すべては理想の人生のために
『そういえば、
なお、トンコは生まれつき喋るのが苦手なため、人間の姿でも口ではなく眷属化したときに得た能力『テレパシー』を使って話している。
「そうだな……目的なら明確にあるぞ。街を1つ手に入れ、各国と不可侵条約を結び、初恋の人と結ばれること。この3つが目的だ」
「けっこう具体的だなぁ」
『よい理想。私は強く賛同します』
「目的の達成のためには、さらに眷属が必要になる。ついてきてくれよな」
「……まあ、力をくれた恩もあるしな。でも、俺のやりたいことも忘れるなよ?」
『私はどこまでも付いていく所存です』
そんな会話をしつつ、3人は山奥を進んでいった。
それから、夜が訪れた。
彼らの身体はすでに人間よりも耐久性に優れたものになっているため、空腹感は少し感じるが食事は必要なかった。
しかし、何も飲まず食わずで野宿しなければいけないという事実に変わりはなかった。
「ふかふかの布団がなつかしーぜ……」
「大丈夫だ。街が手に入ったらヒトカスを脅して手に入れよう……ぐぅ……」
暴れ疲れたのか、ダンは移動中に人間性皆無の発言をつぶやきつつ、そのまま眠りについてしまった。
■□■□■□■
『もう……こんな血なまぐさいことはやめようよ……』
夢の中で、かつて僕たちが助けた四次元生命体『ポガステア』と公園で遭遇した。
彼は生前、顔が書かれた段ボール箱のような姿をしていたが、俺の夢ではそこからさらに左半分が無くなった状態で現れる。
なお、公園は半分だけ更地になっていること以外はポガステアと初めて会った公園と同じ形をしている。
「仕方ないんだよ……僕には成り上がる知恵も体力も才能もないんだ……キミから貰った暴力だけが、僕に残された夢を叶える手段なんだよ!!」
『だ、だからって……高校の卒業生を300人も殺す必要はあったの?あの子たちは数人を除いてキミとの関わりすらなかったのに』
「アイツらが試験で高得点を取らなければ俺は丸山さんと同じ高校になれたのに……そう考えただけで、殺したくなったんだよっ!」
『でも、どんなに殺しても時間が戻るわけじゃ』
「復讐に合理性なんていらないんだよっ!このエイリアン風情がっ!!」
僕は怒鳴りまくることでポガステアを黙らせた。
「今のオマエは、譲渡された力に付随したオマケに過ぎない。その力ですら、僕の身体に馴染んで使えるようになるまで9年かかった。そうだろ?」
『……そうだけど』
「誰も救ってくれないなら、僕自身の手で己を救ってみせる……!たとえこの手が老若男女の血に染まろうとも!」
僕は右手を上空に掲げ、握りこぶしを作る。
『……ねえ、最後にひとつ質問いいかな』
「勝手にしてくれ」
『キミの目的の先には……何があるのかな?』
「理想の人生……かな」
俺はポガステアに背を向け、問いかけに答えた。
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