第21話 ローラー作戦
「となると、残る可能性としてはどこかに連れ去られたか、なんとか逃げ延びたか……」
――もしくは殺されて打ち捨てられたか、逃げきれずのたれ死んだか……。
とは、流石に国の兵士たちの前で口にするのは
「ちょっと! ちょっとジミー!」
「だから僕の名前はジミーじゃないですって……!」
「そんなことより、この中身、味方のものと敵のもので分けて欲しいんだけど」
そう言って、壊れた武器やら防具が入った残留物箱をジミーに示す。
「え……、これをですか……?」
「そうよ。だって明らかに、この中にあるものが一番の手がかりじゃない」
味方のものを省いた残りの残留物――つまり、襲撃者の残していったものが、いったいどんな素材でできていて、どこで買われたものか(もしかしたら盗品かもしれないけど)を探っていく方が、襲撃者の割り出しに近いに決まっている。
――と、思ったのだが。
「なんの変哲もない鉄の剣と鉄の胸当てその他ですね……」
「はあ!?」
なんなら、どこかから国の軍用品をパクってきて使ってるんじゃないかと思います……。とジミーが言うので。
「ええ〜! なんかこう、わかりやすく盗賊の紋章とか入ってないの!? チンピラ盗賊団の紋! みたいな!」
「そんなの入れませんよ盗賊が! 身分証持ち歩きながら襲ってるようなもんじゃないですか!」
「なによそれ! もう使えないなあジミーは……!」
「ファッ!? 僕のせいですか!?」
当てが外れた憂さ晴らしを手近なジミーでしたら、悲壮な声で反論された。
まあ言いがかりだってわかっちゃいるよ! ごめんね!
つかさ!
軍用品をパクってとか!
ますます宰相黒幕説が濃厚じゃん!
横流ししてんじゃないのお……!?
とか言って、たらればの話をしていても仕方ない。
「わかったわよ……。こうなったら……、ローラー作戦で行くしかないじゃないの……!」
ここはもう撤収していいわ、と他の兵士に指示を出し、「行くわよ! ジミー!」と声をかける。
「だから僕……、ジミーじゃないんですってばあ……!」
そう言って、泣き言を言いながらも後をついてくるジミーを引き連れて私が向かった先。
そこは――。
◇
「たのもおー!」
「――なんだァ……?」
「ヒィ……! ニア様ぁ!」
どがぁん! と、建物のドアを蹴破り、問答無用で内部に侵入する。
「――聞きたいんだけど。ここが、ちり紙盗賊団であってる?」
「ちり紙じゃねえ死神だよおるぅあああああ!? 死にてえのかクソ野郎!?」
「に……、ニア様ぁ……」
ここは、
「い〜い? 正直に言わないとぶっ飛ばすし、正直に言っても本当かどうかわからないからぶっ飛ばすし、結論ぶっ飛ばすわよ」
「言ってることめちゃくちゃなんですけどぉ!?」
「うっさいジミー! 邪魔するならあんたも一緒にぶっ飛ばすわよ!」
「ヒィ……!」
ダン!
どぉん!
『ダン!』と強く床を踏みつけるのと同時に、片手にはめた指輪を使って無詠唱で爆発魔法を発動させる。
「なんだぁ、この嬢ちゃん。魔術師かあ?」
ダン!
どぉん!!
先ほどと同じ要領で、片足で床を強く鳴らすと同時に魔術を発動させる。
「ひとつ言っておくわ。これからあんたたちが口にしていいのは、『はい』か『いいえ』よ」
「は、そん……」
ダン!
どぉん!!
どぉん! どどぉん!!
『そ』という単語を耳にした瞬間。
宣言通り、『はい』と『いいえ』以外の答えを口にしようとした盗賊その1に向かって、三連発で魔術をお見舞いする。
「グ……グレッグううううううぅぅ!」
「大丈夫。峰打ちよ」
――もちろん魔術に峰打ちなどない。
どうやらグレッグという名前だったらしい盗賊その1が、先程の魔術の衝撃で床に沈んでいるが、峰打ちという名の手加減で気絶をしているだけだ。多分。
「聞きたいことはふたつ。あなたたち最近――、この近くのフィールズとテオニアの街の間の街道で、馬車を襲ってない?」
「い……、いいえ……」
どぉん!!
盗賊その2の答えを受けて。
そのすぐ斜め前にいた盗賊3が魔術の爆風で吹き飛んだ。
「い……、いいえってちゃんと答えただろうがよお!」
「正直に言っても本当かどうかわからないからぶっ飛ばすって言ったでしょうが!!」
「む……、むちゃくちゃすぎる……」
背後で、ジミーがなにやらつぶやいたような声が聞こえた気がするが、まるっと無視する。
「く……、くそ……! お前ら、いつまでもぼおっとしてんじゃねえ! 全員でかかるぞ!」
「「お……、おお!!」」
――ダン!
どぉおおおおおおおん!!
盗賊その2の合図に、残りの全員がやる気を出して雄叫びを上げた瞬間。
――アジトの天井と、外壁を全て破壊してふっ飛ばした。
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