バケモノの身バレ
「あっ、俺の動画サイトのアカウントがBANされている」
3月3日午前、山奥の電波塔近くにて、箱根ダンが長らくの間電源をオフにしていた自分のスマホを起動した。
「チッ……もうポリスどもに身バレしたのかよ」
『いや、死んだと思われた可能性もあると思います』
「そうだとしたら、消す必要性はないだろ」
箱根ダンは、BANされたアカウントでは動画の投稿はしていなかった。
同時に、コメントを行うことも1度もなかった。
よって、彼のアカウントBANが意味することはただ1つ。
警察がポッポマンの正体にたどり着き、悪用されないように彼のアカウントをBANしたのだろう。
「ウッゼー!!ウザイ!ウザイ!今度警察官見つけたら骨の髄まで喰ってやる!」
ダンが目を赤く輝かせ、激怒する。
「俺を不快にさせたヤツは、跡形も残らず消し去ってやる!」
人間性をすべてかなぐり捨てたようなえげつない発言をしつつ、ダンは山奥の北方面へと足を進めていった。
そのはるか先には、福奥県と九国最大の都市、福奥市があった。
■□■□■□■
「速報だ。箱根ダンのスマホに起動反応が見られた……ポッポマンが箱根ダンであることはこれでほぼ確定だろう」
ボーンロイド隊のリモート会議にて、外部協力者である四木村啓助が事実と憶測を述べる。
「ドクター四木村、それはもう120%真実でしょうよ。各種動作のクセや言葉選びのセンス……バケモノとダンには似通った点がありすぎる!」
ポッポマンの正体を探るべく、警察は運動会の箱根ダンを映した映像を彼の母校から入手し、走る時のクセが一致していることを突き止めた。
同時に、彼のSNSの裏垢の情報も入手し、悪口の傾向が類似していることも突き止めるに至った。
「それを言うなら、私の取った映像にも言及するべきなのでは?あれはもう確固たる証拠だろ」
鈴鹿ハナの言う通り、彼女は先日の戦闘直後に証拠となる映像を撮影していた。
ポッポマン一味が生身の警官を蹂躙した10分後、鈴鹿は近隣の交番にあった非武装の飛行型ボーンロイドを操作し彼らの後を尾行し始めた。
幸い、スラッシュの持つ超感覚は非生物相手では鈍るため、彼に察知されることもなく、時速80キロで走る彼らを数十分間尾行し続けた。
そして、山のふもとで3人が変身解除する姿を無事に撮影したのであった。
「でもさぁ、バケモノが食べた人間に擬態している線は?」
首都近郊エリアを担当する10代の隊員、灰原オサムが更なる可能性に言及する。
「その線は薄いと思いますねぇ」
のほほんとした口調でオサムの意見に反論するのは、本土最西部に位置する山陰山陽エリアを担当する車椅子の隊員、雲鳥ナホであった。
「もしもバケモノの姿が本来の姿なら、なんで山に入る時に擬態するのでしょうか?……山奥の方が人目は少ないのに」
「あっ、そっか!擬態は本来の姿だと警戒されるときにやるものだから、都市部よりも人が少ない山に入る時にするのはおかしいのか!」
灰原が雲鳥の意見に納得する。
「それに、単純に人間の姿よりもバケモノの姿の方が険しい山奥を歩くのには向いていると思いませんかぁ……?」
「なるほどな。じゃあ、なんでアイツらはわざわざ人間の姿に戻ったんだ?」
「諸説あると思いますが……帰宅して部屋着に戻るようなものだと、私は思っています。どんなに人間性を失っても、人間であった事実や過去は変わりませんから」
鈴鹿の質問にも、雲鳥はきちんと答える。
「まあ、某光の巨人みたいに、変身時間に制限があるという可能性もありますけどね……」
こうして、彼らはバケモノの正体が人間であることに対する確信を深めつつ、会議を終えた。
その晩、福奥市付近の山にて、ポッポマンが都市部へとケムリを流した。
2日前の類似事例と同様に、煙を吸った人は夢の中で力を受け取るかどうかの選択に迫られた。
その結果、福奥市民から12体のバケモノが産まれることになった。
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