開かずの間
これは去年の夏休みの話だ。
サークルのメンバーの野田君の祖父母の家があるX県の
新幹線と在来線に加えて路線バスを乗り継ぎ、その村に着いたのは日が暮れかかる頃だった。
野田君の祖父母は既に他界していたが、叔母さんが家で出迎えてくれた。そこは家というよりちょっとした旅館ぐらいある大きなお屋敷だった。
野田君の叔母さんは「家が大きすぎて、掃除するだけでもひと苦労なんよ。でもこの家はちゃんと綺麗にしとかんと色々あるからねぇ……」と何か含みのある愚痴をこぼしていた。
僕たちは男女3人ずつのグループだったので、叔母さんは隣り合った部屋をそれぞれあてがってくれ、風呂やトイレの場所なども教えてくれた。そして最期に一つ説明を付け加えた。
「あ、それから。この家の一番奥にある部屋の入り口の襖にお札が貼ってあるんやけど、決して開けんといてね。それさえ守ってくれれば、あとはあんたたちの自由にくつろいでくれてええから」
そう言って叔母さんは自分の家へ帰って行った。
「何故だろう?」そう思いながらも僕たちは叔母さんの言いつけを守り、滞在期間中はお札が貼ってある部屋には一切近づかなかった。そして、あっという間に充実した時間が過ぎ、僕たちは仲間との楽しい旅行の思い出を胸に、家路についた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます