第15話 第二王女アルミナ・プルッセラの自問と真意

 プルッセラ王国、第二王女アルミナ・プルッセラ。


 腰まで伸びる金髪に、どこまでも芯があるマリンブルーのような瞳。その厳格な姿はまさに王族。


 そんな彼女が冒険者ギルドに姿を見せ、周りはただ一点、第二王女アルミナ・プルッセラに視線を移した。


 まさか、もう出会うことになるとはな。


 どうする?どうせ、今さら隠れたって無意味だし、だからといって、下手に接触しすぎると原作内容が変わってしまう可能性がある。


 …………ここは素直に従うのが吉だな。よし!


 俺は余裕たっぷりな表情を浮かべながら、プルッセラ王国、第二王女アルミナ・プルッセラの前に立った。


 するとアルミナの隣にいる二人の騎士が。



「貴様!アルミナ様の前だぞ!頭を下げろ!!」


「頭を下げる?なんで、俺がそんなことをしないといけないんだよ。なぁ?王女様」


「き、貴様!平民の分際で!!」


「口を慎みなさい、ガンダ騎士」


「くぅ、はい」



 俺って結構、怖がられる見た目しているのに、アルミナは怖がる様子もなく、真っ直ぐこちらを見つめてくる。


 さすが、王女様。心構えが違うな。


 というか、さすが王女ってこともあってか超美人だ。


 くぅ~どうしてこんなにかわいい子がケインのハーレムの一人なんだ。くっそ、羨ましいっ!



「…………冒険者ギルドで騒ぎを起こしたのはあなたですか?」


「王女様、貴女は一つ勘違いをしている。そもそも冒険者ギルドで騒ぎなんて起こっていない」


「通報がありましたが?」


「それは通報したやつの視点がそう見えただけだろ?でも実際は違う。ただじゃれあってただけだ。

ほら、冒険者のあいさつみたいな?そうだよな、プリスタリアの冒険者のみなさん?」



 俺は周りに語り掛けるように語った。



「あなたは何者ですか?」


「クラウン・ディッチ、B級冒険者だ」


「んっ!?最年少でB級まで上り詰めたクラウン・ディッチですか」


「よく知ってるな」


「冒険者に関する情報はよく聞きますから。まさか、あなただったとは」



 アルミナの驚く顔に満足する俺だが、実は自分も驚いていた。


 だってBに上がったとき、俺はタルタ町にいて、とても情報が広まるような場所じゃなかったからだ。


 まあ、でも周りの反応を見るにいい効果がありそうだからいいけど。



「それを知ってるのなら、俺のことを信じてくれるよな?最年少でB級冒険者まで上がった、このクラウン・ディッチの言葉をな」


「…………くさいです」


「へぇ?」



 創造の斜め上を行く言葉に俺は思わず、力の抜けた声が漏れた。



「あなたの立ち振る舞い、姿勢、仕草、声のトーン。本当に12歳とは思えない。特に平民であるのならば、なおさら」


「何が言いたいんだ?」


「まるでどこかの貴族みたいだなと思っただけです」



 鋭いのか、それとも事前に調べているのか、まったく彼女のことが読めない。


 どうする?ここはごまかすか?いや、きっとアルミナは見破ってくる。


 なら、ここは自分を貫く。



「……王女様は知らないんだな。今のご時世、平民だって立ち振る舞いは覚えるものなんですよ?知らなかったか?」


「それは知りませんでした」


「…………」



 アルミナの冷たい目は一切、淀まずこちらを見つめている。


 これ、ちょっとやばいやつかな。後ろの騎士たちも剣を握ってるし、判断誤ったかも。



「いいでしょう。今日のことは見なかったことにします」


「んっ!?いいのですか、アルミナ様!どう見ても、ただじゃれあっているようには」


「ガンダ騎士、今日は見逃すと言っているんです」


「………わ、わかりました」


「みなさん、お騒がせしました。クラウンさん、今後は勘違いされないよう、振る舞ってください。

あなたはもうB級冒険者、冒険者の顔の一つなのですから。

それでは、失礼します」



 最後まで冷たく、可愛らしい振る舞いも見せず、アルミナ率いる騎士たちは冒険者ギルドを後にした。



「ふぅ…………助かったのか?」



 明らかに疑いの目を向けられていたような気がするが、しばらく警戒しておいたほうがいいかもしれないな。


 というか、アルミナってあんなキャラだっけ?なんか、俺が知っているキャラと違うような気がするが、まあいいか。


 どうせ、主人公の前では照れるんだろうし。



「とりあえず、泊まる宿を探すか」



■□■



 冒険者ギルドを出たプルッセラ王国、第二王女アルミナ・プルッセラは顎に手を当てながら、歩いていた。


 そんな中、横から。



「アルミナ様、何をお考えなのですか?」


「…………」


「アルミナ様!!」


「はぁ、グルタ騎士、あなたはなぜ、私があの場を見逃したか、わかりますか?」



 アルミナはもう隣にいるグルタ騎士に問いかけた。



「もちろんです。ガンダ、聞きなさい。アルミナ様は別にご慈悲を与えたのではない。むしろその逆、相手が最近噂に回っているB級冒険者クラウンならば、逆に利用しようとお考えなのだ」


「利用する?たかがB級冒険者ですよ」


「そうだな。だが、ガンダ。その考えにクラウンの年齢は含まれているか?」


「年齢?」


「B級冒険者は一種の高い壁と言われている。その理由は冒険者になる者はかならず、B級というランクの壁にぶつかるからだ。だが、あの少年はわずか12歳でその壁まで到達した。その実力はおそらく…………」



 グルタ騎士が言うとした時、アルミナが食い気味に答えた。



「A級、もしくはA級にちかいB級の実力はある。それぐらい立ち振る舞いを見ればすぐにわかるでしょ?」


「その通り、そしてアルミナ様はこの少年には利用価値があると判断したのだ」


「そんなお考えがあったとは、私は目の前のことばかりにとらわれて、何も見えていませんでした」


「物事の見方は人それぞれ。これから直していき、視野を広げていけばよいのだ、ガンダ」



 そう、彼には利用価値がある。


 だけど、私がそう判断した理由はもう一つだけある。


 冒険者ギルドに入った時、私はすぐに彼を見た。


 最初は特に気にしなかったけど、話していくうちにおかしいことに気づいた。彼はまだここを知らない冒険者。私が得た情報も全員が知っているわけじゃない。


 なのに、その場にいた全冒険者が彼を見ていた。一つの動きが、振る舞いが、スッと入ってくる声が、そんな一つ一つの動きを私たちは目で追っていた。



「クラウン・ディッチ…………」



 彼にはほかの冒険者にはないカリスマ性がある。


 その振る舞い方はまるで貴族のようで、一瞬、貴族なのでは?と疑い、今でも疑っている。



「利用価値はある。でもちゃんとこの目で見定める必要もある。私の計画のためにも、そうでしょ?」


「ええ、ではどうのように?」


「少し考えがああります。二人共、ついてきて」



 アルミナは騎士を二人従え、ある場所に向かったのだった。

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