父のファンタジーストーリー  記憶のパッチワーク

柚月

父と私

 父95歳。元・一級建築士。


 私が小学生の頃は、時折ゴルフの打ちっぱなしや、高校野球を観に連れて行ってくれたけれど、普段は、家のことも娘たちのことも、同居していた自分の母親のことも、バリバリの看護師だった母に任せきりの仕事人間だった。


 私が生まれる前、自宅の引越当日も仕事で、挙げ句に新居を知らず、最寄駅だけを教えられていた父を、母は迎えに行ったらしい。

 「自分の引越し先も知らなかったんだから!」

 と、笑い話として、時には恨み節として、事あるごとにネタにされていた。


 中学生になると、私は父が嫌いになった。

 いわゆる思春期だろうが、高校生になった頃、それだけが理由ではないことに薄々気づき始めた。


 同族嫌悪。

 私は父と似ていたのだ。


 父とは時折激しく言い争いをし、間に入った母はオロオロしていた。


 母は父に、姉にはあんなにキツい事は言わないのに、どうして私にはそこまで言うのかと聞くと、「あいつはいいんや、わかってるから」と涼しい顔。


 私も父に言われた事は気にならないし、母には言わないような事を、負けじと言い返す。お互い言うだけ言って、それで終わり。

 認めたくないが、お互いのことはわかっているのだ。同族ですから。

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