第30話 友達を助けるのは当たり前っ!

 クラウンへの道を開けた後、アルミナたちはバハラのメンバーと戦っていた。



「はぁ…………思ったより数が少ない」



 戦いながら周りを常に見渡す中、バハラのメンバーが想像より少ないことに気づいた。


 騎士たちも苦戦を強いられているけれど、勝てない敵じゃない。


 それに私たちが幹部と呼んでいるバハラのメンバーに関しては誰一人として見ていない。これは明らかに不自然。


 何か目的が?でも、本拠地を守る以外に目的がなんて、今のバハラにはないはず。



「アルミナ様!また増援が!!」


「増援…………んっ!?誰かいる」


「アルミナ様!!」


「グルタ騎士、どうやら相手側からお迎えが来たみたいです」



 コンコンっと近づいてくる足音。


 奥へと続く道から姿を見せたのはバハラの副リーダー、コーラと大勢のバハラのメンバーだった。



「あなたがアルミナ・プルッセラ。随分、なめられたものです。こんな少数の騎士たちで我々を倒せると本当に思いですか?だとしたら、なめられたものだ」


「バハラの副リーダー、コーラ。まさか、あなた自ら現れるなんて、好都合です」


「この状況で余裕をこけるのはただの慢心からなのか、それともよっぽどの自信のある策があるのか」



 バハラの副リーダー、コーラのことはある程度調べてはいる。


 バハラの頭脳、あらゆる手を尽くしバハラを大きくした人物の一人。


 油断はできない。



「まあ、それは見てみればわかることです。さぁ、狩りの時間だ。バハラの恐ろしさを思い知らせてやれっ!!」



 コーラが引き連れた総勢100人以上のバハラのメンバーが押し寄せてきた。


 その大勢のバハラはさっきまで戦っていたバハラとは一線を画すほどの強さで簡単に押され、騎士たちは少しずつ追い詰められる。



「アルミナ様を守れ!!」



 ついにはアルミナを囲い、守る陣形を取らざるおえなくなった騎士たち。



「所詮は少数精鋭。数の前では無意味だ。ここで沈め、アルミナ・プルッセラ」



 目と鼻の先にいるコーラは余裕の笑みを浮かべていた。



「アルミナ様、これ以上は」


「…………やっぱりこれしかない」



 現状を打破するにはかなめであるバハラの副リーダー、コーラを無力化するしかない。


 そのためにはこの数の敵中をかいくぐって、コーラをたたく。


 アルミナは僅かな通り道を見定め、コーラへと続く道を探る。


 そして。



「今っ!!」



 アルミナがその場で一歩を踏み出したとき、後ろから。



「「「ぐはぁっ!!」」」



 バハラのメンバーの叫び声が上がり、同時に見覚えのある炎が燃え上がった。



「んっ!?今の叫び声は一体」


「カナっ!?」



 アルミナは最初の一歩で足を止めて、振り返った。



「友達を助けるのは当たり前っ!アルミナちゃん、助けに来たよ!!」



 紅蓮の炎で敵を倒しながら現れたカナ。


 その姿にバハラのメンバーは。



「あいつはまさかC級冒険者、白魔女のカナ!」

「え、あのなんでも燃やす問題児の?」

「ひぃへぇっ!?助けてくれ!!」

「おい、逃げるな!」



 なぜか、次々とバハラのメンバーが逃げていき、コーラは。



「おい、お前ら、どこへ行く気だ!」


「知らないんですか、コーラさん!白魔女のカナの伝説を!たった1時間で草原を焼き払い、ベヒーモスを単独討伐、挙句の果てには怒りのあまりに宿屋を全焼させた問題児を!」


「いや、知らない。じゃない!どんな奴かは知らないが、数はこっちが有利なんだ。数で押し切れば!!…………あ」



 コーラが振り返れば、たくさんいたバハラのメンバーは倒れており、アルミナとカナが目の前に立っていた。



「カナ」


「はーいっ!えいっ!!」



 無慈悲なまでの炎がコーラに襲い掛かり、そのまま泡を吹いて気絶した。


 なんとか困難を乗り越えたアルミナはカナに声を掛けた。



「…………どうして、カナがここにいるんですか?」


「え、言いましたよね?助けに来たって」


「そうじゃなくて、どうしてここがわかったのかって聞きたいんですけど」


「そんなの決まってるじゃん。クラウンさんセンサーがビンビンだったから!それ以外にない!あ、あとアルミナちゃんセンサーが危険信号を発してたから、かな」


「それ、本気で言ってるんですか」





 カナと初めて会ったのは騎士たちとベヒーモスの討伐依頼を受け、外に出かけていた時のことだった。


 その時の私は王位に手をかけるための大きな実績が欲しかった。だから、ベヒーモスの討伐依頼を受けたのだが、そう簡単に成し遂げられるわけがなく、その焦りが私たちを追い詰めた。


 そんな時、助けてくれたのは私と変わらないくらいの白髪の女の子。


 白い髪は昔、存在した魔女に由来する。


 国や文化にもよるけど、ほとんどの国では白い髪は毛嫌いされる。でもその子はベヒーモスも炎で焼き尽くし、いとも簡単に討伐した。


 その光景は今でも目に焼き付いている。


 炎に包まれながら、一切曇りのない眼で涼しい顔を浮かべながらベヒーモスを討伐した姿。そして白い髪を気にせず、堂々としている振る舞い。


 その時私は気づいたんだ。私に足りないのは実績もそうだけど、それ以上に実力があり信頼に足る仲間だと。仕える騎士だけではダメなんだと。


 そうカナのような仲間が今の私には必要なんだ。



「カナって幸せそうな頭してそうです」


「え、それって褒めてる?」


「個人の解釈によると思いますけど、私は褒めてます」



 私が引き連れた騎士たちの体力はもう限界。むしろ、ここまで耐えていたことのほうが奇跡に近い。


 …………でもやっぱり、私はこの先に行きたい。この先に行って少しでもクラウンくんの手助けを。



「アルミナ様、我々を置いて先に行ってください」


「グルタ」


「そうです!アルミナ様!この者たちは我々にお任せを!それより早くクラウンの手助けに行って、ごふぁ!ごふぁ!」


「ガンダ、無理をするな。安静にしておけ」



 ガンダ騎士は血を吐きながら膝をついた。



「アルミナ様、そしてカナ様、どうかお先に」


「行こう、アルミナちゃん」


「わかりました。グルタ騎士、全員が動けるようになったら、すぐにこの場から離れてください」


「はっ!」



 窮地脱したアルミナとカナはクラウンが進んだ道へと足を向けた。



「クラウンくんのもとへ急ぎましょう」


「れっつごー!!」



 こうして、アルミナとカナは先へと進んでいくのだった。

 


 



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