老いてもナース

母は短歌を詠むのが好きだった。

何十年も日記を書いていて、その日記やノートに短歌を書き留めていた。

母の遺品の中に見つけた短歌の一部を、『追想歌 ~母の歌、時々父』『慈愛歌 〜 母から姉へ』と題して掲載している。


『老いてもナース』というタイトルは、私から見た母の姿だが、はからずも、母自身がタイトルそのままの短歌を詠んでいた。


この短歌をもって、最終話としよう。


 白衣着て 病の人に寄り添いし 長き昔を取り戻したし


 看護の手 いる人々に寄り添えぬ 白衣を脱ぎて長く過ぎたり


 われもまた 長く白衣で働きて 今病む人に 添えぬ歳となり


 完

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老いてもナース 柚月 @choBchoB

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