第42話  再会

アンナレッタが気が付くと、目の前にリカルドとアーロンがいた。


<アンナ!! 無事か!?>


 リカルドの心配そうな表情に、アンナレッタは笑ってしまった。


「相変わらず、人間臭い奴」


<俺は元、人間なんだ!!>


 そんなリカルドを、突き放す様にアンナレッタは言った。


「それでも、永遠に同じ時を過ごせる訳じゃない。寿命が来たら、お前も私も死ぬだろう。ただ、精霊の方が断然に寿命は長いからな。私が死んでも、お前は生き残る。生き残って、また誰かと契約するんだ」


 リカルドはショックだった。

 今はそんなことは考えたくないことだ。


「アンナ様、風の騎士は本当にアンナ様のことを心配していたのですよ。」


 アーロンがアンナレッタに言ってきた。


「分かったよ、悪かった。さぁ、次は南方のマラ山だ」


「マラ山!? 魔族がいますよ!!」


「魔族? ってなんだ!?」


 アーロンは、少しコケそうになった。

 何でも知ってそうなアンナレッタだったが、魔族を知らないとは……

 アーロンは、荷物の名からからくり箱を取り出した。からくり箱というのは、この世界の持ち運び便利グッズの一つで、大きな荷物もコンパクトに運べるために冒険者や、大荷物を抱えての移動の時などに重宝されていた。

 勿論、高価なものである。

 中には代々家宝になっている家もあった。

 冒険者は、Sランクになるとギルドから無償で受け取ることが出来た。


 アーロンは、からくり箱の中から、分厚い本を取り出した。


「およそ、千年前に西域のシェラナ山にいた魔族を、人間が討伐して、今のシードック帝国を建国したとあります。

 その時に、あらかたの魔族を南方のゴンガガ地方に飛ばしたそうです。

 その後、冒険者たちの手で、麓に棲む人間に近いディン族や、マラ山の棲みついた翼を持ったアルゲイ族は討たれていますね。でも、全滅してるわけではありません」


「だから魔族って、どういう種類なんだよ!! 闇の神の眷属か!?」


 アンナレッタの言葉にアーロンは、怒って思い切り本を閉じた。


「ディハルド神は、見た目こそ、恐ろしいですけど、優しい神です。

 確かに魔族は、闇の神の眷属ですけど……」


 アンナレッタは、いじけているリカルドや、怒っているアーロンを無視して言った。


「リカルド、ゴンガガ地方に行くぞ!!」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る