どっちが看る?

『老いてもナース』の1話にも書いたように、姉とはひと回りほど違っていたが、仲の良い姉妹だった。


 大人になり、両親も年老いてくると、どちらが先に逝くのだろうという話にもなる。

 「父は何もできないから、母に先に逝かれたら困るなぁ」

 「でも、母が残されると寂しがり屋だから、絶対一人暮らしは無理だよねぇ」

 などと好き勝手なことを話していたが、現実味は薄かった。


 実家も古くなり、すでに夫を亡くしていた姉は、自分や孫たちの住む町に両親を呼び寄せた。

『父と私』に書いたように、若い頃は、自分の新居すら知らなかった父が、引っ越してからは、さすがに夫婦共々高齢になったことを実感したのか、掃除をしたり、家計簿までつけていた!


 私たち姉妹は、母が残ったら姉が同居、父が残ったら私が同居?などと、相変わらず実感を伴わない計画をしていた。


 そんな中、誰よりも先に姉が逝ってしまった。

 逆縁の不孝を嘆きながらも、両親は気丈に支え合って暮らした。


 やがて母が骨折をしたり、持病が進行し始めた時には、父が食事の世話などもしていた。


 母が旅立った時、父は90歳を越えていたが、私との同居は望まなかった。父にはお互い思うことはちゃんと言おうと話し、2人でがんばろうねとハグをした。


 残された“似た者父娘”は、姉との計画にはなかったけれど、それぞれのペースで暮らすことになった。

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