バケモノたちの波乗り

「これで……全員か。だいぶボーンロイドのせいで死んだみたいだな」


 3月4日、福奥県北九国市の山奥にて、トンコのテレパシーによる指示のもと、ダンたちのもとに6人の眷属が合流した。


「まあでも、死んだ6人がむやみに変身して暴れてくれたおかげで、俺たちがたどり着けたってのはありますし、感謝ですよ」


 新たな眷属の1人である小田原ガクオが、犠牲となった同類に感謝の意を表する。


 彼の言う通り、警察が薄井情雅のような派手に暴れた眷属の対応に手いっぱいだったおかげで、6人の眷属は警察にマークされず、目的地に着くことになった。


『我が主よ、今のうちに彼らの能力を把握しておいた方がいいのでは?』


「ああ、そうだな。じゃあみんな、一斉に変身してくれ」


 ダンが新たな眷属たちに手をかざすと、一斉に変身が始まった。


 そして、各々がそれぞれのサナギを破り、変身を終えた。


 


「なるほどね……能力持ちが3人、不完全体が3人って感じか」


 ダンが変身した眷属たちに目を向けつつ、彼らの性能を振り返る。


「とりあえず、能力持ちの人だけでも連携のために変身後の名前を決めておこう」


 そう言うとダンはまず、体色が水色の眷属に手を当てた。


 「キミは体液を操作できるから……リキッドとかどうかな」


『あー、いいじゃん』


 眷属改めリキッドは、新たに与えられた名を喜んで受け取った。


 次に、彼は体色が黄色で頭部がミラーボールのようになっている眷属に手を当てる。


「キミは、なんかもう雰囲気とか凄い大声が出せる能力とかがクラブハウスっぽいから……ディスコだ」


『ふーん。まあ、それでいいんじゃないの』


 最後に、体色が黄緑色で顔の上半分に仮面をしている眷属に手を当てる。


「キミは風とかすごいから」

『サイコにしてくれ』


 眷属はすでに自らの名を決めていた。


「じゃあ……サイコでいいかな」


 ポッポマンは一瞬顔をしかめたものの、すでにスラッシュとワイヤーという自己申告の名前を認めた前例があったのを思い出し、その名を受け入れた。


「後の3人はひとまずモブ1、モブ2、モブ3と予防」


 ダンは能力を持たない不完全な3体を次々と指さし、雑に名前を付ける。


『ひどっ!』


 モブ1こと小田原ガクオがずさんなネーミングにツッコミを入れる。


「まあまあ、今後もし完全な状態になって能力を得たら改めて名前つけるから」


『ならいいか』


 小田原ガクオはかなりチョロかった。






『リキッドくんすごいねぇ。まさか、こんな器用なこともできるなんて』


 1時間後、ポッポマン一味9人は海上にてリキッドの涙が固まってできたボートに変身したまま乗って四州へと移動していた。


『しかもこれ、体液操作の応用で運転手や風が無くても動くのいいじゃん!』


『まあ、俺がボートから弾き飛ばされると能力の射程距離外になって壊れるリスクはあるんだけどね』


 リキッドがスラッシュのベタ褒めに応答する。


『まあそんなことなんてありえな……ありえたぁ!みんな、空を見ろぉ!迎撃準備しろぉ!』


 スラッシュが突如、声を荒げる。


 彼は超感覚によって、風の変化から何かが飛来してくることを察知したのだ。


『マジですか……では私とディスコで迎撃しましょう!』

『えっ……俺?!わかった!やる!みんな耳塞げよ!』


 サイコとディスコがようやく目視できる距離まで迫って来たミサイルっぽいものを把握し、迎撃態勢をとる。


 サイコは手のひらを扇風機に変え、ディスコは口を開け思いっきり吸う。


 ヴォオオオオオオオオオオオオオン!!

『ギャアアアアアアアアアアアン!』


 サイコの手のひらから出た強風とディスコの口から出た絶叫を浴び、ミサイルが勢いを失う。


『ドカアアアアアアアンン!』


 そして、涙のボートから離れたところでミサイルは爆発した。


『ま、まだ来るぞ!』


 スラッシュが次なる敵襲を感知する。




『ンギイイイイ……』


 ポッポマンは、上空に大量にいる無人戦闘機を見て、苦い顔を浮かべた。


 無尽戦闘機は、異国のものであった。

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