ポッポマンに匹敵する力と私の罪
『単刀直入に言おう。キミの中には、ポッポマンに匹敵する力が眠っている』
精神世界の中で、私はかつて助けた謎の生き物からバトル漫画っぽいことを告げられた。
「でも、いままでそんな力が出てきたことなんてひとつも」
『無理もないね。力がキミの身体に馴染むまでに9年かかったんだ』
そう言いつつ、ポガステアは夕焼けに染まった精神世界の空を眺める。
「……て、ことはもしかして私も、ポッポマンみたいなバケモノになれるってこと?」
『そうだね。ただ……今のキミはポッポマンこと箱根ダンに比べてまだ力が馴染み切っていないから、変身は無理だね』
「……そうなんだ。じゃあさ、どうすれば変身できるようになるの?」
『箱根ダンを止める気かい?』
ポッポマンがほぼ確実に箱根ダンであることは、連日の報道によって、すでに知っていた。
最初は信じたくなかったが、テレビに流れてきた証拠映像や3日前の『いつかオマエを迎えに行く』発言を考えると、ダンだという確証がますます深まっていく。
そして、ダンが人間性を失ってしまったことに関しては、私にも責任がある。
「私があのとき、首を縦に振っていたなら、この惨劇は起きなかったかもしれなかったから……」
高校入学から1年後、引っ越しの際に渡した家の電話番号をもとにダンが電話をかけてきた。
それ以降はお互いの携帯で話し合うようになり、月並みな友人関係を再構築しつつあった。
ある日、ダンは私に告白してきた。
私にはその気がなかったため、それをやんわりと断った。
……それ以降、ダンの精神状態は悪化の一途をたどっていった。
私が3年生に進級する頃、たまたまダンとの会話内容を聞いていた家族がダンとの通話を禁止した。
私は受験に専念したいこともあって、それを言い訳にダンとの通話をやめた。
「……あの時、私がダンを切り捨てたから、みんな死んじゃったんだ!全部私の……私のせいなんだ……」
『それは違うよ、丸山リン』
涙ぐむ私に、ポガステアが問いかける。
『今回の件に関しては、半分以上アイツが悪いっ!キミはほとんど悪くないっ!キミは……優しすぎるんだよ。キミにアイツを止める義務なんてないのに』
「でも、私はこれ以上誰かが傷つくのは嫌だよ!だから、ポッポマンを止めたい!」
『そうか……わかった。じゃあ、キミにひとついいことを教えよう。キミは、変身以外の力はすでに扱えるし無意識のうちに使っている力もあるんだ』
「……えっ?変身が無理なら何もできないんじゃ」
『変身能力とは別に、僕の力を受け継いだ者には力が2つ芽生えるんだ。そして、それは人間の姿でも使えるんだ。少し空を解説に使うね』
ポガステアが空を見上げると、雲の形が2つの絵に代わる。
1つは、他の人に何かを分け与える絵、もう1つは地球が4つある絵であった。
『キミにもポッポマン同様に、2つの力を持っているんだ。まずは、自分の細胞を分け与えて他の人を自分と似た存在に変える「眷属化」という能力』
「眷属って……スラッシュとかワイヤーとか呼ばれているアイツらだよね」
『そう、その通り。眷属は主が持っている「眷属化」以外の能力1つとその人独自の能力を持つんだ。そして、もう一つは……』
ポガステアが私に能力の詳細を教える。
少し複雑な能力だったが、私はなんとか理解できた。
『ちなみに、この能力はポッポマンは持っていないし、把握もしていない。これはかなりのアドバンテージだよ』
「……ありがとう、ポガステア。私、行ってくるね」
能力を使って人を助ける決意をした私は、一目散に精神世界から出ていった。
「あっ、まだキミの眷属について話してないのに……」
ポガステアが何か言っていた気がするが、そんなことを気にしている時間はない。
私は、能力を行使しつつ目的地に向かって自転車で駆け抜け始めた。
目指す場所はただひとつ、厚山県病院だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます