第38話 クララはこれからどうするんだ?
暗い牢獄の中で私は静かに判決の時を待っていた。
「…………」
暗い場所には慣れている。小さい頃からずっとずっと暗い場所から太陽に照らされている人たちを見ていたから。
だから辛くない。怖くない。ただ前に戻っただけ。
…………でもやっぱり、寂しい。
お父さん、私、これからどうすればいいの?
クララは幼いながら賢い子だ。察しがよく、今でもお父さんがくれた温もりを忘れられない。もうお父さんはどこにもいないのに。
■□■
グルタ騎士を探しに周りを回っていて俺は気づいた。
「ここってもしかして王城?」
ふと窓の外を覗いた。
すると、そこには王都プリスタリアを一望できる絶景が広がっていた。
「通りでベットが派手だったわけだ。それはそれとして広すぎてグルタがどこにいるかわからん。どうしたものか…………よし、ここは魔法の出番だな」
まだ魔力は万全じゃないが、探知魔法ぐらいは使えるはずだ。
全神経を尖らせ、自身の魔力を微弱ながら波紋のように王女全体に巡らせた。
「…………広すぎてわからん。しかも多すぎだろ」
どうやら、俺がいる階はあまり人がいないようだが、その下はたくさんの人であふれかえっているようだ。
意図的に避けられている。と考えるのが普通だろう。
「王城の真下だな、牢獄は…………ここはこっそり忍んで行くか」
「感心しませんな、クラウン様」
「グルタ、どこにいたんだ?探したぞ」
「アルミナ様からクラウン様がクララに会いたがっていると今さっき聞いたところでして、案内いたします。ついてきてください、アルドリヒ公爵家の長男、クラウン様」
「…………なるほどな」
俺はグルタの後ろについていき、牢獄の前へと訪れた。
「ここから先はお一人でお願いいたします」
「わかった」
ガチャっと牢獄の入り口の扉を開けて、下へと続く階段を下りる。
地面に足がつくとその先に広がるのは鉄格子で塞がれた牢屋。それは奥へと続き、見ただけでも20以上の牢獄部屋がある。
だがその中でも奥の中の奥、その先の牢屋から一際、異質な雰囲気を感じ取った。
「一番奥の牢屋か」
俺は一歩一歩、踏みしめながら奥へと続く道を歩く。
突き刺さる視線は殺気に満ち溢れ、一般人がここを通ればすぐさま気絶しているだろう。
それにしても背筋が凍りそうなほどの殺気だな。正直、怖いんだが。
まあ、王城の牢屋に送られるほどの人間なんだ。ごく一般的な囚人とはわけが違うのだ。
「ふぅ…………まず一言、ありがとう、と言わせてくれ、クララ」
「…………あなたはクラウン」
最奥の牢屋の入り口に立ち、気軽に声をかけるクラウンにクララはこちらを向いて口を開いた。
両手両足を縛られ、身動きをとれない状態のクララ。その姿は拷問を受けた後だと見てわかる。
それはそうだろう。なにせ、クララだけがバハラ唯一の生き残りだからだ。
むしろ、殺されていないだけ運がいいのだろう。いや、もしかするとアルミナが根回しをして殺されないようにしたのかも。
とはいえ、傷からして相当な拷問を受けたのは確かだ。
たくっ、ここだけは原作通りなんだな。
「どうして、ここに?」
「お礼を言いに来たんだ。ほら、クララのおかげで脱出できたわけだし、な」
「あれはお父さんの命令に従っただけ」
「そうか」
俺はゆっくりと牢屋の扉の前に座った。
「なに?」
「…………なぁ、クララはこれからどうするんだ?」
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