バケモノの弔い合戦

『我が主、悪い知らせです!モブ3がフードを被ったボーンロイドによって逝ってしまいました!』


 果物を頬張っているポッポマンに、ワイヤーからテレパシーで悪い知らせが入る。


『……そうかワイヤー。わかった。俺、ソイツぶっ壊す!』


 ドンッ!

 グシャアアン!バギャアッ!


 ポッポマンはさっきまでバナナが置いてあった机を壊し、さっきまで朗らかに話し合っていた一般ボーンロイドを壊し、その場を去っていった。




『フードのボーンロイドは現在、モブ2を追って7階建ての校舎がある高校に侵入しました!』


 引き続き、ワイヤーがテレパシーを用いてダンに情報を提供する。


『なるほど……私立萬葉高校の校舎に逃げるとか、モブ2はいいセンスしているな』


 萬葉高校は、憧憬高校に落ちたダンが入学した高校であった。


 ダンはそこでのギッチギチのカリキュラムに耐え切れず、心身を壊し始めたのであった。


 なお、3年生になった時点で単位が足りずダンは高校を退学している。

 

『もう二度とあそこで授業ができないくらいメチャクチャにしてやる……!』


 シュポポオオオオオ!


 ダンは萬葉高校に対する怒りのあまり、頭部からすさまじい量の煙を出しながら萬葉高校へと向かっていった。




『ああああああああああ!うぁあああああああああああ!』


 モブ2は増築を繰り返して複雑怪奇になっている萬葉高校の校舎を縦横無尽に駆け回っていった。

 

 そして今は、例の7階建ての校舎でボーンロイドたちから逃げ回っていた。


 ドガアアアアアアアアンン!!


『ンギイイイイイイイイ!!』


 そんな中、ポッポマンが壁をブチ破り、彼を助けにきた。


『ンギィ!ンギィ!』


 バリィ!ガリィ!


 ポッポマンが有り余る剛腕でモブ2を追いかけてきたボーンロイド数体を壊していく。


『来たかバケモノの親分……!』


 そして、ハイビスカスとポッポマンはお互いを視界に入れることになった。


『ンギイイイイイ!!この人殺しがあああああああああ!!ぶっ壊してやるっ!』

 

 ポッポマンが己の所業を棚上げにした発言で怒りを表明する。


 ドドドドドドドッドッドド……!!


 ハイビスカスが、ポッポマンの攻撃でスクラップになってしまったボーンロイドが持っていた銃を使い、ポッポマンに集中砲火を浴びせる。


『ンギィ!ンギイイイイイイ!』


ゴン!ドスッ!バン!ドン!


 ポッポマンもハイビスカスを殴るべく拳を振るうも、機体に備わっている自動回避機能のせいでなかなか当たらない。


『ンガアアアアアアア!!なんで!なんで当たらないんだよっ!イライラする!どうすればいいんだっ!』


 バギッ!ドギッ!グシャ!グシャ!


 八つ当たりで校舎の壁や床をどんどん壊していくポッポマン。


『イライラするっ!イライラするっ!イライラするっ!』


『……まるで小さいガキみたいだな!』


『ンギャアアアアアア死ねッ!死ねぇ!』


 バゴォン!ドゴゴォン!


 オサムの挑発に乗り、ポッポマンはますます建物を壊していく。

 

 これは、県病院の患者をはじめとした一般市民の避難時間を稼ぐためのオサムの策略であった。


 少しの間だけでも、彼の殺意を自分に向けることで、他の人々への殺意を抑え込もうとしているのだ。


 ズドドド……バリッ! ドキッ!


 ポッポマンの度重なる破壊によって、ついに7階建ての校舎は崩壊しようとしていた。


『ぐっ……この校舎はもうダメか』


 3階にいたハイビスカスは校舎の崩壊を察し、ポッポマンが開けた穴から急いで脱出した。


『ン?!ンギィ!!』


 バキィン!


 ポッポマンもさすがに異変に気付き、壁を突き破って逃げた。


 バゴオオオン!

 

 次の瞬間、校舎は1階から4階を潰すようにして壊れていった。


『ぐっ……守り切れなかったか』


『ンギィ……』


 多種多様な校舎で囲まれた中庭にて、ハイビスカスとポッポマンは再び向かい合った。

 

 


『我が主!助太刀に来ました!あと、モブ2は校舎の崩壊に巻き込まれそうだったのですでに別の場所に逃がしました!』

 

 そんな中、糸をフックショットのように使ってワイヤーが加勢しにやってきた。


『助かったぞワイヤー!!これで勝てる!!』


 そう言いながら、ポッポマンは許可を取ることなくワイヤーを掴み、自分の胸の口の中に入れた。


増結合ポッポ・コネクション!』


 そして、あからさまな決め台詞を決めてからサナギになった。


ドドドドドドドドドドドドド……!


『オマエはヒーローじゃないから、変身中に攻撃してもいいよな!』


 お約束を全力で無視して、サナギにマシンガンを放つハイビスカス。


 しかし、サナギ形態でも無敵の力が維持されているため、弾は1つとして当たることがなかった。


『ンギイイイイイイイイイ!ンガアアアアアアアアアアアアア!』


 バシュシュシュシュシュシュッ!!


 サナギは無数の硬い糸によって叫び声と共に一気につきやぶられていった。


 ドドドドドン!ドドドン!

 

 糸は勢いがやむことなく、中庭を囲う校舎たちに穴を開けていった。


『ンギイイイイイイイイイイイイイ潰してやるううううううう!!』


 バシュシュシュシュシュシュッシュシュン!!


 硬い糸がハイビスカスに向かって一斉に襲い掛かる。

 

 バシッ!バシッ!ガスッ!


 糸はハイビスカスの身体を何回かかすり、そのたびにわずかに抉っていった。


『んぐっ……マテリウムがえぐられるだと……?』


 オサムが専用機の損傷に驚いた次の瞬間、更に驚くべき光景がハイビスカスのカメラに映った。


『ンンンンンンンンンンンッ!ンギイイイイイイイイイイ!!』


 なんと、ワイッポは3階建ての校舎の二階から上部分を硬い糸で引きちぎり、それをそのままハイビスカスにぶつけてきたのだ。


『潰れろおおおおおおおおおおおお!!』


 ドッシャアアアアアアアアアン!


 いくら最強のボーンロイドといえど、ここまでの物理的攻撃を喰らってしまえばひとたまりもなく、瓦礫の下で操作続行が不可能な状態になった。


『勝ったああああ!俺こそが圧倒的強者だああああああああ!うおおおおおおお!』


 他人に勝つという人間時代には経験できなかった喜びを感じてしまったことにより、ポッポマンのテンションはこれ以上になく上がっていった。


 バギィ! ドギィ! ガッシャン! ドッシャン!


『俺は!俺は強いんだ!』


 興奮のあまり、ポッポマンは増結合が解除されるまで残りの校舎もボコボコに壊していった。


 


 結果、萬葉高校の校舎群は、すべて再利用が不可能なほどに壊されてしまった。

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