謎の自信

 母の死後、父はデイケアでのリハビリに加え、ヘルパーさんに買い物や掃除、料理の作りおきをお願いすることになった。


 やがて、姪(姉の娘、父にとっては初孫)が、父の家の近くで働くことになり、週に2回は父の家でお昼休みを過ごしてくれることにもなった。


 ひとり暮らしだが、平日は、ほぼ毎日誰かが行ってもらえることで、私はずいぶん心強かった。


 基本父は、ちょっと手足をぶつけたり、転んだりしても黙っている事が多い。青痣ができても、多少痛みがあっても、2〜3日で治るとか、「わしは大丈夫」という ”謎の自信“ があるのだ。


 だが、何日かしたら、私に怒られるから内緒にしてと言いながら、こんなことがあったと姪に話す。

 あるいは、私との話の流れで、しれっと転んだことを言って、バレてしまう。

 しかも、「上手に転んだから大丈夫」とか、わけのわからない自慢をする。

 結局、父は隠し事ができない。

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