第44話  火の王と契約

 雨雲の上から、雷を落としていたアンナレッタのもとに、小さな火口からモクモクと煙が上がって、それが半透明の顎に髭を貯えた体格の良い精霊が現れた。


<我が聖域に、雨を降らせるとは良い度胸だな>


「山の神か!?」


<我が聖域に何用か!?>


「地竜に会いに来ただけだ。用が終わったら、直ぐに去る。お前に用はない」


 アンナレッタは、冷静に答えた。


<お前は魔法使いだな? 呪文でこれだけの雨と雷を呼べるとは、稀有な力だ。どうだ!? 我と契約せぬか?>


 突然の山の神の申し出に、アンナレッタは驚いた。

 しばらく固まっていた。

 山の神クラスの上位の精霊にスカウトされてしまった。


 <アンナ、どうするんだ?>


 アンナレッタの頭上のリカルドが言ってきた。


「そうすると、そこの場所はお前の特等席じゃなくなるぞ」


<仕方ねーよな、俺はまだ若僧だ>


「良いのか!? 火の精霊を受け入れたら、お前だけが私の精霊でなくなるんだぞ」


<このまま旅を続けるなら、仲間は多い方が良いに決まってるだろ>


「そうか、お前がそういうなら」


 アンナレッタは、雨雲から、華麗に降りてきた。


<雨は、我とは反する属性だ。いい加減に上げてくれぬか!?>


「そうだな」


 アンナレッタが、呪文で雨雲を散らした。


<礼を言うぞ。我は、火の王のレスタコンダだ。お前の名前は?>


「火の王か……さすがにマラ山の山の主だ。私の名前はアンナレッタ・エル・ロイルだ。火の王、レスコンダ、私と契約しよう。私の頭上へ来い」


<エル・ロイル?イリアス殿の系譜の者か!?>


「直系だ。敬えよ」


 <見えぬがなぁ……>


 ゴニョゴニョと言って、火の王はアンナレッタの頭上に移動していった。

 リカルドは、アンナレッタの左肩に移動した。


「火の王、マラ山にいるという地竜の棲み処は何処だ?」


 アンナレッタは火の王に問いかけた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る