父のファンタジーストーリー 記憶のパッチワーク
柚月
父と私
父95歳。元・一級建築士。
私が小学生の頃は、時折ゴルフの打ちっぱなしや、高校野球を観に連れて行ってくれたけれど、普段は、家のことも娘たちのことも、同居していた自分の母親のことも、バリバリの看護師だった母に任せきりの仕事人間だった。
私が生まれる前、自宅の引越当日も仕事で、挙げ句に新居を知らず、最寄駅だけを教えられていた父を、母は迎えに行ったらしい。
「自分の引越し先も知らなかったんだから!」
と、笑い話として、時には恨み節として、事あるごとにネタにされていた。
中学生になると、私は父が嫌いになった。
いわゆる思春期だろうが、高校生になった頃、それだけが理由ではないことに薄々気づき始めた。
同族嫌悪。
私は父と似ていたのだ。
父とは時折激しく言い争いをし、間に入った母はオロオロしていた。
母は父に、姉にはあんなにキツい事は言わないのに、どうして私にはそこまで言うのかと聞くと、「あいつはいいんや、わかってるから」と涼しい顔。
私も父に言われた事は気にならないし、母には言わないような事を、負けじと言い返す。お互い言うだけ言って、それで終わり。
認めたくないが、お互いのことはわかっているのだ。同族ですから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます