バケモノの序列と仁義

「会いたかったぜ……ポッポマン。そして箱根くん」


 山奥にて、鎌倉ゴウタはポッポマンこと箱根ダンと遭遇することができた。


「ゴウタ、こんな山奥に何の用だ?」


 そして、箱根ダンと鎌倉ゴウタはすでに知り合いであった。




「かすかに俺と同じ匂いがする……さてはキミ、僕の眷属になってくれたんだな」


「ああそうさ。ちょっと見てみるかい?」


 ゴウタの周りをサナギが覆い、スラッシュがそれを突き破る。


『どうだいこの姿?尻尾は刀になっていて、千切れても数分で生えてくるんだぜ』


「おお、いいじゃんいいじゃん。ちなみになんだけど、変身後はなんて呼べばいいんだ?」


『スラッシュと呼んでくれたまえ』


「賛成。じゃ、いったん人間の姿に戻ろうか」


 そう言ってダンがスラッシュに手をかざすと、スラッシュは蛹を経てゴウタに戻った。


「あれ?オレの変身が勝手に……」


「言い忘れていたんだけど、僕は自分の眷属の身体を自由に操作できるんだよね。まあでも、謀反とかしない限りはこの力を使うつもりはないけど」


 そう言いつつ、ダンはその辺にあった枝を使って、地面に現在地近辺の地図を描き始めた。


 描かれたのは、四州と呼ばれる4つの県がある島とその西にある九国という7つの県がある島であった・


 そして、四州内右上に現在地を示す枝を刺すことで地図は完成した。


「これからの予定なんだけど、どうやら九国の大板おおいた県でも眷属が生まれたみたいだから、迎えに行こうと思う」


「……別に後回しでいいと思うけどねぇ」


「いや、その眷属がテレパシーの能力を持っているみたいで、さっきからずっと『合流したい』ってうるさいから迎えに行く」


「……そんなことよりもっと面白いことしないか?例えば、生き残った憧憬高校卒業生も殺すとかさ」


 ゴウタはさっさと妹であるネリを殺したくてたまらなかった。


 そのため、間接的に妹を死に追いやれるような提案を行う。


「……いや、それはすぐやらなくていい。今すぐよりも数週間後の少し警戒心が薄れてきたころに襲った方が、もっともっと苦しんでくれると思う」


「……」


 ゴウタは妹の命を奪いたい衝動と理性が衝突に、何も言えずにたちつくす。


「賛成しようか」


 ダンが手をかざし、ゴウタの頭を縦に振らせる。


「賛成してくれたか。では、行くぞ」


 それから数十分後、九国へと海を泳いでいくバケモノ2体の姿が見えた。


 




『まさか、九国にもバケモノがあらわれるとはな。オマエらの目的は何だ?』


 3月2日午後2時、ボーンロイド隊九国エリア担当の鈴鹿ハナは、大板県にいるボーンロイド越しに新たなバケモノと対峙していた。


 そのバケモノはポッポマンよりはスラッシュの方に近い見た目をしていた。


 スラッシュとは逆に口がなく、全身各所に布繊維のような装備をまとっており、両腕にはクモの尻尾のような器官があった。


『私の目的はただひとつ、この素晴らしき力を与えてくださった我が主に尽くすこと』


 バケモノはテレパシーでボーンロイドに語りかけるが、機械はテレパシーを認知できないため操縦者の鈴鹿やAIたちにその声は届かない。


『手を挙げろ!上げなければ撃つぞ!』


 ボーンロイド総員がバケモノに向かって銃を掲げる。


 なお、このバケモノもポッポマンやスラッシュ同様に無敵の力を持っているのでこの行為は無意味なのだが。


『ああ、あっ、ああっ、』


 しかし、この行為で脅され慣れていないバケモノをビビらせることができた。

 

『たすけ……て。たす、け……て』


 バケモノが全身を震わせる。


 その時であった。




『ンギイイイイイイッ!』

『……ハアッ!』


 ビルの最上階にポッポマンとスラッシュがヒーローのごとく現れたのだ。


『我が主!同胞!』


 バケモノたちの逆転劇が、始まろうとしていた。

 

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