閑話 俺の初体験~◯◯を捨てた日
これはトゥルとの修行の日々の中で一番、印象に残ったお話。
そう、たしかあの日は修行から2か月が経った頃のことだった。
宿の部屋で二人、いつものよう剣の手入れをしていると。
「クラウン、お前は童貞か?」
「ああ、そうだぞ…………うん?今なんか、トゥルの口からとんでもない言葉が出たような」
「そうか、なら早めに捨てておいたほうがいい」
「いやいや、ちょっと待てよ。まず、なぜ!急に!童貞の話が出てくるんだ!」
トゥルから発せられた”童貞”という言葉に動揺を隠せない俺だが。
「男はよく獣と表現されることがあるだろ?」
「まあ、国によってはな」
「性欲は男を獣にさせる。そしてその本能が剣を鈍らせることがあるんだ。まあ、それが逆に功を奏することもあるんだが、クラウンは絶対に捨てたほうがいい」
「そうかそうか、とはならないぞ。そもそも俺はまだ12歳!子供を前にしてそんな下品なこと言うなよ」
「そういえばそうだったな。どうも、クラウンとしゃべっているとつい子供であることを忘れてしまう」
まあ、中身は全然おっさんなんだけどな。
でもたしかに、早めに童貞を捨てたほうがいいかもしれない。
俺の夢である酒池肉林三昧も女の子を満足させられなきゃ意味がないわけだし、ここはいっそ、タルタ町で練習したほうがいいのではないか?
「私は恋愛とは無縁で生活していた。それこそ昔はこの身のすべてを剣に捧げるつもりでいた。でも、そんな私でも…………」
「好きな人でもいたのか?」
「いや、普通に寝込みを襲われて、そのままやった」
「えぇ!?それって」
あんまりモラル的に言えないけど、そういうことだよな。
というか、この世界にもそういうのあるんだ。生々しいな。
「なんというか、トゥルもすごい人生を送ってるな」
「当たり前だ。こう見えても25年生きてるからな」
「25年か…………うん?25年、てことはトゥルって25歳?」
「何をいまさら」
「…………あ~なるほどね」
正直、トゥルの年齢設定になんて覚えてないけど、見た目を考えて30ぐらいだと思ってた。
そうか、25か。若いな~~。
そんな会話があり、この時の1日が終わったのだった。
■□■
そして、次の日の夜。
俺はタルタ町の端っこにあるムフフなお店の前に訪れた。
「トゥルの言う通り、やっぱり童貞は捨てたほうがいい!というわけで、捨てます!とうわけで、いざ、戦場へ!」
「何をしてるんだ、クラウン」
「うん?これこれはトゥル、こんな夜遅くに出歩いていたら、危ないよ?襲われたらどうするんだ?」
「私に襲い掛かるものがいるなら、そいつは手練れか、ただの馬鹿だ」
鋭い獣の目で睨みつけられる俺だが。
「たしかにな」
「それで、何を…………しているんだ?」
「俺は昨日の話を聞いて、考えたんだ。そして、決断した!童貞を捨てると!」
「…………ふん。一つだけ言っておく。そのお店、15歳以上じゃないと入れない」
「え」
俺は人生最大の腑抜けた声を漏らした。
「ほら、でもここ田舎だし、年齢も確認も甘いんじゃ」
「たしかにな。だが、大人のお店は違う。世の中のこういったお店は信頼と品質が大事なんだ。もし、ルールを破ったりでもしたら、それはお店の終わりを意味する」
「そ、そんな…………ってなんか、やけに詳しいな、トゥルさん」
ジト目で見つめるトゥルは顔をそらした。
「…………まあ、私は大人だからな。それなりに経験があるんだ」
「なんか、見た目によらず、結構イケイケなんだな」
「そのイケイケというのはよくわからないが、とにかく、宿に戻れ」
「はぁ、わかったよ」
まさか、トゥルに止められるとはな。ちゃんと寝たことを確認して来たのに。やっぱり、S級冒険者を騙すのは難しいな。
でも、いいことも知れた。
トゥルが経験豊富ということを。
それからというものは俺はちょくちょく大人のお店の前まで訪れ、入れるかどうか試みるも入る前にばれて、部屋に戻される始末。
くそ!どうしたらいいんだ!!
と、抵抗を続けるも結局、行けず、時は過ぎたある日の夜のことだった。
「クラウン、そんなに捨てたいのなら私を使え」
「え?」
トゥルの口から思いがけない言葉が。
というか、今なんて言った?
俺の頭の中は今、気が動転していた。
そんな中、トゥルは明かりを小さくして、力強くベットに押し倒した。
「ちょっ、トゥル!?」
「懐かしいな、昔、私もこんな風に押し倒された」
「思い出に浸らないでほしいんだけど。というか、さすがに冗談だよな?」
「私も立派な大人であり、女性だ。安心しろ、すぐに気持ちよくなる」
「…………」
あ、これ本気のやつだ。
目が本気だもん。
まあ、でもトゥルが初体験ならそれはそれでいいかもしれない。
「んっ」
ペロッと首筋をなめられると。
ぞわっと体が震えた。
なんだか、トゥルがエロく見える。
「目を閉じて、身を任せろ、クラウン」
トゥルは少しずつ服を脱がしながら下のほうへと、舐めとっていく。
そして、そのまま溺れていくのだった。
■□■
目が覚めると、俺は窓のカーテンを開けて、外の空気を吸いながら体を伸ばした。
「なんて言い朝なんだ…………俺、何してんだろう」
結局流されるまま、最後までやってしまったが、なんというか、とにかくすごかった。
とはいえ、童貞を捨てたからと言って、とくに何か変わった感覚はない。
強いてあげるなら、清々しい気分になったということぐらいだ。
「う~~起きたのか?」
「トゥルが俺より遅く起きるなんて珍しいな。とりあえず、服着ろ」
「…………あれだな。意外とうまかったな」
トゥルは顔をそらしながら、言った。
「そんなこと言わんでいい。それよりさっさと準備してくれ。修行の続きだ」
こうして、俺の初体験が終わり、また修行の日々が続くのだった。
ーーーーーーーーーー
あとがき
こういった話を書いてみたかった。
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