もうひとつの力の真相と避難成功
「丸山さん、避難活動へのご協力ありがとうございました。その……色々と聞きたいことがありますので、この後はちょっと署まで来て下さい」
3月4日午後11時、すでにポッポマン達が立ち去った病院には、彼らがいくら探しても見つけられなかった患者たちや警官、そして丸山リンがいた。
そして、丸山リンは警官によって署に連行されようとしていた。
「分かりました。こちらこそ、私を信じてくれてありがとうございます!」
笑顔で連行に応じるリン。
いったい彼女たちに、何があったのだろうか。
■□■□■□■
「私、実は触った人間を任意で異空間に送ることができるんです!普通の避難では一部の患者が間に合いません!私の能力で避難しましょう!」
数時間前の県病院、自らの能力を使って病院の敷地内に侵入できたリンが非現実的な主張と提案を行う。
「そんな話、信じられるか!できるんなら、今すぐ俺にやってみろ!」
もちろん、避難誘導のために来ていた警官は取り合ってくれない。
「わかりました!」
ヴォン!
リンが警官に手で触れた瞬間、警官がその場から姿を消した。
「おい!お巡りさんが消えたぞ!」
その光景は、病院の待合室に集まっていた入院患者たちの目にしっかりと映っていた。
パン!ヴァン!
直後、リンも両手を合わせることで警官を送ったこの世界とは別の場所へと向かった。
警官とリンは、先ほどまでいた病院の待合室が青白くなったような空間で再び対峙した。
「こんな感じで、私は『裏世界』という異空間に自他を送ることができます。ここの地形や物は現実のものが反映されているので、医療機器もきちんとあります!」
リンはダンが持つ『無敵の力』は持っていない。
しかし、その代わりとして全部で3種類ある異空間『裏世界』に自他を出入りさせる能力に目覚めていたのだ。
裏世界は現実世界と同じ大きさと形状をしており、色合いと生物がいないこと以外はほぼ現実世界のようなものである。
もちろん、現実世界での電力源が動いてさえいればこっちでも電気を使える。
「では、帰りましょう!」
パン!パン!
ヴァヴァン!
リンは警官と自分を叩き、もとの世界に帰る。
「あっ、帰ってきたぞ!」
「みなさん!この人に向かって一列に並んでください!いまからこの人の能力で避難を行います!」
従来の避難方法では、避難が終わる前にポッポマンかその仲間が来てしまう可能性が高すぎるし、避難中に襲われる可能性もある。
警官はそう判断し、ぽっと出の少女の謎の能力に最後の望みをかけることにした。
10分後、自力移動が可能で待合室に集まっていた患者たちとほとんどの医療関係者の避難が完了した。
「これから、病室から出れない状態の患者さんたちをご案内します!」
院内で一番記憶力の良い看護師が、リンの案内を買って出る。
「あ、もしよければ憧憬高校襲撃事件で生き残った人からの案内をお願いいたします!おそらく、彼らがポッポマンたちのメインターゲットなので!」
リンが看護師に助言を行う。
なお、警官は外の状況を把握するために待合室にて避難中に到着した護衛用のボーンロイドと共に待機している。
「了解しました!一緒に頑張りましょう!」
それからは看護師の的確なルート構築によって、どんどんスムーズに患者を裏世界の病室へと避難させることができた。
そして、ポッポマンが萬葉高校を破壊し始めた頃、ついに全員の避難が終わった。
「さあ、このまま裏世界に」
「待って、まだ警官さんがいる!」
看護師の提案を、リンは断る。
「いや、しかし彼には病院の護衛という責務が」
「守る対象である院内のみんなが避難してしまった以上、もう護衛はいりません!そして、ポッポマンは人を容赦なく殺します!私は警官さんを見殺しにできない!」
リンは知っていた。
ポッポマンは自分に敵意を表した人間は容赦なく殺すことを。
だからこそ、彼を救いたかったのだ。
「で、でもその間にポッポマンが来たら」
「私の能力、使って逃げましょう!」
そう言ってリンはどんどん階段を下りて待合室へと向かう。
「警官さん、あなたも逃げましょう!全員避難し終わったので、もうここにいる必要性はありません!」
「あっ、ありがとうございます!ボーンロイドさんたち、外に出て守っておいてください!」
『『かしこまりました』』
ヴァン!
警官は再び、裏世界へと送られていった。
「よし、これで全員避難完了!看護師さんもありがとうございます!」
最後に看護師とリンが裏世界へと転送されていくことで、県病院の避難活動は終了した。
数分後、リキッドが到着した時には、すでに誰もいなかったのであった。
そして数時間後、リンがおそるおそる現実世界に顔を出して時に得た情報から、ポッポマンの出国を知り、避難を終えることになったのであった。
暴力と理不尽の権化たるポッポマンと対になる力は、人助けのために使われたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます