不安と不信と

 胃カメラの検査の日、面会に行った。

「気力回復!」にも書いたように、面会は予約制だが、病室に入れずとも、談話室で直接面会ができるようになっていた。

 談話室で待っていると、父は車椅子でなく、ベッドごと運ばれてやってきた。

 以前、他の患者さんが同じようにやって来るのを見ていたけれど、とうとう父も……と複雑な心境だった。


 何だかぐったりしている父だったが、看護師さん曰く、2日間輸血をしたから、昨日よりはずいぶん顔色が良くなったとのこと。

 胃カメラも無事に終わったらしいが、看護師さんからは、検査結果を話すことができない。申し訳なさそうに、主治医からお話があると思うので……と言われた。


「謎のまま」で書いた通り、父の主治医は毎日勤務しているわけではないから、その日に結果を聞くこともできない。

 看護師さんは、主治医に依頼してくれている様子だったが、なかなか連絡がこない。

 仕方がないので、面会に行くたびに、本人の様子を見つつ、それとなく看護師さんに様子を聞いて、出血性胃潰瘍だったが、出血は止まっていること、もう輸血は必要なく点滴で治療をしていることを知った。


 絶食期間が終わっても、食事は鼻からのチューブで流動食。チューブが気になるのか、父はつい触ろうとしてしまう。チューブが抜けると看護師さんが入れ直すことはできないそうで、触らないようにミトンの様な手袋をはめられていた。


 鼻にチューブを入れ、ぼんやりしたままベッドで運ばれてくる父を見ながら、このまま寝たきりになり、どんどん弱っていってしまうのだろうかと不安が押し寄せる。


 救急病院の入院期間の目安は3ヶ月ぐらいらしく、まだ余裕があるからなのか、主治医からは今後の方針の説明もないまま、不安と不信の時間だけが過ぎていくのだった。

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父のファンタジーストーリー  記憶のパッチワーク 柚月 @choBchoB

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