
『ンギイイイイイイイイ!ウェイグ、アブ、フリダムン!』
ポッポマンが絶叫と共に覚えたてのオーリン語で「自由に目覚めよ!」と西オーリンの兵士たちに呼びかける。
幼少期から、ダンは今は亡き父によって西オーリンの地獄っぷりを知っていた。
ダンは理不尽なことや不自由なことが大嫌いであったため、西オーリンの人々をかわいそうだと思い、そう呼びかけたのだ。
「「「ワガメイ、ザイ、サイカコン!(我らの命はサイ・カコン様のためにある!)」」」
しかし、兵士たちは幼少期の教育のせいで自由を求める心を失っていた。
彼らは、自分たちの命は王族とその頂点であるサイ・カコンのためにあると信じ込んでしまっていたのだ。
ポッポマンは彼らの言っていることは分からなかったが、自分の言葉が届かなかったことは理解した。
『ンギイイイイイイイイイ!殺す!サイ王族殺す!アイツら気に入らない!殺す!殺す!』
ポッポマンはいつもより優しく兵士たちを壁に突き飛ばした後、いきおいよく王族が住む宮殿へと向かっていった。
サイ王族の避難は、まだ始まってすらいなかった。
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