第36話 報いを受けるとき
報いを受ける時が来た。
ただそれだけの話だ。
だが、このままあいつが黙っているとも思えない。バハラを創設してから一度も顔を見せなかった。
3代目絶影アサツが…………。
トンっと足音が鳴り響いた。
「…………アルミナ!!」
クラウンが叫び、すぐにアルミナは振り返ると風が横切った。
その瞬間、アルミナの視点は暗転し、俺に向かって吹き飛ばされるが、それをなんとかカナがキャッチした。
「いたーい!けど、だ、大丈夫!?」
「え、ええ、右腕を少しやられてだけです。それより!!」
全員がとある一点を見つめた。
そこにはクララぐらいの身長をした少年がアルケットの前に立っていた。
「情けない顔だね、アルケット」
「…………やっぱり、見てたのか」
「本当に残念だよ。ここまで作り上げたバハラをこうして自らの手で壊さないといけないなんて」
「うすうす思っていた。俺たちはただいい駒として使われているだけじゃないのかってな」
「世の中、ことをうまく運ぶのは難しい。だが、誇っていい。僕が今まで取り組んできた中で一番成功した事例だ。もしこの失敗の原因を上げるとすれば、アルミナの即時の対応だろうね。さて、話はそろそろ終わりだ。残りは君と僕のかわいい弟子だけだ」
その会話についてこれているのはきっとアルケットだけだ。
何の話をしているんだ?それにあいつは誰だ?見た目は子供だが、かなりの実力者なのは見てすぐにわかる。
だが、かわいい弟子っていうのはきっとクララのことだ。ということは…………まさか、アサツ!?
伝説に生きる3代目絶影アサツ、原作だとクララの師匠としか書かれていなかったはずだが。
「さようなら、わが友」
瞬く間にアサツの右腕がアルケットの心臓を貫き、血を吐いた。
「くぅ…………分かっていた。俺がお前の都合のいい駒だってことはな。だが、クララだけは、クララだけは殺させはしないぞ」
「何を言って…………んっ!?」
アサツが右腕を引き抜こうとするもなぜか、抜けない。
「クララ!!」
「は、はいっ!!」
「あいつらを連れて今すぐ外に出ろ!!」
「で、でも」
「クララ…………お前は報いを受ける必要はない。いいからいけっ!!これは命令だっ!!」
命令、その言葉にクララはすぐに動いた。
アルミナとカナ、そして俺がいるほうへ走りながら、闇を纏い始める。
「くぅ、何のつもりかな?」
「俺は取り返しのつかないことをした。師匠は言った。悪の道を進めば必ず報いを受けるってな。その時が来ただけだ。そして、お前も報いを受ける時だ」
「バカげたことを。どうやって僕に報いを受けさせるんだい?その出血から見て長くても数十分しか持たないはずだ。その後に追いかけてクララを殺すだけだ」
「ふふふ…………そうなるといいな」
アルケットとアサツが会話している間にクララは3人を闇で囲い、後は脱出するだけになったが。
そこで足は止まりアルケットのほうへと振り向く。
「お父さん」
「クララ…………いけ」
クララが放つ闇は4人を完全に包み込み、姿を消した。
そして、その場にアルケットとアサツだけが取り残されたのだった。
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