また財布が潤う
「ハハハハ!! 雑魚狩りは楽しいZOI☆」
「な、何なんだよ! お前!!」
スラム街の一部に大規模な盗賊団が拠点を作ったという情報を得た僕は、夜にカラスとして出向いていた。
拠点へ着くとパーティでもやっているのかと思うほどの悪人顔の人たちがいた。
正面から堂々と乗り込んだ僕に盗賊たちは多勢に無勢の形で襲い掛かってきた。
まぁ、僕の場合は一人でも勝てちゃうからそれに当てはまらないか。
ソウルの剣で無双物の主人公のごとく百人ほどバッタバッタ切り倒したり、殴り飛ばしたりしていくと残りがボスっぽい人一人となっていた。
「気持ちよく雑魚をなぎ倒すのは楽しいんだが、これほど大規模だからもう少し手ごたえがあると思っていたんだがな。期待しすぎたか?」
僕の煽るような口調にボスっぽい男の顔が赤くなる。
「クソガキがぁ。俺は泣く子も黙るルーザーズのボスだぞ。勝てると思ってんのか?」
「そういうのなら力を示してみよ」
掌を上に向け自分のほうに煽るように手を振る。ボスの剣を握る手に力が入る。
「いいだろう。見せてやるシンメイ剣術の神髄を!!」
確か剣神のシンメイという人物が教えるの剣術だ。その弟子だという人物が道場を開いて教えているところがあると聞く。
だが、そのほとんどが金儲けのための偽物でどこが本物の道場かわからないって町で噂になっていたな。この男もそういうたぐいのものだろう。
何度か剣を受けてみて予想通り偽物だろう。この程度の剣で剣神になれるのであれば世も末だ。
せっかくのイベントだ。最後の一人だし、少し楽しむか。手加減して剣を叩き折り、吹き飛ばす。
「三分間待ってやる。この場から一歩も動かないし、攻撃もしない。どうにかしてみなよ」
そう言ってそこらへんに落ちていた折れてない剣を投げ渡す。
「なめやがって!」
ボスの顔が熟れたトマトのようにさらに赤くなっている。その表情を見ながらくくくと笑いながらアクションを待つ。
「……逃げるんだよ~~~~」
「逃げるのはなしだ」
ボスが振り向いた先にソウルで壁を作り、逃げれないようにする。突然出てきた壁に驚いて、しりもちをつく。
大の大人、それも盗賊団の頭領が子供相手にこんな舐めプをされて逃走か。
勝てない相手に逃げる選択肢というのはわからなくはないが読者からすればがっかりだぞ。
「三十秒経過。ほら、急げ急げ」
「本当に何なんだよ。お前」
まるで化け物を見るかのように僕を見上げている。それが僕の加虐心をくすぐる。
腰が抜けたのか、しりもちをついたまま命乞いをするという時間を二分間眺め続け、約束の三分に近づいた。
「そろそろだな。この世への懺悔はすんだか?」
「懺悔か……、それは俺のセリフだ!!」
その言葉を合図に背後から後頭部に向かって高速で何かが飛んできた。
僕は振り向くこともなく左手の親指と人差し指で難なくつかむ。どうやら銃弾のようだ。
「そこか」
「なっ!?」
顔だけを銃弾が飛んできた方向へと向けると数十メートル先に慌てて逃げようとする人影が映る。
右手の剣を鞭のように変化させ、蛇行して人影を追跡し首をはねる。
「すまないな。つまらん邪魔が入ったせいでせっかく覚悟してもらったのにタイミングをずらしてしまった」
「あぁ……。なんで? 今回の仕事は簡単だったはずだろう」
ボスに振り向き直り、一歩一歩距離を詰めるごとに顔が青ざめていく。ズボンの股間部分も湿っている。その年にもなっておもらしとは、恥ずかしいな。
「怖かったよね。すぐに終わらせてあげるよ」
「た、たすけ……」
慈悲を与えるようにやさしく語り掛ける。そして、最後の言葉を聞く前に首をはねる。
「俺の名はカラス。闇に羽搏く一羽の害鳥さ。思ったよりはだったけど存外楽しめたよ」
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